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転生後に世界周遊 ~転生者アスカの放浪記~【前作書籍発売中】  作者: 弓立歩
1章 旅の始まり

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到着細工の町

 お風呂に入り、何事もなく夜明けを迎えた私たちは朝早くに起きて出発の準備をしていた。


「しまい忘れはないね? 流石にここへ戻ってくることはないからね」


「大丈夫です」


「僕も問題ありません」


「んじゃ、出発するか」


 ピィ


「しゅっぱつ」


 アルナとティタの返事を合図に私たちは再び細工の町ショルバへと歩き出す。ここから先は地図では何も書かれていない。草原や林があるらしいけど、道という道は記載もないみたいだ。


「流石に落とし穴は無いだろうけど、不意にぬかるみにはまったりするかもしれないから気を付けなよ」


「分かりました」


 まずは山間に沿って歩いていく。直線で進んでいくと、小さい山に突き当たるらしくそこを西に進んで再び北へ行くのが分かり易いらしい。


「ジャネットさん、この辺は魔物もいるんでしょうか?」


「いい質問だね、リュート。あたしも初めて通るから分からないけど、王都周辺の魔物と違いはないと思うよ。油断は禁物だけど」


「じゃあ、オーガとかオーク亜種が中心だと思っていたら良いですね」


「だね。林もあるから一概には言えないけどね」


「それなら、良かったです。どっちも大きい魔物ですからすぐに私が探知できますよ」


《ピィ》


 アルナも空から見つけると得意げだ。進んでいくと、やはりというか反応があった。どうやらアルナの方でも見つけたらしい。先行していたけど、直ぐにこっちへ戻ってきた。


「ん? アルナどうした、敵かい?」


《ピィ》


 ジャネットさんの問いかけにうなずくアルナ。


「あっ、僕の方でも何とかつかめました。数はまだですけど……アスカどう?」


「ん~、数は四体。大きさからすると多分オーガ系統かな?」


 オーガもオークもどちらも人間より大柄な魔物だけど、どっちかというとオーガは筋肉質、オークはでっぷりとしている。流石に四体いて全部が細めのオークメイジって言うのは考えにくいからオーガと判断した。今は東が山で他は草原地帯なので身を隠せる場所はない。すぐに戦闘態勢を整える。


《ガアァァー》


 向こうもこっちを発見したようで一直線にやって来た。


「ありゃ先頭のやつはオーガバトラーだな。あたしに任せな、二人は奥の三体を頼む」


「「はい!」」


 ジャネットさんの合図を受けて、私とリュートは左右に分かれてジャネットさんがオーガバトラーと切り結んだところで一気にその後ろへと風魔法で加速する。急に接近してきた私たちに対して、残りのオーガたちは誰を狙うか決めていなかったようでやや動揺している。


「今なら! ケノンブレス」


「魔槍よ。伸びろ!」


 私は真空を操る風の特殊魔法ケノンブレスを、リュートは伸びたり大きくなったり縮んだりと変化する魔槍を伸ばして正面にいたオーガを攻撃した。想定より早く敵と相対したオーガたちはそのまま腹を貫かれ倒れる。それを見た残りの一体は私に狙いを定め迫ってくる。


《ガァァ》


「ウィンドブレイズ」


 今度は足止めのために大量の弾丸を放つ風の魔法で対応する。オーガは皮膚が硬いので流石に貫くまではいかないけど、突進はできなくなった。傷を負って動きの止まったオーガに対し、続けざまに側面からリュートが攻撃を仕掛ける。


「とどめっ!」


 槍の切っ先を見事に使ったリュートによって、傷ついた部分から心臓までを切られオーガは倒れた。ウィンドブレイズに耐えたことから恐らくウォーオーガという、近接に特化したオーガの亜種だったみたいだ。


「はぁっ!」


 ジャネットさんの方も決着したようだ。相手の大振りな攻撃に対して、即座に剣を払ってオーガバトラーの首を落とした。オーガバトラーは数種類の武器に長けている。今回の相手は剣だったけど弓や槍が得意な個体も居て、種族名だけでは対応しにくい相手であっても剣術がLV6もあるジャネットさんの敵ではなかったようだ。


「ま、こんなとこだね。いや~、しかしツイてたね。こいつが剣で」


「前に一度遭った弓使いは強かったですからね」


「だから前に言っただろ? こいつは弓が一番厄介だって」


「そうですね」


 オーガバトラーは得意武器が個体ごとに異なっていて、一番評価が高いのは弓だ。剣は冒険者も多く使え、生息域へ行くならまず剣術LVでは負けない。力は劣るだろうけど、仲間もいるので倒しやすいのだ。一方、弓使いはその膂力から放たれる矢は早く、射程も長い。今回のように見通しのいいところで出会うと、不意の一撃で誰かがやられかねないのだ。


「前は森でしたから、対応しやすくてまだましでしたけどね」


「ああ、オーガ系は探知能力が低いからね。見えなきゃそこまでじゃない。森ならアスカの探知で先手を取って、先に倒せるからね」


 オーガ系統は魔法抵抗値が低い代わりに皮膚が硬くて物理に強い。しかも、力もあるので前衛で倒す場合は長期戦になりやすい。そこに威力のある弓が加わるので本当に厄介な相手なのだ。


「僕が素材を取って埋めるよ」


「お願いリュート。穴は私が開けるね」


 リュートが素材を取っている間に私はオーガを埋める穴を魔法で掘る。


「んじゃ、あたしは見張りだね。アルナとティタも頼んだよ」


「わかった」


《ピィ》


 ティタは私の肩に乗って、アルナは再び空に飛び上がり見張りをする。魔物を倒したら他の魔物が寄ってこないように埋めるのが普通だ。こんなところでもやっておかないと、再び戦闘になるからね。その間に後続だったり、他の魔物が来ることもあるので、警戒は怠ってはいけないのだ。魔物によっては漁夫の利を狙うらしいし。


「素材は取り終わったよ。埋めていくね」


 リュートが風魔法でオーガを穴に入れていく。最後に土でふたをして完了だ。


「しっかし、リュートもオーガの相手が手慣れたねぇ」


「ジャネットさんと一緒に王都へ行く時にも戦ってましたから」


「そうなんだ」


「うん。一緒に護衛依頼を受けている時にも何度かね。ローグウルフにも遭ったよ」


「ローグウルフってレディト東だけじゃなくて北側にもいるんだね」


「そうみたいだよ。五体ぐらいだったかな? 相変わらず数がいるから面倒だった」


「まあ、そん時の護衛は五人いたから問題なかったけどね。商人はびびってたけど」


「しょうがないですよ。馬車が二台で護衛も左右に分かれてたから、最初は二人だけで相手してましたし」


 ウルフ系の魔物は一部を除いて魔法が不得意だ。攻撃力もそこそこだけど、動きが素早いから護衛対象からすると怖いだろうな。商人たちは戦えない人がほとんどだから、装備もないしね。


「まあ、あん時は土魔法が使える奴がいたからそこまで危険じゃなかったってのもある。アースウォールを張れば、まずウルフじゃ壊せないからね」


「でも、一部の個体は飛び越えてましたね」


「あれも計算の内だろうね。飛び越えたとしても空中じゃ身動きは出来ないからそこを狙い撃つ算段さ。失敗したら危険だけど慣れてたしね」


「へ~、私も今度やってみようかな?」


 私が使える魔法は火と風の二種類だけど、ハイロックリザードというAランクの魔物を倒し、その革を使った魔道具を使うことで一部の土魔法が使える。シャスさんって言う土魔法が使える鍛冶屋さんに作ってもらったんだ。

 グローブはアースウォール。革鎧は硬化。ブーツはアースグレイブとホバー(勝手に命名)が使える。ホバーはとっても便利で、滑るように地形の影響を受けずに動ける上に加速も減速もしやすい。


「風魔法じゃ急加速と急減速になっちゃうからね」


 その代わりに回避には効果的なので、そっちで活躍している。


「やるのはいいけど、相手は楽なやつの時にしてくれよ。アスカは魔力操作のスキルもあるから、コントロールは心配してないけど、慣れないことをして怪我をしたら馬鹿らしいからさ」


「そうですよね。じゃあ、心に留めときます」



「ふぅ、右手に在った山も見えなくなってきたし、そろそろ前に山が見えてくるはずだよ」


 お昼過ぎ、ジャネットさんの言葉通り三十分後には山が見えてきた。


「あれですか? 思ったより高いような低いような……」


「表現しにくいよね。一応連なってるからそれが特徴かな?」


「あれを西に進んで真っ直ぐ北に進めばショルバに着くよ」


「このままなら日暮れに間に合いそうですね」


「いざとなったらごねるかね。ちょっとぐらいならまけてくれるだろ」


「大丈夫なんですかそんなことして……」


 魔物がいる世界なら門限は大事だと思うんだけどな。


「あたしらは冒険者だけど旅人だって少なからずいるし、門番も追い返した奴が翌日に門の近くで発見されるなんて嫌だからね。まあ、領主が厳しいとそういう取り締まりもあるけど、大丈夫だろ」


「ジャネットさんは時間が来てから入れてもらった経験あるんですか?」


「もちろんさ。町に入れさえすれば適当な宿もあるし、疲れてる時は見張りもおろそかになる。よほど何かない限りは町の方がいいよ。あたしらはバリアの魔道具もあるし、そこまでじゃないけどね。宿で魔道具は使い辛いしね」


「それは仕方ないですよ。僕も宿で働いてましたけど、扉の前で魔道具が発動してたら人を呼びます」


「でも、安宿ならありだね。客も経営者もろくでもないのが紛れてるから遠慮は不要だよ。アスカのいるうちはそんなことはないと思うけどね」


「一回ぐらいなら泊まってもいいですよ?」


「いや、直ぐに文句を言って宿を移ることになるよ。部屋は狭いし、適当な毛布があるぐらいで掃除にいたっては文句があるなら自分でやれって道具を渡されたりするからね」


「そんなにひどいんですか?」


「まあ、大銅貨一枚で泊まりたいかどうかだね」


「僕はもういいですよ。ああいうのは……」


 ちょっと遠い目をしながらリュートが呟く。そういえば、私たちとパーティーを組む前は安宿でノヴァと二人で泊まってたっけ。ぼろぼろの家でも借りるのは大変だ。冒険者カードは身分証明にもなるけど、ランクが低いと本当に最低限のことしかできない。

 二人は孤児だから保証人がいなくて、仕事にも就きにくいから冒険者を選んだ。孤児院を出ると働くのは厳しいみたいだ。院にいる間は孤児院の院長さんが保証人だけど、孤児院もぎりぎりの経営だから出て行った子の面倒までは見れないのだ。そんな時代の宿だもんね。いまさら泊まりたくないか。


「じゃあ、今日こそはちゃんとした宿に泊まるってことで」


 ペースを上げて町を目指す。それから一時間半ほどするとようやく町並みが見えてきた。こっち側からは煙突から上がる煙が特徴的だ。


「あれが細工の町ショルバ……」


「まるで鍛冶の町に見えるねぇ」


「言われてみるとそうですね。でも、細工も金属を多く使うみたいだし、案外あんなものなのかも」


 町を見た感想を言い合いながら門へ進む。


「ん? 冒険者か。商人ギルドから買い付けの依頼でも受けてきたのか?」


 門のところで順番待ちをしていると、声を掛けられた。


「そういう依頼って多いんですか?」


「まあ、そこそこな。商人だと各都市を回るから足が遅くてな。得意先に急いで納品したい時は冒険者が代わりに受けているんだ。ま、それを聞いてくる辺り観光か何かか?」


「興味があって旅の途中に寄ってみたんです」


「なら、露店の商品には気を付けろよ。変わったものだから価値があるわけじゃないからな」


「門番のあんたが町の商売の邪魔をしていいのかい?」


「邪魔って言っても変なものが流通して人が来なくなると俺の給料が減るんだよ。折角、上がって来たってのにさ」


「なら、こいつは取っとといてくれよ。下がってもいいようにな」


 ジャネットさんが門番さんに情報料を渡す。ちょっと滞在する気だし、今度会った時にも色々教えてくれるかもしれないしね。門番さんは魔道具で分からない悪い人を見分けるのも仕事のうちだけど、こうやって町の状況とか変わった旅人の情報もくれるありがたい存在だ。私たちもアルバにいた時は何度も利用させてもらったんだ。


「へへ、わりぃな。貧乏人はただでもらえると思って敵わんぜ」


「そいつが有名になったら貰うといい」


「はっ! そんな奴らが有名になるものかよ。ま、何はともあれようこそショルバへ」


 こうして、旅の最初の目的地ショルバに着いたのだった。




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