突っ込み不在の恐怖
新一年が二年を打倒したという噂はすぐに湖桜高校中に広まったッ!
「かみやん、大丈夫かよ」
「えたじぃ、これが大丈夫に見えるかーよぉ」
刺さりそうなほど髪を立たせた江田島が髪を金髪に染めた紙屋に話しかけている。その金髪の紙屋は痛そうに腕を、肩を、摩っていた。
「医者、どうだったんだよぉ」
「とりあえず様子見だって言うんだからよー。ひでぇぜ、よー。じんたん? じんてい? 良くわからねーけどよー、それが伸びて癖になるかもしれないとか? あんまり動かすなってさー、ひでぇ話だぜ」
割と余裕のある表情で金髪の紙屋は喋っている。
「それじゃあよぉ、治ったらリベンジだぜ」
髪を尖らせた江田島の、その言葉に金髪の紙屋の顔色が変わっていく。先ほどまでの余裕ある表情が、青く怯えたようなものへと変わっていく。
「だ、駄目だ。殺される。あの悪魔に殺される。そんなことをすると殺されるぅぅぅぅ」
金髪の紙屋は頭を抱えてしゃがみ込み、ブツブツと呟いている。
「江田島、これは『うましか』だな」
「猫屋君、なんだよ、それはよぉ」
「知らないのか。怖い思いをすると後でそれを思い出して震えることだな」
「かみやんがその状況だってぇ!?」
熊のように大柄な猫屋が頷く。
髪を尖らせた江田島はゴクリと唾を飲み込み、慌てて金髪の紙屋の方を見る。
「だぁい、だぁい、俺は死ぬ。殺されるー」
紙屋は地面に指でアルファベットの『D』『A』『I』を繰り返し書いている。
「かみやん!」
「ところで『ねとられ』なんだけどな」
髪を尖らせた江田島が金髪の紙屋から熊のような猫屋の方へ振り返る。
「ねとられ?」
「ああ。漫画とかで不良に弱みを握られて寝取られる話があるよな」
「あるある」
髪を尖らせた江田島が金髪の紙屋のことを忘れたように頷いている。
「それってな、男と女を入れ替えて考えてみるとな」
「寝取られる女が寝取られる男に!? 不良男が不良女に!?」
「一途な不良女が、真面目君を諦めきれずに奪う的な感じにならないかな」
「ありじゃね!」
髪を尖らせた江田島が興奮したように叫ぶ。
「猫屋君、天才かよー!」
さっきまで地面に何かを書いていた金髪の紙屋も興奮したように叫んでいる。簡単に復活していた。
「そんなのな、真面目君は不良女とやっちまうよな。俺は逆に考えたらねとられも有りだと気付いた」
「いや、それは違う」
「ねぇーよ」
速攻で熊のような猫屋の話が否定される。
「あー、不良はお前らだろうが。何、訳の分からないキモいことを話してるんだよ」
そこに現れたのは……。
「悪魔だぁ!」
金髪が叫ぶ。
「頭のおかしい一年がぁ!」
とんがりが叫ぶ。
「ありだよな?」
熊が疑問符を浮かべている。
「おいおい、逃げるなよ! ちょっと聞きたいだけだからさ。なんで、雷人がお前らを倒したことになっているんだよ!」
「知らねえよ」
「うるせぇよぉ」
「ありだよな?」
ありなのだろうか?




