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12話

どうやら、二人の席は前出、しかも隣だったようなので、一旦二人と別れてから席へ向かうことに。


(しかし木更津……どこかで聞いたことあるような……)


 京介は未だに隣で眠っている少女をちらりと横目で見てから、スマホで検索することにした。


(木更津……木更津……んげ!?木更津グループ!?)


 木更津グループ。日本でも五本指には入る超大企業のグループであり、代表としてこの近くにある木更津ホテルが挙げられ、既に社長代理として活躍している木更津花奈美(きさらつはなみ)という高校を卒業したばっかの女性がその敏腕を発揮している。


(………ということは、あの木更津さんのご令嬢……ということになるのか……?)


 チラリ、となんかよくわからん汗をかいて隣を見ながら、写真がアップされている花見と見比べてみる。


 ………確かに、なんか似ている気がする。


(………いやいやいや、まさか、女が名字とかいるだろうし…………いる、よな……?)


「んっ…ふわぁ……」


 ビクン!と声を出しただけでのこの反応。隣では、欠伸をしながら、ゴシゴシと目を擦っていた。


「……あ、隣の人来てたんだ。どうも~」


「お、おう……どうも」


 手を振る度に、彼女の黒髪ツイテールが揺れる。京介も反射で挨拶を返してしまった。


「ごめんね、寝てて。気まずかった?」


「い、いや……そんなことは無いぞ、うん」


 気まずいと言うよりも、隣にいる正体が気になるすぎててそこまで思考が追いつかなかったというのもある。


「私、木更津花果(きさらつはなか)。一年間よろしく」


「高木京介。木更津さんでいいか?よろしく」


「花果でいいよ。私も京介って呼ぶから」


 と、握手をする二人。意外とフレンドリーなんだなと思いつつ、それでは早速気になった疑問を投げかける。


「……なぁ花果は……」


「あぁ、うん。京介の大体想像通りだよ。言わなくてもいいから」


 と、京介の質問を言い終える前に花果が答えを出した。その態度から、深くは聞いて欲しくないんだろうなと思い、話題の転換をすることにした。


「えと……それじゃあ、花果は趣味とかあるか?」


「趣味………ゲームくらいしかない」


「へぇ、意外だな」


「別に、お嬢様だろうが、女子だろうが、ゲームくらいする。ちなみに、スティックヒューマン・オンラインっていうゲームなんだけど……やってる?」


「あぁ、棒人ゲーな」


 スティックヒューマン・オンライン。略して棒にゲー。グラフィック綺麗、ラグなしストレスなしスタミナ上限なしの三拍子揃ったMMORPGの中では神ゲーと評されるPCゲームである。


 しかし、何よりも操作するキャラクターが棒人間なせいで全てが台無しにさせていると全プレイヤーに口を揃えて言われるほど、綺麗なグラフィックと、棒人間がミスマッチなのである。


 しかし、それでもユーザーが増えているのは、ストーリーの面白さと、操作性なのだろうか。年々着々と増えている。


 京介も初めて二年くらいは真面目にやっていたのだが、今では三日に一回ログインする程度なので、やってると言われればやってるし、やってないと言われればやってないの瀬戸際である。


「………まぁ、やってるな」


「……ほんと?」


「おう。確か……今のレベルキャップは200だったよな。170くらいはあったと思う」


「ふーん……まぁ、まだまだね」


 だろうなぁ、と思いながら苦笑いをする。こうして自分からやってる?と聞きに来る位なのだ。相当レベルは言ってると思われーーーーーー


「私、ユニーク持ってる」


「……………マジで!?」


 途端に大声を出した京介は、悪くない。

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