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嫁して3年、子なしは去れ!と言われたので、元婚家の政敵の屋敷でお世話になります!  作者: 江本マシメサ
第三章 聖教会の闇

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魔法の気配

 聖騎士は私に合わせてか、ゆっくり階段を上ってくれる。

 早く無事を知らせたいからと言って急いで駆け上がりたかったが、聖騎士が「でしたらわたくしめが先に行きまして、猊下にお知らせしてまいります!」なんて言われたら最後である。

 ここは慎重に進んだほうがいいのだろう。

 聖騎士は嬉しそうに振り返り、話しかけてきた。


「メクレンブルク大公家の聖嫁様の護衛ができるなんて光栄です」

「え、ええ……ありがとうございます」


 メクレンブルク大公家の聖嫁時代であっても、このように聖騎士に護衛を頼む権限なんてない。

 けれども今だけは許してほしい。


 七階まで上り切ると、出入り口にいた聖騎士が何事かと聞いてくる。


「メクレンブルク大公家の聖嫁様をお連れしました」

「メクレンブルク大公家の聖嫁様だと!?」

「お戻りになられたのですか!?」


 軽く会釈すると、聖騎士達は感極まった様子でいた。


「よくぞ、おいでくださいました!」

「この二日間、姿が見えないと皆、心配しておりまして」

「そう、でしたのね」


 ここでのんびりお喋りしている場合ではない。

 先を進もう。

 六階から連れてきた聖騎士には、案内はここまででいいと言っておく。

 すると、七階の聖騎士が「ならばこの先はわたくしめが」と名乗り出てきた。


「いえ、みなさまはここを守る任務があるでしょうから、大丈夫ですわ」


 にっこり微笑むのと同時に、任務を遂行するようにという圧を加えておく。

 すると、聖騎士達は敬礼し「はっ!!」と返事をしてくれた。

 この先も聖騎士達はいるだろうが、捜索依頼書を見て慌てて帰ってきたなどと言えばいいだろう。

 聖騎士らと別れ、魔法の気配がする区画を目指す。


『コッチダヨ!』


 どうやらこれまでにないくらいの強い魔法の力を感じたという。

 今度こそ、間違いなく魔力を吸収する魔法の反応に違いない。

 メルヴ・ウィザードの先導で先を進む。

 すると、途中からゾクッと背筋が寒くなる。

 いったいどうしたものか、と思っていたら、廊下に誰か倒れていたので驚く。


「――!?」


 顔色を青くし、倒れていたのは聖騎士だった。


「あなた、大丈夫ですの!?」


 声をかけても反応はない、肩を叩いても同様に。

 口元に手を当てたら、呼吸は確認できた。

 すぐに回復術をかけてあげるも、意識が戻る様子はない。


『コレ、魔力ガ、枯渇シカケテイルヨ!』

「なっ!?」


 失った魔力だけは、回復術で癒やすことはできない。

 どうしたものか、と思っていたら、メルヴ・ウィザードが帽子を脱いで頭上から生えていた葉っぱを引き抜く。


『コノ葉ッパ、食ベタラ元気ニナルヨ』


 なんと、メルヴ・ウィザードの葉っぱは万能の薬草で、魔力を回復することができるという。

 ただ、意識がないのにどうやって食べさせたらいいものか。

 なんて考えていたら、メルヴ・ウィザードが葉っぱを一口大に千切り、問答無用で口の中へと突っ込んでいた。


「あ、あが!!」


 なんだか苦しげな声を上げていたものの、すぐに聖騎士は目覚めた。


「はっ――私はいったい!?」

「疲れて眠られていたようです」

「あなたは、メクレンブルク大公家の聖嫁様!」


 ゆっくり休むように言うと、聖騎士は素直に頷き、下がっていった。

 ホッとしたのもつかの間のこと。

 通路にはたくさんの聖騎士達は倒れていた。一人一人相手にするのは大変なので、メルヴ・ウィザードが千切った葉っぱを口元に咥えさせておくだけにした。

 こうしていれば、本当に危険な状況になったときに、食べてくれるという。


「みなさん、ごめんなさい!!」


 こうして意識がなく、倒れている状態のときはまだいいようだ。

 本当に危険なのは、泡を吹きながらもがき苦しんでいるときだという。

 そういう状態の聖騎士がいないか確認しながら、先を急いだ。


「なんてことを……!」


 七階に魔力を吸収する魔法が展開されているのは間違いないようだ。

 もう引き返したほうがいいのかもしれない、と思いつつも、ここまできたのだから、場所くらい突き止めておかないと、という気持ちになっていた。


「――ううっ!!」


 急に空気が重たくなり、立っていられないような圧迫感に襲われた。

 くらくら目眩を覚え、喉の奥からこみあげてくるものがあったが、なんとか耐える。

 すると、メルヴ・ウィザードが魔法を展開させる。

 足下に光る魔法陣が浮かび、中に入っておくように言われた。


『別ノ魔法モ、展開サレテイルミタイ』


 なんでもこの辺りから体力を吸収する魔法も常時展開されているようだ。

 その魔法に関しては結界が作用していなかったので、気持ち悪くなったのだろう。


『魔法ノ気配、コッチ』

「え、ええ」


 あと少し、あと少しだ。

 そう自らに言い聞かせ、先を急ぐ。


 行き着いた先は、メクレンブルク大公の執務室だった。

 扉には大きな魔法陣が浮かび、怪しい赤の光を放っている。

 それだけではない。

 部屋の中からキャッキャという、女性の嬌声きょうせいが聞こえてきた。


「そんな……!!」


 魔法を展開させていただけでなく、女性も連れ込んでいたなんて。

 頭がガンガン痛むのは、魔法の影響だけではないだろう。

 

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