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片腕の盾使い、騎士を志す  作者: ニシノヤショーゴ
豊穣祭編
109/154

食材を求めて①

「────おっ、見えてきたな」


「翼竜もうようよと見えてるけどね…… 」


「この三人なら問題無いよ。そのまま進もう」




 遠く向こうに見えてきたのはコルト諸島。目的はファウストに頼まれた食材の採取。ヨシュアは依頼を達成するためロイと、ロイの幼馴染のヤードを誘ってこの島を目指していた。



 ────お嬢様の為に、あなたには食材の調達をお願いしたい



 お嬢様の美しさを支えているのは食であり、体の中に入れるものは細心の注意を払っています。酒場の料理のような脂っこい食事ではいけない。住む場所を変えたからといって、食事の質を落とす訳にはいかないのです。それなのにマーセナルでは仕入れることが出来ない食材が非常に多い。



 そこであなたには食材の調達をお願いしたい…… というのがファウストからの依頼、という名の課題である。



 採取を依頼されたのは魚や木の実。いずれもマーセナルでは流通していないらしい。



「地元の漁師の方に聞くと、コルト諸島に生息している生き物は非常に栄養価が高いそうです。普段扱う食材では無いのですが、この際仕方ありません。代用品として、ヨシュアさんにはコルト諸島にて食材を採取していただきたい」



 ────無理なようでしたら、別の人に依頼しますが。



 それは一種の挑戦状のようなもの。最後まで言わなくても、「片腕のあなたにできますか?」とファウストの目が語っていた。

 まあ、こういう展開は嫌いじゃない。ヨシュアは「やれますよ」と言ってメモを受け取った。


 メモには報酬も細かく明記されていた。見てみると、確かに馴染みのない珍しい食材が多いようだ。持って帰れば持って帰るだけ儲けになりそうである。



 コルト諸島はマーセナルから北西にある島々で、アルル達と出会った場所でもある。世界樹に近い場所ということもあり、珍しい生き物も数多く生息しているが、その分危険も多い。普通なら<青のカード持ち>には入島を許可されていない地区でもある。

 本当なら一人で依頼をこなして見返してやりたいところだが…… 意地を張って他人に迷惑をかけてもいけない。ギルドの決まりに従い、今回はロイたちに協力を仰いでコルト諸島へとやって来たという訳だ。







 近くの漁師に小型のボートを借りてやって来たヨシュアたち。日差しは良好。風も少なく、絶好の採取日和といってもいいだろう。


 砂浜にボートを固定し、それぞれ大きめの鞄を背負い、さっそく島の内部を目指して歩を進める。まずは森に入って木の実やキノコを集めたい。魚は鮮度の良い状態で届けたいから、釣りをするのは後での方がいいだろう。



「で、どうなんだよ、あの女」



 島に上陸してから程なくして、ロイが後ろから尋ねてきた。三人は今、ヨシュアを先頭に一列になって進んでいる。あの女とはきっとソーニャのことだろう。



「どうって言われてもな。まあ、綺麗な人なんじゃないか?」



 だよね、めちゃくちゃ綺麗だよね、とヤードが同調する。彼は美人に目が無い。

 


「性格は?」


「とってもストイック。毎日トレーニングに付き合ってるよ」



 へー、と意外そうなロイ。「俺がイメージしてる金持ちとは違うんだな。で、優勝は狙えそうなのか?」



「十分狙えるとは思う。実際に去年の優勝者だし。ただまあ相手はフレイヤさんだからな」



 まあ、出場すればの話だけれど。


 

 実はまだフレイヤは出場を決めていなかった。募集締め切りまであと十日に迫っていたし、何度もソーニャに迫られてはいるものの、どうも決めかねているようなのだ。


 でも、街の人はフレイヤの出場を望んでいる。酒場でもフレイヤとソーニャの話題で持ちきりだ。どちらに投票するか、みんなで勝手な予想をしている。ヤードもどちらに投票すべきか、今から頭を悩ませているそうだ。

 さすがに此処まで期待されてしまうと、フレイヤも断りにくそうだなと、少し同情する。あるいは、この状況もソーニャの狙い通りなのかも。





「あった、あった。これだろ、探してるキノコって」



 ロイがさっそくお目当ての品を見つける。栄養価の高い紅色の「アマイロダケ」というキノコだ。香りが良いのでそのまま焼いたり、お吸い物に使われる高級食材である。


 ヨシュアよりも傭兵歴の長いロイは、採取に関してはヨシュアよりずっと上だ。そしてヤードは釣りが得意と聞いている。二人は今日の依頼にピッタリだ。



「助かるよ、ロイ」


「いいって。報酬も美味しいしな。それに、二人よか三人の方が色々とはかどる」



 ロイは黙々と採取に励んでいる。プロの顔つきだ。


 こういった採取系の依頼は経験がものを言う。ただ目を凝らせばいい訳じゃなく、日当たりや生き物の足跡など、見落としがちなヒントをいかに丁寧に拾い上げられるかがカギを握る。そればかりは本を読んで得た知識だけではどうにもならない。だからロイから学ぶことはとても多い。

 


 道具を使いこなすことも、採取系の依頼にはとても重要である。

 背の高い木の上の方に実がなる「チコリの実」も、普通なら人間が手にすることの無い食材だ。そんな木の実も「マジックワイヤー」さえあれば簡単に届く。よーく狙いを定めて、ポイントショットで実をもぎ取るのだ。


 マジックワイヤーは他にも、崖にへばりつく「苔だけ」と呼ばれるキノコの採取にも役立つ。緑色の変わった種類のキノコだ。


 ただ、ワイヤーを使用すると言っても「苔だけ」はへばりついているので、ワイヤーで無理に引っ張ると千切れてしまい、上手く採取できない。

 ではどうするのかと言うと、とても単純な話で、崖の上からワイヤーでぶら下がり、直接手で一つ一つ丁寧に採取するのである。ぶら下がりながら、というのは片腕のヨシュアには無理なので、ロイにお願いする必要はあるが。


 崖の下からロイの声が聞こえてくる。



「そこ、でっけー虫が寄って来てるから、俺の邪魔させんなよ!」


「分かってる! 危なそうなら此処から仕留める!」



 此処より十メートルほど下にいるロイにも聞こえるよう、大きめの声でヨシュアも叫んだ。

 ロイを待っている間、隣りでぼんやりと立っているヤードが尋ねてきた。



「ねぇ、ヨシュア。頼まれてたリストの中に蜂の子供もあったみたいだけど、あれ、本当に採取すんの?」


「まあ、頼まれてたし」


「それって、食べるの?」


「そう…… なんじゃないかな」



 ヤードは苦虫を嚙み潰したような顔で「マジか」と言った。まぁ、気持ちは分かるけど。



「あとさ、それってさ、ハチの巣に踏み込むってことだよね?」


「そうなるな」


「そんなことしたら、襲ってくるよね?」


「そりゃあ、間違いなく」



 今度はため息が聞こえてきた。その気持ちも分かるけど。


 でも事前に採取リストはもらっていた。だから事前にしっかりと準備はできた。アルルにリストを見てもらった時に一つマジックアイテムをもらっていたのだ。まだ試してないから何とも言えないが、彼女が作成したアイテムなのだから、きっと上手くいくだろう。そうヨシュアは信じていた。

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