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現世の確執 〜族と130円と中井真也の過去〜 4

 僕の通う学校は北側の上方、しかし家代わりとなるのは南の下方、埠頭にある倉庫であった。遠縁の叔父がこの倉庫街で働いていた為、大枚を叩いて用意して貰ったのだ。


 さて、その大枚だが、僕は自分で生活費を稼いでいた。前の町の家族とのいざこざを終わらせて、その際に中々の金が入ったわけだ。そしてサンボの師匠から経済学を学んでいた僕は、師匠から実践してみろと海外口座を開いてFXを始め、歴史的にも重大な事が起きた際にその波に乗れた為、9桁額は儲けた。師匠はそれを俺に譲り渡し、日本での仕事を終えてそのままロシアに帰っていった。


 金は人を狂わせる、税金関係と隠れ峯に叔父を大枚で雇って口座を開かせ、今はそちらで売買をしている、正直運が良かったので今は低ロットの取引しかしていない。


 そして英和田に来てからは、こうして屑どもの人生を摘み取るのを楽しんでいた。依頼料は別にとらなくていい、しかし130円を貰う理由は『お前のこれからの未来は缶ジュース1本の金で壊された』の意味合いを込めて、自販機を見て思いついたのである。


 さて、夏休みが来た。課題は7月中に終わらせて、悠々自適に惰眠を貪るのが日本の中学生……けれど、僕は違う。金がある以上趣味に回せる、格闘技イベントのチケットもいくつか取り、ホテルの予約もした。便利になったものだ、今はスマホ一台でなんでもできるのだから。


 話が逸れた、そんな夏休みの始まりだったか……不穏な話が広まっていたのだ。


『上方狩り』なんて言う、不穏な話を。




「ナカちゃん、オロチのメンバー2人壊したの、ナカちゃんやろ?」


 夏休み初日の話、僕は自分の住う倉庫の目の前の、埠頭で海を眺めていたら、うざったい声が僕を呼んだのだった。まず、この町には『運転免許』なんて言う紙切れは意味を成さないらしい。何故かって?僕の後ろで短ランにリーゼント決めて、改造したCB400SFへ跨っている奴が、僕と同い年の中2だからだ。


 僕の事を『ナカちゃん』なんて馴れ馴れしく呼ぶこのヤンキー、名前は谷村正志。英和田町は南、英和田第二中学校に通う2年生である。僕が英和田町に流れ着いて、下方の倉庫街に居ついて何時からか、僕に絡んでくるヤンキーである。


 先に釘を刺しておくが友人ではない、決して。ただこの谷村、英和田町に関して知らない事は無いと豪語しており、実際どこに誰が何をしているかまで調べ上げる事ができる、英和田町限定の情報屋気取りでもあったりする。


「あー……何かそんな族車に跨った奴二人、確かに壊したよ、それが何?」


「せやったら、しばらく英和田から逃げときや、オロチの奴らなぁ……上方狩りゆうて、上方のがくせーを狩るらしいで」


 何時の時代の話なのだ、某昔のツッパリ漫画のボンタン狩りじゃあるまいし。僕はやはり昭和にタイムスリップしたらしい。


「何でだよ」


「そらお前、下方の奴らからしたら、上方のボンボン地区で仲間寝たきりにされたら怒り心頭やで、しかも……仲間の一生を破壊する輩と来たら敵討ちにも走るわ、見つかるまで終わらんかも知れんで」


 ヤンキーは仲間意識の強さがあるのか、群れなければ強くなれないのか知らないが、仲間の一生を破壊されたら立ち上がるらしい。まず、お前らヤンキーが真面目で健全な学生様の邪魔をしないでいただきたいのだがなと、僕はふーんと谷村に返事を返した。


「それになぁ、噂も立っとる……上方には死神が出るって、トオルちゃんやったのもナカちゃんやろ?まだ面ぁ割れてないけど、知られたらえらい事になるで」


 トオルか、あの電車一両占拠してた高三だっけか?あいつも下方のツッパリで、僕が走る電車の窓橋から投げて、タイマンで夜の英和田神社で首を折ったんだっけ。顔役だとか、町一番の喧嘩屋か知らなかったけど、結局喧嘩の域を出なかった輩だったなと思い返す。


 そんなヤンキーが今や、点滴に人工呼吸器、おしめの見すぼらしい姿で病院に居るのだから笑えてくる。


 まぁ、それはそれとしてーー。


「で言うかさ、そのオロチ自体知らないんだけど?何?オロチって?」


「知らずに聞いとったんかい!?」


 名前は知ったが、この時までどんな暴走族かは知らなかったので、僕は谷村に話を聞く事にしたのだった。


「知る必要無いかなって、で、どんな奴ら?」


「ただじゃ教えんで」


「幾ら?」


「二千円」


 谷村に情報量二千円をきっかり渡し、僕はここで初めてオロチの内情と歴史を知る事になった。




 谷村に話を聞いて、僕はオロチの内情と歴史を知った。


 初代は硬派な走り屋チームだった事。


 決して、上方には手を出さなかった事。


 ヤクやシンナーには手を出さなかった事。


 対して今の二代目は最早、走りは二の次の暴走族で。


 上方にすらカツアゲで手を出して。


 さらに上の輩は、英和田町の外から来たチーマーかギャングと結託して、ヤクを売り捌いているという。


 走り屋チームも暴走族も変わらないのでは?どの道他人に迷惑を掛けているのは同じだろうとツッコミを入れたら、谷村は違うんだと頑なに譲らなかった。まぁ、僕にとっては前者も後者もゴミクズに変わりはしないわけだ。


 そして、そんな輩が今僕を探して『上方狩り』なんて始めようとしているらしい。上方には学校でしか居ない僕を、上方の学生に被害を出して探す気なんだとか。


 つまりだ、僕の責任でもあるわけだ。まぁその前に、高校生のクセしてうちの中学校へカツアゲしている時点でダサいのだけど。


 こいつらは雀蜂の巣にエアガン撃ち込んできたわけだ。僕は話を聞き終えてから、谷村へ首を向けて聞くのだった。


「ねぇ、そいつらどこでたむろしてるの?」


「は?……あの、ナカちゃん……何する気?」


「目障りだしさ、潰そうかと」


 それを聞いた谷村は、ゆっくり後ろに下がり出し、改造したCB400SFに乗ろうとしたので、首根っこを捕まえて引き倒してやったのだ。


「か!堪忍してやナカちゃん!ナカちゃんがボロにされたら絶対俺狙われるやん!」


「ボロにされるのは奴らだ、心配しなくて良いよ」


「信じれるかアホ!ナカちゃんは知らんから言えるんや!オロチはなぁ、100はくだらん数がおるねん!」


 100人のゴミクズチームが居るのか、なら話は早い。僕はこの数が出た瞬間、いかにしてそのオロチを倒すか算段を立てて居た。馬鹿な話だ、たった一人で100人の年上の族へ、邪魔だからと潰す事を決めていたのだ、中学校時代の僕は。


 なんだろうか、こう言うのは。脳内麻薬というやつだろうか?とにかく僕の頭には、その族を完膚なきまでに叩き潰す事しか頭になくて、その為に何が必要なのかまで計算していて、可能というのが頭の中で浮かび上がったのだ。


「とりあえずは……色々取り揃えないとな、で?たむろしてる場所は?」


「知らん!知らんど!?」


「じゃあ縊り殺すか、谷村くん?」


「お、おれとナカちゃんの仲やん!?堪忍してくれぇ!!」


「僕は君に友情を感じてはいないのでね」


「ひぃいいい!?目ぇ怖ぁあ!本気あたたたたた!?分かった分かった!話すから!!」


 谷村に二代目英和田暴走連合オロチの場所を吐かせる、聞けば奴らは普段は英和田の商店街、あるバイクショップにて普段たむろしているらしい。


 こうして、僕は一人でオロチと戦う事を決めたのである。


 え?理由?


 だって、煩いじゃん、毎晩毎晩、下痢便みたいなエンジン音鳴らされたらさ?

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― 新着の感想 ―
[一言] 首を折って全身不随にさせるって、そんなに上手く行くこともなく場合によっては死ぬと思った(頸椎の重要な神経を損傷して窒息死する)が、別に死んでもいいんだろうな。 あるいはもう少し言えば、自分…
[一言] FXで大金ゲットって夢のような幸運だね。 しかも情報屋もしっかり使っているなんてマジで殺し屋なみじゃないですか。サンボ技で人生破壊してるけどワイヤーとかで首チョンパとかホントに習ってないのか…
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