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グラップルファンタジー  作者: 無為無策の雪ノ葉


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51 ねっけつ!

「はっ! 吐けと言って何を吐けば良いのでしょうね」

 狐目の竹原がニヤリと笑い肩を竦める。随分と余裕のある態度だ。


 一発でも殴って、今、自分が置かれている立場を分からせた方が良いのかなー。


 って、いかんいかん。どうにも思考が暴力的になっているな。最近、荒っぽいことが多かったから性格が前世に引っ張られているようだ。


「あー、うん、俺はさー、なんで湖桜高校(クラウン)に薬を広めたか聞きたいんだよなー」

「ああ、その程度のことですか。単純に混乱させようと思っただけですよ」

 狐目の竹原はこちらを馬鹿にしたような笑みを浮かべている。ふーん、そっかー。


 やっぱり、一発でも殴って立場を分からせた方が良さそうだ。いや、殴るよりも関節を外した方が良いかな。折るのはかわいそうだから外すだけで勘弁してやるよ。


「やれやれ暴力ですか。自分は参謀ポジションですからね。自分は、君の相手が務まるほど強くないですよ。それでも暴力を振るうんですか?」


 何だ、コイツ?


 か弱いから暴力を振るうな?

 俺を正義の味方か何かだと思っているのか?

 参謀だから自分は当事者ではないと思っているのか?

 外側に居るつもりなのか?


「たいっちゃん」

 頬傷以外の、サングラス、お茶くみの二人を昏倒させたカオル先輩がやってくる。いやぁ、ホント、この先輩、おかしい強さだな。前世でもこれだけ強いヤツはそんなに居なかったんじゃなかろーか。拳銃を恐れない狂気といい、この手際といい、ホント、おっそろしい先輩だ。


「あー、カオル先輩、後片付け助かります」

「いいって、それよりさー、たいっちゃん。一応、そいつ、知り合いだからさ……」

「知り合いだから?」

 俺は竹原からカオル先輩の方へ向き直る。

「半殺しで勘弁してあげてよ」

「半殺しですか」

 俺は竹原を見る。何処か体調が優れないようだ。急に顔が青くなっている。カオル先輩が怖いのか?

「そーだよ。たいっちゃんだとさー、全殺ししそうじゃん」

 しないって。この先輩は、俺をどこかの戦闘狂の狂人みたいに思っているのかよ。


「いやいやいや、さすがに俺でもそこまでは……」


 !


 入り口の方に気配。


 俺はとっさにそちらを見る。


「竹原さん迎えに来ました」

 そこに立っていたのはドレッドヘアーだった。何処か怯えたような、ささやき声でそんなことを言っている。


 !?


 そして、何故か、その後ろに不機嫌そうな雷人の姿があった。


 あ?


 何で雷人が?


 って、今はそこを疑問に思うよりも、だッ!


「えーっと、そこの二人。今から竹原にお仕置きをするところだから、ちょっと待ってなさい」

 この状況で邪魔されたらたまらないな。


「ん? あ、お前!」

 ドレッドヘアーが俺を指差す。


「何だよ。何でしょう。俺、忙しいんだけど」

「お前、あの手錠!」

「外れて良かったな」

「くそ、馬鹿にしやがって! あの手錠、鍵がなくてもボタンを押したら外れるじゃねえか!」

 そりゃあ、玩具だからな。鍵がなくなったら外れなくなるような玩具だったら危なくて使えないだろ。これで親御さんも安心だ。


「って、何だよ! この惨状!」

 ドレッドヘアーはやっと現在の部屋の状態に気付いたようだ。


「その二人がやったんですよ。良いところに来てくれました。助けてください」

「竹原さん!」

 ドレッドヘアーが竹原の方を見る。そして、そのままカオル先輩の方へ向き直る。

「なるほど。この現状、そうか、お前が、あの最強のアラタだな! 確かに竹原さんが言っていた特徴の通りだ。ここまで隠していたとは! だが、この筋肉が……」

 おいおい、コイツ、また面倒なことを始めようとしているな。


 だが、その動こうとしたドレッドヘアーを押しのけ、雷人が前に出る。


 ん?


「太一」

「だから、俺の名前は……って、ん?」

「太一、中学の時、他の連中に唆されてお前をいじめていたことを謝る。すまなかった」


 ん?


 んんん?


「その過去は清算してきた。だから……」


 だから?


 清算してきたって、清算されてないだろ。唆されたとか、何を言っているんだ、コイツは。というかだね、今はそういう状況じゃないでしょ。雷人は何を考えているんだ?


「だから?」

「だから、俺と戦ってくれ」


 ……。


 熱血馬鹿かよ!


 戦ってどうなるってんだよ。


 というかーだ。


「いやいや、雷人君。状況分かってる? 後にしてもらっても良いかなー」

「分かった」

 雷人が素直に頷く。


「ちょっと! 雷人君、君は状況が分かっているのか!」

 竹原が叫ぶ。

「竹原さん、俺の力を伸ばしてくれようとしてくれたことは感謝する。だけど、その方法ではコイツに追いつけない」

 いやいや、雷人君。


 どうしたの?


 何か変な薬でも飲んだか?


 急に熱血主人公みたいなことを言い出して気でも狂ったのか。


 と、とりあえず、どうすれば良いんだ?


 カオル先輩は楽しそうな表情で成り行きを見守っているしさ。完全に観戦モードじゃん。そりゃあ他人事だもんね。楽しいよね。


 はぁ。


 とりあえず竹原をしめたら良いのか? 良いのかな。良いな。うん、きっとそうだ。


「あー、えーっと、竹原、かくごー」

 何だ、この状況。

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