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片腕の盾使い、騎士を志す  作者: ニシノヤショーゴ
豊穣祭編
104/154

パートナーになりなさい

 ────私のパートナーにならない?



 ヨシュアは何を言われたのか、その意味するところが分からなかった。何故そんな発言をしたのか、まるで見当が付かなかったのだ。



「えっと、何のパートナーですか?」


「私がコンテストで優勝するためのパートナーよ!」



 何故か自信満々に答えるソーニャ。凛とした雰囲気はニアに似ていると思ったが、こうして話してみるとリコッタにも似ている気がしてきた。



「具体的には何をすれば?」


「トレーニングに付き合ったり、私が求める食材を手に入れたり。そういえばあなた、片腕みたいだけど強いの? カードの色は?」



 尋ねられたヨシュアは「青色です」と答えた。青色は下から数えて二番目。つい先日、白色から昇格したばかりだった。「でも、強さならそれなりに自信があります。ギルドに所属したばかりなので、まだ青色ですけどね」


 その答えを聞いて、ソーニャが横目でフレイヤを見た。少しばかり疑う気持ちもあったのだろう。

 


「ヨシュアさんの言葉は本当です。私が保証しますし、ジークさんも認めると思います」


「へー、あのジークエンデさんも認めた傭兵さんなのね。ますます気に入ったわ。あなた、私のパートナーになりなさい」



 ソーニャの言葉はいつのまにか命令口調になっていた。お嬢様として、家ではこんな感じで振る舞っているのだろうか?



「それは、傭兵である俺への依頼ですか?」


「そうね。そう受け取ってもらっても構わない。初めから報酬はちゃんと用意するつもりだったし」


「そういうことでしたら、特に断る理由もありません。いいですよね、フレイヤさん?」


「はい。依頼を受けるのは別に問題ありません」



 そう言うフレイヤは浮かない様子。「やっぱり私も出ないといけませんか?」



「強制はしないけど、出場して欲しいわね」



 言葉とは裏腹に、ソーニャは圧のようなものをフレイヤにかける。とにかく目力が凄い。

 そんな彼女のプレッシャーに負けたのか、最終的にフレイヤは「考えてみます」と言った。そうでもしなければ解放してもらえないと感じたのだろう。



「そう。また近いうちに返事を聞きに来るから、それまでに覚悟を決めておいてね」とソーニャは念を押す。それから此方を向いて「それじゃあ行きましょうか。えっと…… ヨシュア、といったかしら?」



「はい。でも、行くって何処に?」


「ニューポートよ。私の家はそこにあるの」



 ニューポート? 環状根を渡った隣の国じゃないか。



「コンテストってマーセナルやアリストメイアに住んでいなくても参加できるんですね」


「そうよ。有名なお祭りだから、他の国の人々も参加できるの。当然コンテストへの注目も高まるわ」



 多くの人に注目してもらえるのが嬉しいのか、ソーニャは力強い笑みを浮かべる。口角を上げる様は妖艶で美しい。きっとソーニャには、既にコンテストで優勝した自分を鮮明に思い描くことが出来るのだろう。


 一応とばかりにヨシュアは自分の予定をフレイヤに確認する。…… うん、特に予定は入れていない。

 ただ個人的にも豊穣祭に向けて準備したいことはある。



「俺は今日からでも行けますが、なにぶん急な事だったので、全日をニューポートで過ごすことはできません。それでもいいですか?」


「そうね。その辺りは移動しながら考えましょうか」







 それからヨシュアとソーニャはギルドを出てすぐに馬車へと乗り込んだ。運行会社の馬車では無い、専用の馬車だ。艶のある赤色のキャビンが陽光を浴びて輝いている。

 馬車を操る御者ぎょしゃもソーニャに仕える身分の様で、彼女に相応しく大変身なりが良い。歳は三十手前。背の高い黒髪の男性である。



 二人して隣り合うようにキャビンに乗り込む。走り出すと、やはり赤い馬車は目立つのか、すれ違う街の人々が目で追っている。けれどソーニャは注がれる視線を気にする様子はまったく無い。


 馬車は一先ずヨシュアの住む宿に向かった。これからニューポートにあるソーニャの屋敷に泊まり込みだというのに、何の準備もしていなかったからだ。不足する分は買い足してくれるともいうが、全く無いというのも困りもの。待たせる訳にもいかないので、思いつく限りの物を簡単に鞄に詰め込んだ。それから宿の受付にて持ち切れない荷物を、後で郵送で送って欲しいと頼んだ。



 再び馬車に乗り込むと、ヨシュアたちは改めて自己紹介をしあった。まだお互いのことを何も知らなかった。これからのことを考える上でも、お互いの事情を話し合う必要が有ったのだ。



「────そう、それで片腕なのに傭兵ギルドに所属しているのね」



 ソーニャはキャビンの中、外からはあまり姿が見えない場所であるにも拘らず、振る舞いには全く隙が無かった。常に美しいたたずまいを保つことが当然と考えているようだ。

 ピンと背筋を伸ばし、両膝もきちんと揃えている。手のひらも太ももの上に重ねて置かれている。会話中はきちんと相手の瞳を見て、適切に頷きを返してくれる。偉そうに振る舞う事は決して無い。とにかくすべての所作が美しいのだ。そして彼女が美しいのは天性のものだけでなく、努力の賜物なのだろうとヨシュアは感じた。

 

 ソーニャは言った。何かを目指す女性は美しいのだと。目標を持ち、その目標に向けて努力を重ねることが大事なのだと。ソーニャにとっては、コンテストで優勝することが今の自分にとって一番の目標なのだと、真剣な目をして語ってくれた。


 誰かを贔屓するつもりは無い。けれども、この努力は報われて欲しいと思う。

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