表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
42/206

鮮烈なるデビューを 1

こうして、シダト闘士練兵場の中へ入った俺達を待ち受けていたのは。無論、闘士達であった。


しかしだ、装いから違った。何というのだろうか、それぞれがそれぞれの、チーム毎に衣装を着ている。青だったり、黒だったり、白だったり……何かを模したデザインだったりと様々だ。


俺達はそう、それぞれの普段着で来た為、観客に間違われてもおかしくないかもしれない。そして何より……。


「おー……やっぱりいいな、あんな感じのチームの服って」


これに尽きる、期間があればマリスに強請れたかも知れない。何というか、高校の大会だとかそれを思わせる。


「同感だな、マリス嬢、この予選の後に同じ物を所望したい」


河上さんも同感と頷く。中井や町田さんも、その気のようだ。


「いいわ、予選を越えたら手配しましょう、他にも欲しい物、作るから」


マリスはこちらを振り返らず、一直線に受け付けへと向かいながら俺達に、予選の褒美はそれにすると約束してくれた。そうして、受け付けらしい机と、係員らしき人間の元に立ち止まった。


「参加者様ですか?」


「はい、参加証と誓約書、メンバー表の提出に来ました」


「受け取らせて頂きます」


マリスは、羊皮紙を三巻き渡し、係員はそれを見て、俺達を見て……また羊皮紙を見て、目を見開き……軽く笑った。


「失礼ですが、マリス……ミッツァー様?本当によろしいのですか?」


「何か、間違いがありましたか?」


「いえ、参加者の闘士がその……皆劣性ですが?」


まぁ、予想はしていた。笑われるだろうなと、この内地では当たり前だろうなと、別にそれで怒り散らす程、俺達は沸点が低く無い……。


「参加者に劣性も優性も、関係無いと聞きましたが?」


「あぁいえ!了承しているのであれば……」


だが、こいつ、わざと"劣性"の部分を強調して言いやがった……他の参加者に聞こえるように。この瞬間、若干臨戦態勢へ移行した者が1名居たが……。


「やぁ君たち、耳がいかれて無ければ今……劣性と聞こえたのだが?」


その、臨戦態勢に移行した者に、運悪く声をかけた者が居た。


「それがどうかしましたか?」


声をかけられたのは、中井真也……その後ろに立っていたのは、茶髪の如何にもなナルシストを気取った、レイピアを腰から下げたチェック柄の衣装に身を包んだ青年だ、三銃士気取りの様相を匂わせる青年を、中井は振り返って向かい合った。


「君たち、スキルもクラスも目覚めていないのに、この展覧試合予選に出るなんて、些か無謀じゃあないかい?」


うん、これもまぁ、言われて当たり前かなと、予想はしていたが……居るんだな、こう、漫画で言う噛ませポジション的な、俺たちが居る場所は化け物の巣窟と言い張る輩的な奴が。


「出るだけ無駄さ、一回戦から負けは見えている、悪い事は言わない、帰りたまえよ?」


優しく諭して見えて、見下している、どこの誰か名前は知らない闘士が、中居の右肩に左手で触れた。


「あ、何、握手したいの?してやろうか?」


「何?」


中井真也は、そう言ってにっこりとその闘士向けて笑うや、右肩に置かれたキザったらしい銃士気取りの闘士の左手に、素早く自ら右手の指を絡めた。所謂手4つで、指同士を絡め合う。


「ほらこうして、ぎゅっと!」


「っ!ぎっ!あっ!」


そのまま中井はキザ闘士の指を、ギリギリと握り締めた。力比べの如く、ギリギリと指を握りしめれば、キザ闘士の顔が歪んだ。


中井真也、バックボーンはロシアの大地で生まれた格闘技、コマンドサンボ。投げ技、関節技を主軸としたスタイルであり、彼自身も関節技に関しては、ブラジリアン柔術、それら全てを内包する、グラップリング競技も経験している。


そして、意外な事に……TEAM PRIDE内では一番の小柄でありながら、膂力に於いては他のメンバーでも一番である。神山との対決の際も、町田との共闘においても、掴んだ相手を思い切り引き抜き、豪快に投げ倒す様を見せている。


そんな少年による握手で、闘士が顔を歪めて呻きを上げていた。握手を求めて来たから答えた、とスポーツマンシップという幕に隠された、陰湿な痛めつけを、その名も名乗らないキザ闘士向けて始めたのである。


「あっれー、嬉しいな、離してくれないなんて?よっぽど僕がぁ、好きなのかなぁ?」


「ぁぁあああ!?がぁあああ!!」


ミシミシミシと、神山達にもその指の骨が軋む音が聞こえて来た。これは握手であると、他の闘士にわざとらしくアピールしながら、力を加えていけば、キザ闘士は遂に指、手首、前腕にかけての痛みに両膝を着いた。


『お、おい嘘だろ?』


『サーブルクロスの三島が、膝つかされてる!?』


『馬鹿な、優性召喚者が劣性召喚者に力負けするなんて!』


周囲の参加者が、中井のパフォーマンスに絶句した。成る程と、TEAM PRIDEは納得した。そも優性召喚者は、クラスやスキルで肉体自体が強化されている、つまりは、力比べ自体にも勝てるのが通例であるのかと。


中井を見守っていた俺達だったが、中井が軽くこちらを向いて目線を送った。


『壊していいか?』


その意味で捉えた俺はーー。


『やっちまえ』


と、ウィンクした。次いで町田さんはーー。


『口舌が気に食わん、やれ』


と、頷いて。最後に河上さんはーー。


『チェスト関ヶ原!』


と、右手をゆっくり振り下ろした。


中井は賛成三つを受け取り、私刑を実行に移した。


「ほら、立たせてやるよ!」


その声とともに中井は、三島なる闘士の左手首を捻り上げ、肘内が真上に向くようにして、思い切り手首を甲側へ折り曲げた、手首の筋が、関節が連動して肘を張り、まさしく腕ひしぎの様に極められる、その痛みに反射運動で立ち上がり、必死に関節を守った三島だったがーー。


ビギギキィ!と、音が鳴り響いた。


「いぎっ!ぎゃぁああああああああああああ!!」


三島が絶叫する、中井が三島の指から絡ませた指を解けば……三島の左手の指が、あちらこちらにめちゃくちゃに曲がり、手首からは骨が飛び出て、肘はあらぬ方向に曲がり、力なく垂れ下がっていた。


「はんっ、他愛無い」


泣き叫び、地面に蹲る三島、それを冷ややかに見下ろす中井という図式に、この場の参加者達は慄いた。中井は周囲を見渡し、両腕を広げながら、スタスタと歩きつつ、声をあげた。


「どうもみなさん、どうも、TEAM PRIDEの闘士、劣性!召喚者の!中井真也です……初参加の外壁から来たチームですが、一つお手柔らかに」


自己紹介を兼ねたデモンストレーションとばかりに、煽り返す様に劣性召喚者をアピールする中井。足元で呻く三島の頭を踏みながら、深々と一礼をした。


さっきまでざわついていた場内だが、これだけの事をしたら、ただでは終わらない。闘士達の中から、何やら騒ぎ始め、3人の、中井の足元の三島と同じチェック柄の銃士服に身を包んだ輩が現れた。


「み、三島ぁ!?お前、三島に何をしたぁ!」


中井も、いや、TEAM PRIDE一同が皆、これで理解した。成る程、こいつらがざわめきの中聞いた『サーブルクロス』なるチームのメンバー達らしい。


三島に何をしたか、問われて中井は、ニヤリとそれは悪そうに笑って、3人向けて答えを返した。


「え?見てわからないかな、親愛の握手したらさ?脆いね、壊れちゃってやんの」


煽って喧嘩を売る中井に、一番前に居た鍔広帽子の青年が、左腰のサーベルを抜き放った。それを見て中井は素早くバックステップをして、三島から離れた。その刹那には、既に河上さんが右手を柄に置いて抜刀準備をして、次を待っていた。


「三島、おい、大丈夫か?ああくそ、なんてこった」


「いでぇ、いでぇよ……骨がぁ、ぁあああ、いぃぁあ」


無残に破壊された三島の左腕を見て、鍔広帽子の闘士が、キッと三島を睨みつけた。そのまま立ち上がるや否や、三島に剣を突きつけて宣った。


「展覧試合の参加選手同士の喧嘩は、規律違反だぞ……参加資格の剥奪、失格なのを知らんのか!?」


あ、やべぇ……その辺考えてなかったわと、俺や河上さん、町田さんも、この世界に長く生活して、アマチュア試合やらの規約で、ご法度の喧嘩をしてしまった事に今更気付いた。そして何より、主人のマリスさんが、顔面蒼白で中井を見ていた事に、事態の重さが拍車をかけた。


「いやだから、握手しただけですけど?」


だが、中井は物怖じしなかった、私に秘策があるとばかりに、中井は鍔広帽子の闘士へそう言うのだった。


「あ、握手でこんな事になるわけがあるかぁ!どこまでもシラを切るか!」


無論、それが通じる程馬鹿では無い。通じる訳がないのだ、しかし中井は……口元を押さえて笑うのだった。


「ふふ、あ、そうなんだ?優性召喚者どもって、劣性召喚者の握手で壊れちゃう、クソ雑魚なめくじ集団だったんだ、ごめんごめん、俺達の"優しい握手"で壊しちゃってさぁ……」


これを聞いた、鍔広帽子だけでない、予選参加者たる、内地召喚者に、確かな冷たい空気が張り詰めた。


「これは、参加する理由も無くなっちゃったかなー、撫でて負けちゃうクソ雑魚なめくじ偽物集団と、僕たち本物が戦っても、負ける訳ないし……帰ろっか皆」


それは、宣戦布告であった、中井真也の、ひいてはTEAM PRIDEによる、内地召喚者への宣戦布告であった。それを聞いて、黙っている訳がない。


優性召喚者として『選ばれし者』として、外壁からの侵略者を、大口吐いた輩をのさばらせて帰す事は許されないのだ。


「喧嘩を売っているのか、劣性召喚者」


「先に売ったのはそいつだぜ?」


鍔広帽子の闘士が、中井を睨みつける。それだけではない、背後に居る予選参加者全員が、中井や俺達を睨みつけて来るのだ。やってくれたな、中井……楽しみで仕方なくなって来た。そうして鍔広帽子の闘士が、サーベルを鞘に収め、受け付けの係員向かって声を上げた。


「係員!たしか展覧試合予選1回戦は、両チームの同意があれば、そのチームと戦える特別規則があったな!」


鍔広帽子の闘士が、係員に特別規則なるルールを挙げ、それに係員が頷いた。


「1回戦、貴様らTEAM PRIDEなる無知蒙昧な輩の相手は、我々サーブルクロスが相手をしてやる!よもや逃げる事はあるまいな」


「神山くー」


「っしゃあいい!よくやった中井!やるぜ!もちろん受けて立つ!!」


そんなもん、聞くまでもないわと俺は声を張り上げた。はっきり言えば、このまま予選関係無しに、バトルロワイヤルよろしく、全員とやりあっても良かったが、早速1回戦から戦えるならば、これ程ありがたい事はない。


町田さんは、やれやれと溜息を吐いたが、河上さんは柄から手を退けた。これにより、俺達は参加前に失格にはならず『サーブルクロス』なるチームと一回戦を戦う事が決まったのだった。


「その口から吐いた言葉、戻せると思うなよ劣性召喚者……」


「安心しろ、そもそも言葉は飲めない」


鍔広帽子の虚勢に言い返した中井、そうしていると……。


「は、羽瀬沼……すぐ、俺を治せ……こいつは、こいつは俺がやる!」


「み、三島……」


中井に左腕を破壊された、三島なる闘士が、息を荒げて、鍔広帽子の闘士、羽瀬沼にそう言った。


「お、俺が戦って、勝たなければ気が済まない……すぐに治せ、出る、控えは出すな!」


強く睨みつけてくる三島を見下ろす中井、早速因縁が築き上げられた、展覧試合の予選……そして、決してこの内地から生きて帰すなと、予選参加者たる優性召喚者は、TEAM PRIDEへ照準を絞り上げたのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 盛り上がってまいりました! わくわくですね!
[一言] 常識人だとおもってた町田さんまで止めないとは… 武器持ち相手だから河上さんの酔拳ならぬ酔剣が見れるかな?
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ