40話 三度目の正直のコラボ with 魔法使いの妹
「ドキドキワクワクを皆様にお届け! どうも、トライアドちゃんねるの彩音です! 今日も今日とて特別なゲストをお呼びしています!」
「眷属の皆さん、こんにちわ! 琴峰美琴のダンジョン攻略配信の時間だよ!」
「こ、こん、にちわ! と、燈条灯里、です!」
翌日、早速美琴は彩音と三度目の正直となるコラボ配信を開始した。ちなみに本日は土曜日で学校が休みなため、午前中から始めている。
どちらも大人気チャンネルの配信者で、両方揃って配信しているためか、灯里はがちがちに緊張している。
”待ってた!”
”午前中から美少女達を見られるとか最高!”
”学校が休みの午前中から、ミニ丈着物を着た黒髪美少女を見られるとか、これ以上ない幸せ”
”構図がお姉ちゃん二人と妹一人なのよw”
”灯里ちゃんはガチの妹だけどね。魔法使いというとんでもない姉を持つ”
”姉が魔法使いで、助けてくれたのが神様で、次の日に大人気チャンネルのコラボ配信にいきなり参加するとか、プレッシャーすげえだろうなwww”
”がんばってー!”
「あわわわ……! コメントがいっぱい……!」
「そんなに気にしなくていいよ、灯里ちゃん。私の配信の視聴者さん達は、その辺の人だと思えばいいから」
”いや言い方よwww”
”確かにその辺の人ではあるけどさwwww”
”説明下手かw”
”もうちょっとマシな言い方をしてくれ神様”
『お嬢様。ここは視聴者はじゃがいもか何かだと言った方がよろしいかと』
「緊張するから、人を野菜に置き換えたほうが安心するってやつ? でもここに人の顔は映ってないし、難しいんじゃない?」
『お嬢様の「その辺の人」よりはマシかと』
開幕早々変なことを言い、それにコメント欄がせめてもう少しましな言い方にしてくれと、緩い感じで抗議する。
「さて、今日は昨日に引き続き美琴ちゃんに来てもらっています。まあ、昨日の配信を観ていたなら理由は分かるよね?」
そんなやり取りをしている間にも、彩音はてきぱきと進めていく。
「昨日は色々と衝撃だったよなー。美琴ちゃんが加減できなくなって、ミノワンパンするから、連携練習配信から手加減覚えよう配信になって、その後で黒十字のクソどもが一人を囮にして逃げるのを目撃して、美琴ちゃんが助けたらまさか魔法使いの妹で、ダンジョン出たら魔法使い本人とご対面って、情報量が多すぎる」
若干疲れた様子の慎司が、手短に昨日何があったのかを改めて説明する。
言われてみれば確かに情報量が多すぎる。特に一番の特大情報は、灯里が燈条家の次女で、魔法使いの妹ということだろう。
ちなみに昨日、燈条姉妹と一緒にギルドに報告し、そこで別れて帰宅した後にブラッククロスがどうなっているのか調べたら、びっくりするくらい大炎上していた。
数多くの罵詈雑言や、構成員に何をされたのかという告発合戦、更にはクランの構成員からの内部告発も加わり、収拾がつかないレベルで燃えていた。
内部告発は不正金の入手から始まり、パワハラセクハラモラハラなどの、この世に存在するありとあらゆるハラスメントが網羅されているのではと思うほど、大量のハラスメント行為の告白。
数々の不正行為に他クランや企業との癒着など、ただでさえ黒い噂の絶えないクランは、ダークマターに墨汁と黒蜜をぶち込んで煮込んで圧縮したくらいに真っ黒だった。
他にも上げたら、クランマスターの息子である黒原仁輔というクランメンバーは御影ジンという名前で配信活動をしており、法律スレスレかギリ抵触しているレベルの悪行を繰り返していた。
一番酷いので、配信を始めたばかりの新人に目を付けて、その人に大量のモンスターを押し付けて大怪我を負わせ、そのまま引退に追い込んでおきながら治療費も何も支払わないという、徹底的なクズだった。
どうしてこんなことをしている人が捕まらないのだろうと、アイリに調べてもらった。
その結果、クランが日本三大クランと呼ばれるだけ大規模で戦力を有しており、構成員から巻き上げたお金で上層部は甘い汁を啜っており、クランマスターともなれば椅子に座っているだけで月収数千万という莫大な収入があるそうだ。
それでいてきちんとダンジョン攻略に貢献して多くの功績もあるため、かなりの発言力と影響力を持つ。そこにすさまじい金が加われば、警察すら黙らせる最悪な力が誕生だ。
「今日の配信は知っての通り、新人探索者の灯里ちゃんの育成です。魔術の腕は雅火さんが認めるくらいいいみたいだけど、他人と連携して戦うことに離れていないみたいだからね」
「い、一応日本で祓魔師の資格は持っています。あ、あくまで補助要員ですけど……」
「そこがすごいのよね。日本で祓魔師の資格を取るには魔術や呪術を使える必要があるんだけど、日本だから呪術師じゃないとかなり不利になるの。なのに灯里ちゃん、補助要員とは言えど資格持っているし、想像以上に優秀な子みたい」
『補足させていただきます。祓魔師とは呪術師と違うと思われがちですが、同じものです。ではどうして名前が違うのかというと、元は呪術を使えるが呪術師ほどではなく、どちらかというと退魔師に近い人がいて、どちらとも呼べるからそういった両方とも使うことができる人を祓魔師と呼ぶようになったのです。そこに資格がくっついただけの代物ですね』
「アイリ、一応言っておくけど、この試験もかなり難しいんだからね? 魔術師は合格するのが難しいって言われているんだから」
『お嬢様ならどうなるのでしょうね』
「すごく面倒なことになりそうだから、その辺の資格を取りに行く予定はないわよ」
それにしても、魔術師でありながら祓魔師の資格を取ることができるだけ優秀な灯里の有用性を、ブラッククロスのあのパーティーは全く理解していなかったようだ。
そもそも、魔法使いの妹だからということで、魔法が使えるのではないかと一方的に勘違いしてパーティーに入れ、使えないと分かった時点できつく当たっていたのだ。この小さな少女の有用性など、理解するつもりもなかったのだろう。
「それじゃあ、長々と話していても意味はないし、早速行きましょうか。あ、先に言うと今日は上層がメインだからね。灯里ちゃんの魔術の腕なら中層までは行けそうだけど、昨日の今日でそこまで連れて行きたくはないし」
いつの間に隣にちょこんと立っていた灯里が可愛くて、つい後ろから腕を回して抱きしめ、いきなりのことで驚いて慌てている反応を見て楽しんでいると、彩音が育成を開始すると宣言する。
ぱっと灯里を離すと、ちょっぴり名残惜しそうな顔をしてから、彩音達と美琴にペコリを頭を下げる。
「よ、よろしくお願い、します。彩音先生、美琴先生」
「せ、先生……?」
「私、教えることあまり得意じゃないんだけどなあ……」
できれば先輩と呼んでほしいと思っていたため、先生呼びは予想外だった。
特に最近は、アモン戦以降美琴のことを「お姉様」や「姐さん」と呼んでくる人が増えてきたため、純粋に先輩と呼ばれることに飢えていた。
ちなみにあの戦い以降で耳にした一番酷い呼び名は「女王様」である。勘弁してほしかった。
「それじゃ、出発! 美琴ちゃんは後方支援お願いね? 今日一日で加減を覚えてもらわないと」
「あまり期待はしないでくださいね。何年も封印頼りだった分、自分の全力が把握できていないので」
「自分の全力把握できていないってセリフ、一度でいいから言ってみたいなー」
これから行く場所は上層で、美琴達からすればそれこそピクニックに行くくらいなものだが、一応ダンジョンの中なので危険だ。
なのに本当にこれからその辺に出かけるくらいの緩い雰囲気で、五人そろって灯里の育成のために、モンスターを求めて上層を歩き始める。
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