18話
「さて、そろそろ俺らもサボってると先生になんか言われそうだからな。俺と軽く打たない?」
「お手柔らかに」
こっちは運動得意じゃないんで、といい壁によりかかりながら立ち上がる京介。
「任せな。俺も運動苦手だ」
「何が任せななのか三十文字以内で説明せよ」
「シャトルが変な場所行っても許せ」
「よっしゃ構えろ。その顔面ぶち抜いてやる」
宣言通り晃の顔面に当てた。
「いってぇ……お前コントロール良すぎだろ。額にドンピシャだったぞ?」
「FPSはそこそこ得意だ」
「関係なくねぇか!?」
と、見事一週間後。入学直後に思った友達作りたいという願いはようやく叶った。
「次なんだっけ?」
「国語だろ?あの頭皮が斉○さんの上位互換の先生」
「お前やめろよ、可哀想だろ……」
京介のあんまりな担当教師の思い出し方に軽く引いた晃。脳内で「ぺっぺっぺー」というトレンディなエンジェルのネタが脳内に流れた。
「………なんか将来の頭皮がやばいくらいに心配になってきたんだが」
「安心しろ。修行するんだろ?なら坊主になるから関係ないだろ」
「え、俺の寺修行は決定なの?」
冗談冗談、と目の前の人の席に座る晃を宥めていると、ドアがガララと開く。ちらりと近くのドアを見ると、女子が帰ってきたようだ。
「じゃ、また後でな」
「おう、また後で」
と、自身の席に行き次の授業の準備に入る晃を見送った後にーーー席に座るや否や「構えー」とでも言うように机に凭れ、顔だけ京介の方に向けている花果を見た。
「………なんだ。何がお望みなんだよ」
「べつにー。君は新しい友達が出来て羨ましーとか思ってないから」
(思ってんだな)
「花果は出来てないのかよ」
「まぁ?私美少女だから声かけるだけでも勇気いるんじゃない?」
友達が出来ないのは絶対これのせいだなと呆れた目を向ける。まぁ、多分だが何を言っても無駄だと思うので、なんにも言わないが。
「ほら、京介。私に構え。寂しくて死ぬぞ」
「兎か」
と言っても、休み時間の終わりなんてあっという間だ。更に、それが体育の後なのだと言うから尚更ーーーー
「えー、それでは授業を始めます」
チャイムとともに、やけに頂点が眩しい国語担当教師が現れ、光の辺り具合のせいでやけにその頭が眩しく感じだ京介。先程の酷い思い出し方はこれが原因である。
「………………………」
(あ、拗ねた)
花果は顔をゆっくりと机に向かい合わせ、そのままの態度で授業を聞き始めるのだった。
(………こいつ、その体勢で問題は無いのだろうか)
真面目に授業を受けること数十分。そのまま体勢から動くことの無い花果を見つめながら、そんなことを思う。
まぁたしかに、国語ーーー特に現代文なんかは特に勉強はしなくても○○の心情は~とか、そんなのばかりなので、特に受験の時も勉強はしないでも、解くことは出来た。
(……まぁ、これでも木更津家の人間だし、英才教育は受けてるから大丈夫なんだろうが……)
つん、つん。
「………っ」
切実に、脇腹をシャーペンでつつくのだけはやめて欲しかった。




