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ノアの弱小PMCー異世界から来た軍人と兵器少女、たった2人の防衛戦線ー  作者: 無糖 喫茶
第3章ー兵器の祭典、セントラルストリートパレード開催ー
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第36話ー建築用途二脚機甲ー


 「よし……よし、動かせるな」


「ほんとぉ? 操縦代わるわよぉ」


「いいから後ろで休んでな。これでも人型機械の操縦には自信あ」


 操縦に不備があったのか、ヒナキとネロが乗った工事用二脚機甲は思いっきりバランスを崩し転倒した。

 ネロは額をヒナキのシート背もたれにぶつけたがヒナキは身体を固定するベルトによって無事だった。


「痛ぁい……」


「あっれぇ。これ姿勢制御とか自動でやってくれんの? いいよそんな親切にしなくても……ネロ、これ操縦制御系全部マニュアル化できないか?」


「んん……できるけどぉ。おひざの上座っていーい?」


「座り心地は保証しないけどそれでもいいなら」


「ん」


 ネロはコクピットに座るヒナキの太ももの上にその小さくて弾力のある臀部をちょんと乗せ、二脚機甲の制御盤をいじり始めた。

 恐らくヒナキはある程度二脚機甲の操縦方法を熟知しているため、不慣れな作業者でも操縦できるようにする自動アシスト機能が余計なものだったのだろう。


 動き出そうとしたところで自動アシストが働いたために転倒したと判断したネロはすべてのアシスト機能をオフにし完全マニュアル操作へ移行させた。

 移行操作が完了した後、ネロはまたヒナキのコクピットシートの後ろに戻り「できたわよぅ」と声をかけた。

 ヒナキは操縦桿を握り操縦を開始すると多少ぎこちなさは残るものの転倒するほどの危うさはなくなった。


「ねぇしどぉ」


「あん?」


「ほんとぉにこれでいくのぉ?」


 付近に転がっていた警備用二脚機甲兵器が携行していた銃火器などを取り外し、この工事用二脚機甲の背や腰に備えられた格納ハンガーへ取り付けている最中にネロが話しかけてきた。


 ネロがそう言うのも無理はない。


 センチュリオンテクノロジー社製建築作業用途二脚機甲、機体名ダイナモ。

 ヒナキが今操縦している機体は通常の戦闘用二脚機甲兵器と違い一回りも二回りも小さく、敵性存在からの攻撃に耐えられるような頑強な装甲は持ち合わせていない。

 機体に搭載されているOS上で動くプログラムも戦闘用に調整されたものではないし、工事用途向けに目立つよう機体各部に黄色と黒のペイントが施されてしまっている。

 

 ただ唯一よかったのは、上下左右360度すべての視界をカバーするためコクピット内全方位がモニター化していたことだ。

 全方位の外の様子が確認できることで死角を無くすことができるこのシステムは工事用途向けのものであろうが装備されているようで……この機能にヒナキはいたく感動していた。


「装甲が頼りないのと口うるさいAIがいない以外は相当いい機体だと思うぜ。あっちにはこんな外全方位確認できる機能はなかったし、操縦桿の遊びもちょうど良くて軽くて動かしやすい」


「しどぉの世界の機体ってどんだけ性能悪かったのよぉ」


「言ったろ、機体コンセプトの方向性が違うんだって。……それよりやっぱ携行兵装の貧弱さが気になるな。都市内戦闘用なのかなんなのか軒並み大した威力なさそうだ」


 そうこうしている内に近くに二脚機甲輸送車両が到着しており、結月少尉がブルーブラッドから自分の専用機である特殊二脚機甲兵器ウィンバックアブソリューターブルーグラディウスに乗り換えていた。


《こちらセンチュリオンテクノロジー特殊二脚機甲作戦部隊所属結月少尉。ノアPMC祠堂さん、聞こえてる?》


「おお、聞こえてるよ」


 本来の機体に搭乗した結月から通信が入り、ヒナキはそれに答えた。


《貴方の機体を僚機(りょうき)登録するわ。こちらからそっちに対して誤射することはないけれどダイナモのシステムには僚機認識機能はないから同士討ちに気をつけて》


「了解。先日の戦場にいたんなら知ってると思うが今都市の外にいる奴は普通のドミネーターだとは思わないほうがいい」


《と、いうと?》


「はっきりとした意思がある上に厄介な力を使ってくる可能性が高い」


《既に方舟外へ出現した対象を迎え撃つための二脚機甲部隊が交戦しているわね。確かに厄介そうな能力を持っているみたい。粘着質の物質を撃ち出す上に相当な威力をもつ爆発を起こすと。ねえ、なぜそんなことを知っているの?》


「あれを撃退できたら詳しく話すよ」


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