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因縁、そして終息

「久しぶりだな、中学以来?」


 まさか、昔の好敵手と出会う事になるなんて。神山は右手を伸ばし、笑って再会の握手を高原にねだった。しかし、高原はその手を見てから神山に視線を向けて、何とも言い難い、顔を神山に向ける。


「神山、お前……まだキックやってんの?」


 いきなりに、神山は尋ねられた。


「あぁ、やってるし、プロになれたよ……そうしたらいきなりこっちに拉致されてなぁ、高原は?」


 近況を高原に話す神山、プロライセンスを取った最中にこちらへ連れてこられてしまい、笑うしか無いと笑いながら言った。しかし、高原は目を逸らして言い放つ。


「高校上がる前に辞めたよ……」


「は、はぁ!?え!?何で!!」


 神山は知らなかったのだ、高原がキックボクシングを辞めていた事を。それこそ団体違いでプロ入りなり、アマチュアに在留していると神山は決めつけていたのだ。


「何で辞めたんだよ!お前、えぇ……有名だったじゃんよ!神童を狙う三人って!何で辞めーー」


「お前が、現れたからだろうが、神山……」


「え……」


「お前が現れて、アマキックはもう、お前か神童の二人に注目向いちまったろうが……はっ、煽ってんのかよ」


 ギロリと高原に睨まれた神山が思わず手を下ろし後ずさる。高原は鬱屈した雰囲気で神山を見つめ、話を続けた。


「なぁ神山……お前、神童にまだ挑む気で居るのか?」


『神童』


 神山の口から語られた、彼の現世における好敵手。今の神山ですらフルラウンドで戦い、判定負けしてしまうと言う、格闘技の申し子。未だに挑む気なのかと、高原はまるで蔑みを孕んだ言い方で尋ねた。


「そりゃ勿論、あいつに勝つのと、本場のナックモエと並び立つのが、俺の目標だからさ……それが?」


「四度も負けて、まだやる気なのか?」


「当たり前だ、アマで負けたけど、プロで勝つよ」


 淡々と言い切る神山に、高原はゆっくり拳を握り目を地走らせる。只ならぬ雰囲気を前に、神山も眉間に皺を寄せた。


「じゃあ、何でここに居るんだよ、お前、さっさとこの世界から消えろよ」


「帰れたら苦労しねぇわ……何だ、喧嘩売ってんのか高原?」


 神山の手にも力が入り拳がすでに作られていた。これはもう、スイッチが入ったかもしれんなと、河上が町田と仲居を下がらせ、自らも下がる。神山がニヤリと笑って体を揺らし始めた。


「いいぜ、やろう高原、幸いアマ戦績互いに一勝ずつだ……ケリつけようや」


「自惚れるなよ神山、この世界における職業と能力の差は絶対だ……それを教えてやる」


 高原も構えた、顎の下辺りに手を置くオーソドックススタイル。


 終息させに来た四聖が、まさか神山と因縁を持ち、それがこの場で燃え始めてしまった。


 ステップを踏み始める高原に、体を揺すりながらもその場をあまり動かない神山。オーソドックスと、ムエタイスタイル。


 その雰囲気に、中井も、町田も、河上も呼吸を自ずと止めてしまう。間合いが狭まる、あと一歩、半歩……。


 刹那、互いが動き出した。


「拳神!何油売ってんのさ!さっさといくよ!!」


 が、邪魔が入った。魔将、篠宮の声に神山と、高原の振りかぶった手が止まった。


「……行けよ、呼ばれてるぜ」


「やめるのか?」


「やめてやるんだよ、高原」


 少しばかり言い合って、火花を散らし……二人は構えを解いた。そして神山の横を通り過ぎ、TEAM PRIDEの面々も無視して、階段へ向かう。


「出るんだってな、展覧試合!」


 背中を向けたまま高原は、神山に言い放った。


「優勝したら相手してやるよ、最も……お前らができたらの話だがな」


 戦いたければ展覧試合で優勝しろ、逃げる間際の文句にしては偉そうだ。それを聞けば、神山は兎も角、中井、町田、河上が黙っていない。


 中井は町田の肩から離れ、指を鳴らし始め、町田も首を回し、河上は既に鯉口を鳴らした。


「首洗って待ってろや高原……」


 しかし、それを制するかの様に、神山は背を向けたまま言い放つ。


「さっさと優勝して、テメェをリングに這いつくばらせてやる、大晦日の曙みてぇにしてやっから覚悟しとけ」


 例えがあまりにも限定的すぎた為、TEAM PRIDEの神山以外は、気が抜けてしまった。あれか、あんな風にする気かとうつ伏せの姿を皆思い出した。


 それを聞いた高原は、階段を降りて行き姿を消した。そうしてからやっと神山は振り返ると、皆に冷たい目で迎えられたのだった。


「え、え?な、何、どしたの?」


「もっとマシな台詞無かったの、神山くん」


「いやいい例えじゃない?大晦日の曙」


 ダメ出しを中井にされて、それ以外あるのかと考える神山。熱を逃されたなと河上は鞘から手を離し、町田も息を吐いて力を抜いた。


 ともかく……巻き込まれた形となったオロチとの抗争は、こうして終わりを告げたのだった。




「それで、結局コハクドの支配権はポセイドンとクライムに譲ったんだ」


「あー、名目上はウチが貸し出している、と言う形だけどなー」


 あれから2日後、神山は熱い太陽の下、三木原の働く店でザクロジュースを飲みながら、その後何があったかを語っていた。


 結局、あの後オロチは四聖によって壊滅したらしい。なにがあったか、何をしたのかまでは神山達は知らなかった。『中央の騎士』という奴らに護送されてシダトに強制送還され、そして翌日メッツァー邸宅にて、コハクドの権利書が送られて来た。


 ポセイドンにて集まって神山達は、話し合いの末、書類場ではTEAM PRIDEがコハクドを闘士街として支配し、運営はポセイドンとクライムボーイズに任せる事になった。


 オロチ壊滅のためだけに築いた同盟が、残ってしまった事になる。


 それにより、神山達は様々な物を手に入れた。闘士街の品々はそのチームの物となるらしい。


 まず、バイク、及びバギー……オロチ達のカスタムバイク全てを引き取る事になったが、処理ができないから結局押し付けられたに等しい。


 そして……それに必要な、燃料。ガソリンだ。


 コハクドにはどこから出て来たのか、手に入れたか知らないガソリンが大量にストックされていた。現地人は『鉄の馬』やら『鉄の牛』として、闘士達の乗り物であるという認識が広まっているらしく、珍しく無いのだとか。


 河上さんはそれで毎日コハクドに通っている。気に入った女がいるらしい。中井も、何やら一台だけマリス邸宅に運び込み、世紀末カスタマイズを外して元の形に戻していた。現世で跨っていたが、お釈迦にしたやつに似ているという。


 発電機、ガソリン式の物。まさか異世界で電気まで使える様になるなどとは思わなかった。これにより、TEAM PRIDE達の携帯電話に充電が出来る様になった。


 無論、圏外ではあるが、動画撮影やら写真撮影ができる。今後は敵を撮影して対策を練れる事に困らないだろう。


「そう……で、拳神、高原泰二と因縁があったんだね、神山くん」


「あぁ、一勝一敗……けどまさか辞めてたなんてなぁ」


 三木原に顔を見せず、背中をカウンターに預けてザクロジュースを飲む神山。自分の好敵手の一人が、まさかこの国最強の闘士の一人とは……つまり高原もクラスとスキルを持つ優性召喚者なのだと、神山はグラスを置いて立ち上がる。


「ともかく、優勝する理由がもう一つできたわけだ、モチベーションも高まるわけよ」


「もう休憩終わり?」


「あぁ、まだまだ先だが、少しでも強くなりたい……拳神とか吐かす高原を叩きのめす為にな」


 神山はそう言って、三木原の店を出て行く。そして、ルテプ中央にそびえ立つ城を見た。今でもあそこに、高原が座して待っているのだろうなと、神山は城に背を向けた。


 本戦出場決定戦まで、残り15日ーー。



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― 新着の感想 ―
[一言] 展覧試合本戦と予選三回戦以降は試合前に貴族同士での煽り合戦で試合を盛り上げて欲しいな~(願望)そういうのがあればお抱え闘士の悪行が事前に分って町田さんのボルテージがマックスになるだろうな~
[一言] なんとまあ神山くんと対戦して夢破れて引退して行った選手きっとたくさんいるんだろうな。本人はまったく気づいていないところがやるせない。河上さん普通にバイク乗っているということは大学と剣術修行と…
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