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鮮烈なるデビューを 4

「ニルギリさんありがとう、あれは見せられない」


マリスの目は、ニルギリが手で塞いでいた。ニルギリ自身も我慢しているらしい、顔が青い。


「やったか、やっちゃったかぁ……」


町田さんは頭を押さえて、やはりと項垂れていた。中井は……姿が見えないので恐らくトイレか。返り血を浴び河上さんが、何食わぬ顔で、悠々とベンチに帰って来る。


「何か知らんが棒立ちだった故、試しにしてやった、喜べ神山、俺の冴えと言い、こいつの研ぎといい、曇り一切無しよ」


うん、相手が立ってた感じで萎縮していたのも、遠目にだが分かった。いや本当に、よくもまぁ俺はこの人を相手に素手で勝てたなぁと、背中も心臓も冷えついて仕方がない。


さて、3つ目の担架には、無残なる死体を見せまいと白い布が掛けられて運ばれている。


「っしゃあ!行ってくる!」


遂に俺の番だと、そのまま上着を脱ぎ、両手に巻いた荒縄のバンテージの握りを確認して、その拳同士を一度ぶつけ合い、俺は芝生を駆ける。


「これだけしておいて、負けるなよ神山」


河上さんから笑いながらも檄を受ける、そうだ、これはあくまで勝ち抜き戦。俺の前たる全員勝利したが、試合を放棄した場合負けの扱いとなる。即ち、これは大将同士の一騎討ち、もしここで俺が負けたら、TEAM PRIDEは敗退となるのだ。


では何故、中井真也から勝ち抜きで残らなかったのか、それは2日前に遡る事になる。



『えぇっ!?大将!!嫌だよ、絶対順番回ってこないやつじゃん!!』


それは、予選における戦いの順番決めをしていた時だった。この時神山、先鋒に立候補をするも、なんと中井、町田、河上3名から反対を言い渡され、大将に付く様に言い渡された。


『まぁ聞け神山くん、そもそも僕達を集めたのは、神山くん、君だろう?だからこそキミは、大将になる権利もあり、義務もあると思うのだが』


『む……』


だが、ぐうの音も出ない理由を、町田より言い渡された。そも、闘士として我々3名を集めた君が、先鋒を切る必要は無い。但し、集めた責任をとり、対象として鎮座する義務があるだろうと。


『それと、ルールを確認して決めたのだが、我々はどの道全員、1回ずつは戦う気でいる』


そこに河上が、後押しするかの様に、手の内を話す事となった。


『勝ち抜き戦のルールだが、負け扱いになるが次の相手と戦わず、次の番に回す事が出来るらしくてな……俺としては全員、勝ったら番を回したい』


『何でですか?それこそ、先鋒が誰かは別として、4タテかましても良くないですか?』


河上は、勝った場合は連戦せず、次に回す事にすべきであると提案した。こうすれば、確かに負けた際のリスクはあるが、神山まで出番が回ると説明する。だったら、先鋒が4タテ、つまり4戦全て勝ってしまえば良くないかと言う神山に、河上は返す刃を放つ。


『いや、先鋒がそれで怪我を負い、戦えなければメンバー不足で失格もあり得る、温存も考えての作戦だ……あと……』


『あと?』


『俺に寝首を掻く趣味は無い、俺は、この予選で全員、手の内を披露すべきだと思っている』


河上はそう宣った、体力温存を語る一方で、手の内を曝け出すという暴挙に、これは神山、さらに中井、町田も目を見開いた。


『この予選で俺達は、TEAM PRIDEの力を示すべきだ、劣性召喚者が、圧倒的に優性召喚者を倒したのだと、そうすれば……奴らは対策を練るだろう、気を入れ替える、一筋縄では行かなくなる……』


『それで?』


『多少は骨がある奴と戦えるだろうよ、神山?お前も、何も対策をして来ない無知な相手を負かして、楽しいか?』


『それ言われたら、うん』


理由は単純、イーブンでありたいからと、河上は語った。この世界はクラスとスキル、それが至上であり闘士の全てだ。むしろ、我々は『異物』と言われておかしく無い、だからこそ知って貰うのだ。無知なままで戦い勝つ事は『蹂躙』と変わらないと。


何とも傲慢ながら、首は横に触れない理由に、皆が黙ったがーー。


『で、本当のところは?』


と、中井が尋ねると。


『順番回らないなんて許さん』


結局、自分が戦いたいだけであった。


『俺は副将をやろう、町田か次鋒、先鋒は……中井くん、君が行け』


そして独断により決められた順番が、以下の通りだった。


先鋒 中井真也


次鋒 町田恭二


副将 河上静太郎


大将 神山真奈都


『僕が先鋒?理由は?」


河上の指名に中井は驚いた、それこそ河上自身が先鋒を名乗り挙げるかと思っていた節がある。それも河上が、しっかり理由を答えた。


『君の関節技、グラップリングか……この中でも一番異質であり、鮮烈だからだ、TEAM PRIDE先鋒に相応しい技術だと俺は思う』


それは、中井の修得せし、グラップリングという技術体系だった。敵を殴る、斬るというのがこの世界においての当たり前、その中で中井真也のコマンドサンボ、ブラジリアン柔術は、衝撃を与えるに違いないだろう。鮮烈なるデビューには、衝撃は不可欠、故に河上は中井を先鋒に推したのだった。


『締め落としてやれ、骨を折ってやれ、グラップリングという技術体系で、展覧試合を掻き回してやれ』




こうして、TEAM PRIDEの順番は決まった。目論見通り、中井の跳び十字が衝撃を広め、次いで町田さん、河上さんも鮮烈にデビューを飾った。


そして大将戦の俺だ、無論、しょっぱい試合をしない。狙うは勿論KO勝ち、さぁ来い……来いと、俺はまだ出てこない羽瀬沼を待つ。


しかし……。


「うん?」


何だか、様子がおかしい……というか、ベンチに誰の姿も見えないのだ。さっきまで羽瀬沼の姿があった筈だが……。しばらく待ったが、一向に現れない……そしてサーブルクロス側のベンチから、係員が出てきて駆け足で駆け寄り、何やら審判団達と話している。


そして、主審に耳打ちをして……首に下げたメガホンを持ち上げた。


「えー……サーブルクロスのダイスケ・ハゼヌマ選手が!棄権をしたため、ハゼヌマ選手の敗北となります、この時点で、TEAM PRIDEの2回戦進出が決まりました事を、お知らせ致します」


「えっーー?ぇぇええええええ!?」


俺は愕然とした、まさかの棄権を言い渡され俺は叫んだ。


「待て、待って!審判さん?嘘だよね、嘘って言ってくれ、悪い冗談だって!」


「あ、いや!本当だ、ダイスケ・ハゼヌマより正式な棄権の申し出が出たのだよ、君の不戦勝だ!」


「そんなぁあああああ!!」


俺は膝から崩れ落ち、頭を地面に着けた。そんなのって無いよ、こんなの絶対おかしいよ!結局俺、戦ってないじゃん!


側から見れば、ラッキーかもしれない。棄権による不戦勝、戦わずして勝つという幸運に恵まれたのだ。しかし、練兵場に響渡ったその叫びは、何とも悲痛な叫びだったという。



展覧試合予選 第一ブロック 第二試合


TEAM PRIDE VS サーブルクロス 結果



◯シンヤ・ナカイVSカズキ・ミシマ●

試合時間0:06 一本勝ち(展覧試合史上最短記録更新)

決まり手 跳び付き腕十字固め


◯キョウジ・マチダVSケンイチ・オダ●

試合時間0:08 KO勝ち

決まり手 右ストレート(正確には右上段飛び込み突き)


◯セイタロウ・カワカミVSヨウジ・マキ●

試合時間0:10 絶命勝利

決まり手 袈裟斬りにより一閃


◯マナト・カミヤマVSダイスケ・ハゼヌマ●

試合時間無し ダイスケ・ハゼヌマ選手の棄権により、不戦勝



TEAM PRIDE 予選第一試合突破!!


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― 新着の感想 ―
[一言]  とりあえず。  神山君、可哀想に( ̄∇ ̄)。気分はおやつを取り上げられた小学生か?(*´∀`*)  次の試合は先鋒にしてもらえるように頼んだら?  無理だったら・・・・・・出場出来るまでチ…
[一言] TEAM PRIDEの目標とする一試合一人一殺が達成できないなんて…残念だったね神山さん。
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