【5月号】【その6 処女信仰】
【ここは魔物町 作;二人羽織】
【ここは魔物町 その6 処女信仰】
ここは魔物が住まうのもま町。多くの魔物が住まうこの町で、今日も今日とて平和で、どこか可笑しい毎日が繰り返されている。
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『一角獣』。
それは馬の首から上が人間の上半身に置き換わったような姿をしている半人半獣の姿をしている魔物、ケンタウロス内で使われる、差別用語である。
ユニコーンとは白銀の毛並と長く伸びた角が特徴の馬の魔物であるが、処女しか乗せないと言う伝承を持った魔物である。それ故、ケンタウロス内で『ユニコーン』と言う呼び方は処女好きの変態思考を持った者達の事を指すのである。
☆
俺、ケンタウロスのユニにはこだわりがある。とは言っても、長身女性が好きとか胸が大きい女性が好きだとかと言った目に見える形の身体的特徴をあげるつもりはないですし、性格や金銭感覚とかで判断するつもりはない。俺がこだわっているのは『処女』だ。つまりは他に男と寝た経験がない、一般的に処女だと思われるような女性であれば別にどんな女性だろうと構わない。それが俺、ユニの好みなのだから。
そんな俺に彼女が出来た。俺が好きな、『処女』のような深窓の令嬢のようなイメージを持つ少女だった。金色の髪と透き通るような青色の瞳、そして白いワンピースを着た可愛らしい愛らしい印象の少女だった。そんな子が「あなたとの赤ちゃん、欲しいな」と涙目で伝えた日に断れるような人が居るだろうか? 俺はすぐに了承したのだった。
「けどまさか、こんな事って……」
俺は彼女の部屋で「ううっ……」と男らしくない声をあげる。
「どうしたの、ユニ君? さぁ、早くその君の大きな馬のような猛々しい大きな足で私の身体を掴み、その大きな○○○にて私の身体を貫いて、私にドクンドクンと君の熱き欲望を私の身体に―――――――」
「うるせぇ、このどスケベエルフめ!」
俺の出来た彼女。金色の瞳と透き通るような青色の瞳、肌は白く、そしてどこまでも可愛らしくて愛らしい小さな体躯。そんな俺の理想の『処女』像を体現したかのような彼女が、
何故、こんな三角木馬とか荒縄とかが普通に置いてある部屋に住む、処女を持たないエルフなんだよ!
「ちくしょー!」
俺は産まれて初めて、神に俺の馬の足で蹴りたいと思った。
☆
のもま町の魔物の中には、元から俺が求めている『処女』の証である処女膜がない魔物が居る。それがエルフだ。深窓の令嬢みたいな雰囲気を持っているにもかかわらず、その真相は処女ではないだけのただの魔物の女だ。まさかそんな奴と恋人となってしまうとは……。
しかもあろう事か、
「えへへ////// ならば、まずはこの縄で縛ってから……。いや、それともこの鞭で叩くのも良いなぁ」
どうやら攻めでも、受けでも良いなどと言う相当な変わり種なようだ。畜生、どうして俺はこんな俺の求める処女とはかけ離れた、ビッチ何かと……。
「帰らせて貰う!」
俺がそう宣言するように吐き捨てると、
「ま、待って……!」
と慌てた様子で彼女が俺の身体を掴んでいた。これはあれか……「行かないで」と言う定番な奴かな。おぉ、これはとっても萌えるシチュエーションじゃないだろうか?
(俺が振り返るとそこには、涙目+上目遣いでこちらを見て来る彼女の姿があって……。おおっ、なんともまぁ萌えるシーンじゃないか)
俺の、馬のように雄々しい身体が震える。あぁ、なんて良いシーンなんだろうか。そんな事を感じながら後ろを振り返ると、そこで俺の彼女であるエルフが……
「あぁっ、良いですわ////// それならばもっと冷めた目で見てくれないと、興奮しませんよ////// 鞭や縄ももっと活用して//////」
そこには、涙目どころか満面の笑みで見ている、涎を垂らしながらこっちを見ている彼女のエルフの姿が
「ダメだ、こりゃ……」
と俺は、頭を抱えてしまうのであった。
その後、俺はエルフと本当に結婚してしまうとはこの時は思っても見なかった。
【次回へ続く】




