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それぞれの内情 下

 経緯はどうであれ、シダト東の境界線たる色街、クラブポセイドンにて、無頼闘士連合オロチと敵対する面々が集まった。


 この地に流れ着いた現世の女性を守る為、この異界に海神の名前を冠した店を建て、オロチと敵対する『ポセイドン』


 全ての劣性召喚者の自由と権利を勝ち取る為、オロチすらも通過点と宣い、国家転覆を目論むチーム『クライムボーイズ』


 そして、没落貴族令嬢マリス・メッツァー率いる、ただ各々が戦う為に集まった劣性召喚者チーム『TEAM PRIDE』


 以上3チームが、オロチと敵対状態にあり、そしてこの場所にて面通しと相成ったわけだ。


「まずは、改めて名乗らせて貰います、マリス・メッツァーです、チームプライドを雇っている貴族です、カイトさん、そしてマサツグさん、よろしくお願いします」


「赤田正次、クライムのリーダーだ、よろしくマリスさん」


「で……どうするよ、お前ら」


 マリスの挨拶に赤田は頭を下げた。それを見計らい、カイトが話を始めた。


「俺たちポセイドン、そしてクライムは元からオロチとやりあっているわけだ、そしてあんた達……TEAM PRIDEもオロチに目を付けられたわけだが……」


 カイトはサングラスの奥から覗く眼を、マリスに、そして背後にて立つTEAM PRIDEの面々に向けた。


「ポセイドンからすれば、巻き込まれたあんた達が入る必要はねぇわけだ、展覧試合もあるし、オロチとのいざこざは俺たちが防いでやるから、入り込まなくていいんだぜ?」


 ポセイドンの意見は、TEAM PRIDEはこの件に関わらず、展覧試合に集中しろと言うものだった。ポセイドンが身辺警護を引き受けて、関わらずとも良いとカイトはマリスに伝えた。


「そうですか、マサツグさんは?」


 それを聞いたマリスは軽く頷きながら、クライムのリーダーたる赤田正次の意見を尋ねた。赤田は、足を組みながらマリスに向けて言い放つ。


「巻き込まれた以上、あなた方もオロチの標的になったわけだ、いかにポセイドンが守るとはいえ限界があるだろう……僕としては、あなた方も、そしてポセイドンも……ウチと組んで、一緒にオロチを潰して欲しい、それが理想かな」


 対してクライムボーイズリーダー、赤田正次。


 そも巻き込まれた以上、我々と同じ標的であり敵対の立場にある。いかなポセイドンが身辺警護をするとは言え限界が来る、ならば皆で組んでオロチを打破すべしと、攻めの意見を提示した。


 マリスは赤田の意見に頷いた。が、ここでカイトは赤田を睨みつけながら口を開いた。


「潰して欲しい、か……潰したいじゃあなくて、端々に滲み出てんぞ赤田」


 カイトの指摘に、赤田はクスクスと笑った。先程神山に挑み、見事に負けて鼻を削ぎ落とされてポセイドンに連れられ、治療まで受けておきながら自信満々に、カイトを煽るかのように言葉を紡いだ。


「何しろ自分の弱さも、組織としての繋がりの脆弱さも十分承知してるからね、僕は……クライム自体、はっきり言ったら数だけでポセイドンの様な、芯は通ってないのも理解しているさ」


 赤田はカイト、そしてマリスや背後に立つ神山達にも目を向けて一息を吐いて宣うのだった。


「だから使えるものは使う、利用出来るものは利用する、細田?僕はあの時から変わってなんかいないし、変わる気も無い、要は使えるか否かーー」


 カイトの本名、その苗字は『細田』である事がこの場で開示され、カイトのサングラスの下の眼が明らかに揺らいだ。しかし、それよりもだ、斯様な言葉を吐き散らして赤田正次の身に、安全が保証されようか?


 そんなわけが無い、TEAM PRIDEの面々全員。赤田正次の身勝手なる発言に、良い印象など持つわけなど無い。今の赤田の発言を聞いて、神山も、中井も、町田も、河上も、全員が赤田正次への敵意と嫌疑心が生まれたわけだが。


「ちょっ!?河上さーー」


 その中でも一際、斯様な偉そうな口振りを許さぬ者が居た。


 河上静太郎である。河上は既にマリスの背後より踏み出でて、腰元より抜刀して音も無く赤田正次の喉元に切っ先を突きつけていたのだ。その行動が、神山や中井、町田の赤田へ向けた敵意を霧散させたのだ。


「河上、待て」


「貴様が誰かは知らん、クライムとやらの首魁だろうが……カイトの知古だろうが……」


 場に奔る緊張ーー。カイトの静止を前にして河上は赤田を見下ろし、切っ先を喉に触れさせた。薄皮一枚に切っ先が埋まり、赤い雫が膨らみ出して垂れていく。


「言葉を間違えるなよ?」


 その台詞を聞いた赤田は、河上と視線を合わせたまま喉から一筋血の滴を流し、それでも震えや恐れを見せぬまま目を離しはしなかった。殺るなら殺れと言う挑発か、はたまた諦めかは分からない、しばらくして赤田正次が取った行動はーー。


「間違える、か」


「む?」


 赤田正次は、切っ先を払い除けて河上に歯向かわず。ましてや、やめてくれと命乞いもしなかった。赤田は、突きつけられた切っ先を右手に握りしめたのだ。無論切れる、刃が手に食い込み、血が垂れて刀身にも流れ始めていく。そのまま立ち上がり、赤田は河上を見据えながら言葉を吐くのだった。


「お前達から見たら僕は、クライムは間違えているのかもしれないだろうけど、僕達は決して間違えちゃいない、この地に流れ着いて打ち捨てられた僕たちの自由と権利のためなら、なんだってするしなんだって利用するのさ」



 河上にそこまで宣い、しかと目を離さず射抜く赤田。臆する事無く、握り締めた切っ先は震えて鳴いていた。それを聞いた河上は……ゆっくりと刀身を引き、懐より紙を取り出して、血に濡れた切っ先を拭いながら赤田を見て笑った。


「俺の前で良く大言吐いたな、面白い奴だ、さっき神山に鼻を削がれ、ボロボロにされた割に……中々に太い」


 鞘に刀身を納めた河上が、赤田を笑んで見やる。赤田はそれでも手より滴る血をそのままに、河上から目を離さなかった。


「セイタローそれまでよ、お願いだから」


「あいわかった」


 マリスも気書きでは無かったらしい、冷や汗をかいて背中より河上に静止を促し、河上はこれを了承して後ろへ下がると、やっと詰まらせた息を吐いたのは、神山と中井、そして町田である。


「カイト、マサツグ?一応私たちの意思としては、こうして襲撃を受けた以上そのまま放って置く気は無いわ、だからマサツグの言う様に、オロチと戦う気よ」


 そしてマリスが、やっと意思を伝えた。戦うのは闘士達で、自分は何もできないがと言葉を添えて、オロチとの対決を望んでいる事を両名に伝えたのだ。それを聞いたカイトは、やはりというか、自分達だけで解決したかったのか黙ってしまうも、対して赤田は優しい笑みで頷きながら、まだ血の滴る手をどうしたものかと眺めるのだった。


「はい、じゃあ決まったところで……オロチに関して聞き出した話があるんだけど、いいですか?」


 とりあえず、オロチと戦う事は決まった。なので頃合いと見た神山は自分が街中で手に入れた情報を皆に話す事にした。


「ここから西にあるコハクドという地方都市で、オロチが奴隷市場やら違法薬物をさばいているんだとさ、行って早速叩くなりする?」


 神山の元雇主から得た情報、シダト西側の地方都市コハクド、そこでオロチの奴隷市場や違法薬物市場があるのだという。情報通りならそこを叩くかと言う提案に、カイトと赤田は顔を見合わせた。


「真奈都、お前……コハクドがどんな街かは知らないのか?」


「うん?何かあるんですか?」


 カイトから尋ねられた神山は、何だとばかりに唸る。西の地方都市コハクドが、どんな街かなど神山は全く知らなかった。何やら訳ありなのかと、神山はコハクドがどんな街なのか、カイトの話を聞いた,


「コハクドの街は治外法権だ、しかも、厄介な事にな闘士街なんだよ」


「とうしがい?」


 聴き慣れぬ単語に神山は首を傾げた、これに対して答えたのは赤田正次である。赤田は掌をいつの間にか取り出した包帯で巻きながら、神山に語り出した。


「その名の通り闘士が支配している街、エリアだ、実力ある闘士が姫よりその街の支配権を貰って支配、運営している……コハクドはオロチの本拠地さ」


 以外な事実だった、コハクドなる地方都市はオロチの本拠地だと言う。精々地下に根を張る程度かと思っていた神山の想像を超えた事実、そのまま話は続いた。


「コハクドはオロチが支配……いいや、姫やらが厄介払いに与えた街なんだ、好きにしていいから表に出るなって感じにな、カイト達ポセイドンも、俺達クライムもまだ手を出すには早いと考えている」


 つまりは、オロチという蓋をしておきたい汚泥を封ずるための壺が地方都市コハクドらしい。ポセイドンも、クライムボーイズも、オロチと敵対するにしてもまだ手を出すには早いと言うのだ。


「それは何故だ、戦力か、はたまた堅牢な守りか?」


 理由を問うたのは町田であった、本拠地と知りて何故向かわぬのか?戦力の差なのか、はたまた街に強固な砦でもあるのかと、カイトと赤田に問いかける。問いかけられた二人が、互いに見つめて、どちらが話すかと目線のコンタクトによりカイトが理由を話した。


「闘士街が襲撃を受けるとな、中央、このルテプから姫の膝下の闘士"四聖"が治安維持で守りに来るんだ」


「四聖……」


 四聖、つまり四天王的な奴かと、神山は想像した。そんな奴らが居たのか、しかも都市を守る為に襲撃があったら出っ張ると言う話に、似た様な話が漫画にあった様なと記憶を探り、あちらは確か特定の種族の襲撃で出てきてかつ、3人だったなと思い出した。


「四聖の戦力は他の闘士とは群を抜いている、その力で姫を守るあいつらは、一人で千人分の強さを持っている、国家戦力ってやつさ」


 赤田はカイトに続き四聖の強さを語った、それを聞いて神山以下TEAM PRIDE面々は、此度のオロチとの戦いを各々まとめ上げるのだった。


 戦力差から負けているので、このルテプにて襲撃を受けたら迎え撃つ形となり。


 本拠地は知っているが、手を出せば国家戦力が飛んでくる。


 つまり、できるのはゲリラ戦及び迎撃戦のみなわけだ。


 さて、それを踏まえた上で神山は、中井は、町田は、河上は……如何なる結論を出したかと言うとーー。


「国家戦力の闘士が飛んでくるのか」


 神山は腕を組み視線を天井に向けた。


「つまり、シダト領内最強格の闘士なわけか」


 中井は髪の毛を掻いて。


「それが見て見ぬ振りしているわけか……」


 町田は両の手が拳をつくり。


「成る程、成る程……」


 河上は鯉口を鳴らした。


 この瞬間、カイトと赤田正次、ポセイドンとクライムボーイズの両首魁が気付いたのだ。


『こいつらに話をするべきでは無かった』と。


『こいつらを関わらせるのでは無かった』と。

 

「マリスさん」


「駄目よ」


 神山が蘭々とした眼差しで、マリスの名前を呼ぶが、マリスはピシャリと止めた。まさか国と事を構える事になる戦いになるなど、彼女もそればかりは出来るわけがなかった。


「貴方達は私の闘士よ、向かって来た輩を倒すなら構わない、けど私が雇っている以上出過ぎた真似は許さないわ」


 この時、このオロチとの戦いに反対をしていた神山が乗り気になったのは、やはり四聖の存在を知らされたからだろう。そいつらと闘う為に、コハクドを襲撃する気満々であったのだ。


「そっか、残念……じゃあ、とりあえずこれでお開きにします?」


 主人の命令に、闘士としては従わねばなるまいと、神山は残念そうにため息を吐いて、話も終わったので、とりあえず方針も固まったからお開きにしようかと皆に聞いた。


「ああ、お開きにしよう、テメェらの命のな」


 それに答えたのは、この場に居た誰でも無かった。神山も、そしてカイトも、赤田も、この場に居た全員が、ポセイドンの入り口から響いた声に振り向いた。入り口より歩いて来た男は、金髪ロン毛のバイカースタイルの男。


「お前は……」


 その顔を知っているのは、中井と河上であった。雨中の襲撃を指揮した、オロチの幹部の一人ーー。


「関東チャラ男!関東チャラ男じゃないか!!」


「嘉戸白雄だ!!誰だ関東チャラ男って!?」


 河上の呼び間違いに、無頼闘士連合オロチの幹部が一人、嘉戸白雄は怒り叫ぶのであった。

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― 新着の感想 ―
[一言] 河上さんてにをは間違えたら剣先突きつけるか… これさえなければチーム内の秩序派なのにな… 今回は町田さんも手加減無しでぶっ殺しに行くから武器を使うのかな?沖縄古流空手の武器術って鎌術や剣鉈に…
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