シェイドVS昂大
風が吹く。風の音が耳の中を通り抜け、つき抜けて行く。昂大の目の前にいるのは明らかに異質な者。昂大は蛇の面を直視する。
「・・・今から新田川高校に向かうんだ。そこをどけ。」
昂大が以外にも冷静であることが蛇の面の暗殺者の気に障る。
「ハッ!お前みてえな雑魚が今行って何になるっていうんだよ。バカじゃねえのか!」
シェイドは挑発するように腹を抱えて笑い出す。
「お前、何なんだよ。おれたち会ったこともねえのに。おれに恨みでもあんのか?」
昂大の問いかけにシェイドの様子が変わる。
「恨みだと?そんなもんねえよ。ただお前を見てるとイライラしてくるんだよ。大した腕でもねえのにのんきにいつもへらへら笑ってやがる。暗殺者なのにのうのうと現実世界を生きてやがるお前が!!見ててむかつくんだよ!俺は暗殺者になるのにすべてを捨ててきた。家族も!友達も!日常生活すべてを捨ててきた!!!それでもじいちゃんはうんとも言いやしねえ。そればかりかお前の事ばかり褒めやがる。いつもいつもいつも・・・こんな理不尽あるかよ!」
シェイドは取り乱して昂大に怒りをぶつける。昂大はそれを聞いても顔色1つ変えなかった。
「そうか。」
ただ1言それだけ。シェイドの怒りは頂点に達した。
「フッ、あは、あはははははは!!!そうだよなぁ、こんな1人よがりな理由でって思ってんだろ?いいぜ、だったら・・・」
風が舞い上がる。昂大は顔色1つ変えない。全身で風を受け止める。
「殺してやるよ。」
その1言ですべての感情を表していた。その一流の殺気を受けて昂大は身構えた。
「・・・来いよ!!」
シェイドは腕に仕込んだ短刀を素早く出すと、昂大に飛びかかった。
上下左右様々な方向から来る刺突を一手一手避けていく。その洗練された動きは昂大を緊張させた。しかしすぐに見切れる。
昂大は短刀の刺突をさっとかわすと伸びきった腕に膝蹴りをかました。
「くっ!!!」
シェイドは後ろに下がり体勢を立て直そうとする。続けざまに懐からナイフを投擲する。
昂大は姿勢を低くし、のらりくらりと投擲を避け、確実にシェイドの懐に飛び込み、拳を叩き込んだ。
「ぐえっ!」
シェイドは痛みで悶絶する。連撃を避けるため昂大と距離を取ろうとする。が、しかし、昂大はそれを許さない。シェイドの纏っていたフード付きの黒いマントの胸倉をつかみ自分に引き寄せる。そして拳で、シェイドの面を叩き割った。
シェイドは殴り飛ばされ、地面に倒れ伏した。素顔が露になった暗殺者は悔しそうに昂大を睨みつけた。
「くっそ!!」
再びシェイドは昂大に飛びかかり、1撃、また1撃と拳を突き立てて行くが、昂大はそれを軽々と受け止め、そして流していく。
「はあはあ・・・」
シェイドは確実に消耗していた。息が次第に上がっていく。昂大は1撃ごとに力が緩くなっていることを感じた。そしてタイミングを見計らい、隙をついて伸びきった拳を腕ごとつかみ、シェイドを背負い投げる。
シェイドは再び地面にダウンする。
「なんでだ・・・なんでなんだ・・・」
シェイドは焦っていた。こんなはずではなかったと相手の実力を考えた。この間奇襲した時の沖田昂大の強さは自分よりも確実に弱かった。なのになぜだ。今目の前にいる沖田昂大はまるで別人のように隙がなかったのである。
「くっそーーーーー!!!」
シェイドは心の底から叫ぶと、足元に隠していたホルスターからハンドガンを取り、昂大目がけて発砲した。
乾いた銃声がこだまする。銃弾は昂大の肩をかすめ、空高く舞い上がった。
時間が止まったように2人は動かない。ただシェイドの息遣いだけが2人の耳にはっきりと聞こえてくる。
「・・・なんだ。口ほどにもねえじゃねえか。お前。」
昂大は冷たく、そしてあっさりとシェイドのプライドをその1言で破壊した。シェイドは悔しくて声すら出なかった。
昂大はシェイドの持っていた拳銃を蹴り飛ばすと右腕を踏みつける。
「うっ!」
「・・・じゃあな。」
昂大はゆっくりと足を上げるとそのままシェイドに背を向け歩き始める。
この時、シェイドの心にあったのは恐怖。もしこれが任務であったなら自分はやられていたという事実が心に突き刺さった。さらに、慈悲をかけられたのか、沖田昂大には自分など見えていなかった。あの冷たい目が脳裏に焼き付いて離れない。もはや昂大に対しての怒りなどない、むろん嫉妬もない。あるのは恐怖と自分への憤りだけであった。
「・・・なんなんだよお前は。」
シェイドはただ昂大の後姿を見つめることしかできなかった。
「くそ、結局、俺が・・・弱ぇだけじゃねえか。」
地面に自らの拳を叩きつける。何度も、何度も気が遠くなるほど殴った。血まみれになってもやめようとしない。悔しさは募るばかりであった。
まともな戦闘を書いたのはここが初めてですね。
戦闘の腕は、10年経ってもあまり変わらないかもです( ;∀;)
戦闘は難しい。




