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呪いの根源

 クソ似合わない、深夜アニメの騎士団的な礼服を纏いし神山は、その足……ではなく馬車でシダト・キャッスルに向かっていた。見てくれは笑われるくらい最悪なのに、着心地は凄まじく良いのが気に触る。材質から何から、この世界にある服と違い現世の物でも上物の肌触りであったが、これを着こなせるのは河上さんくらいではなかろうかと、神山は頬杖をついて車窓から見慣れてしまった景色を眺めながら思った。


「まぁそう気を落とさないでくれ神山くん、いずれ着慣れてくるさ」


「今度から着ないでいいか?」


「それはダメだ、というか……呼んだら来てくれるのかキミは?」


 次呼ばれたら普段着で来るという神山に、そもそも来てくれる気があるのかと篠宮に返されて、話を止められた。神山真奈都、ムエタイ馬鹿ではあるがヤンキーや不良では無い根は真面目な少年は、一度責任という言葉が自分にのしかかると、それを投げ捨てる事はできなかった。


 もっと考えて行動したら良かった、今更になって後悔しても時間を戻す事はできない。まさか自分が、高原を倒したのは良しとして国の最高権力者の席の一つに座る事になるなど考えてもいなかった。


「あの後……」


「うん?」


「あの後、高原は……どうなった?」


 その前任者で、更には現世において因縁があった高原泰二は、あの後どうしたのだと神山は尋ねた。篠宮は隠す事もせず、どうなったかを語る。


「翌朝には城から消えたよ、あぁ……アビリティ・スフィアは戻って力もそのままさ、その気になればどこぞのチームに改めて入れば来年の展覧試合には見えるだろうが……一度上まで登った人間は、下まで叩き落とされたら立ち上がれないと思うよ」


 流石に城からは消えたらしい、その気があればまた再起を図るだろうが本人はどうだかと、つい最近まで仲間だった相手にはドライな態度に、神山は眉間に皺を寄せた。そして少し指摘を込めて尋ねた。


「お前、元とは言え四聖だった仲間の奴に冷たくないか?」


「仲間ではないさ、僕らはあくまでそれぞれ独立した存在だよ、この国の為に力を振るうが馴れ合いは無い」


 同じ、国家の最高戦力でありながら、馴れ合いはしていないという。


「そもそも四聖は、四つの席にこの国最強の闘士が座す事が決まっている、過去に所属したチームも関係が無く、その椅子を奪い合って勝ち残りが座っている、姫に対する縦の繋がりはあろうと横の繋がりはないに等しい」


「はー、成る程……ちょっと納得できたわ……俺に忠義やら無いぞ」


「構わないさ」


 横への繋がりは希薄だが、縦……つまりは主従の関係はあると言う篠宮に、こちらは『姫』への忠義は無いとしっかり釘を刺しておく。そんな事は知っている意味で、それでも構わないと言い切った


「さ、着いたよー」


「はいはい……ったく、逐一馬車なんて無くとも歩いてーー」


 迎えも別にいらなかったと言いながら、先に出た篠宮に着いて行く神山。そして眼前に広がる景色に……ドン引きした。


「え〜〜……」


 神山は幾度か、城門から城まで続く道を見ている、懇親会が離宮で行われた際も目にした。中々に長い道であったと、そんな道にずらりと……並んでいたのだ、この城を守護する衛兵達が、城の正面入り口まで。


 もう、いかにもお偉いさん用お出迎えスタイルに神山はドン引きであった。この人の並ぶ間を歩くのか、本当に?篠宮に目線を送った神山を、篠宮は手を差し出して促した。


「さぁどうぞ、新たなる四聖の一人、神山真奈都」


「お前、楽しんでるな実は?」


 人をおちょくるのも大概にしろと思いつつ、神山はその道を歩き城へ向かう。此度の主人や仲間達にかけられた呪いの解決の為、その原因を特定したという『姫』に謁見する為に神山は城への道を歩いた。


 城内へ入った神山が通されたのは、会議室らしき場所だった。そこに篠宮がどうぞと、扉を先に開けて、部屋に通されると何人か既に待っていた。神山も見知った顔である。


 まず、四聖の二人『剣聖』御剣玉鋼と……。


「えーと、名前聞いた事無かったわ」


 そう言えばと、この恵体巨躯な男は一度も名前を聞いた事が無かったと


「明石雷電、四聖の盾王(じゅんおう)についている」


「雷電……よろしく」


 2m近くはあろう四聖、その手が差し出され握手すれば、軽い握手だけでその剛力を感じ取った。やはりでかいのは強いなと苦笑いしつつ、四聖以外にまた一人席に座している男を見て、神山は声をかけた。


「久々だな村田くん……そっちも大変だな」


「お互いこうなるとは思わなかったよ、決勝出場と四聖就任おめでとう神山くん」


「めでたくないけどな……いい迷惑だ」


 あどけなさを残す茶髪の少年、村田翔吾……TEAM PRIDEと同じ展覧試合の決勝に進んだチームであり、前年優勝もしている、ブルーラウンズの大将。その大将もまた、この事件の渦中に巻き込まれていたとは、先程までの神山は思っても見なかったのである。


「集まったわね……」


 神山と篠宮が到着し、それを見越してか奥の方にもある両開きの扉が開け放たれ、相も変わらず顔をベールで隠した『姫』と、それに付き従う……恐らく召喚者だろう少女二人が姫の二歩後ろ左右それぞれに立ち、並んだ。


「マナト・カミヤマ?まずは新たな四聖として立ってくれた事、参じてくれた事に感謝を……クラトから話は聞いてますわね?」


「ブルーラウンズまで、ほぼ同じ時刻に呪いをかけられた奴が居るとは聞いている」


 丁寧に、まずは新たな四聖という象徴となってくれた事、更にはこうして城に参じた事への礼を彼女は述べて、篠宮より此度の呪いに関する情報、その冒頭たる『ブルーラウンズが同じ呪いを受けた』という話だけは聞いたと答えた。


「それに関しては、当事者の僕から話しておこう」


 姫がそれに対して頷くと、自分が話せば一番分かりやすかろうと村田が席より立ち上がった。


「君たちと同じ昼に差し掛かるくらいか……内地ブルーラウンズのギルドを外出したうちの控え闘士が、ある液体をかけられた」


「液体……爆発じゃ無くてか?」


「ああ、液体だ……闘士達は薬品を被るとすぐに調子を悪くした、こちらにも医療担当で所属している者が解呪に当たったが……」


「解呪魔法を行使した途端、呪いを返された」


 その話を引き継ぐ様に、姫が語り出す。見れば従者らしき背後に立たせている少女から、羊皮紙を受け取りそれを読み上げたのだ。


「厄介で恐ろしい呪いです、上位の解呪魔法を行使する程、術者に呪いを伝播させる……弱い解呪なら食い止める事ができますが徐々に呪いは進行し、同様に呪いから術者への探知、根本から封印する治療、マナ置換法も治療に至らず呪いを伝搬させてしまう……術者の討伐のみが、この呪いを解呪する唯一の方法である……現在、集めた解呪、治療チームによる報告よ」


 神山はこの世界の呪いなど全く知らない、しかしこれをウイルス性の感染症に置き換える事で理解した。治療に際し触れて感染、投薬も意味をなさず、今は対症療法で進行を和らげる他無しと。


 そしてーー唯一の治療法は。


「何処にいる……うちの主人と仲間に呪いかけた奴は!そいつらを殺せばマリスさん、ニーナさん、長谷部に緑川は助かるんだな!?」


 この呪いを掛けた術者を、討伐する事!!それ以外無いと神山は、姫に声を荒げて聞き出した。


「助かるわ……この呪いを掛けた術者の特定の為、身を捧げ同じ様に呪いを受けた者達から報告が来ているわ……」


 もう一人の少女より巻かれた羊皮紙を渡され、それを振り開いて見た姫が言い放った。


「特定された呪いの根源は二箇所!両方とも、ここより北西のザディル共和国!!片方はシダト・ザディル国境を移動する呪詛の竜カースドラゴン!!そして、それを媒介に呪いを行使した術者は……ザディル国領のリアナンスにありと探知されたわ!」


 その二つの名前を聞いて、神山はピンとこないあたりこの世界自体興味が無く、学びもしなかったからである。ただ、河上よりザディル共和国が、この世界において大陸の半分を支配している事は覚えていた。あと、この世界に竜が居るのも、バルダヤのホテルでテールスープを食べたので頭には残っていた。


 対して神山以外四聖三人、そしてブルーラウンズの村田の顔は、驚愕と焦燥に染まっていた。


「カースドラゴンに……リアナンスと来たか……確定だ、エルフ至上主義のルウリム教団が犯人か!」


 その二つが繋がったと、篠宮が声を上げて此度の犯人を理解したと宣う。一方……神山真奈都は蚊帳の外であったが……ここで、それは何だと聞いたら明らかに現世の新喜劇の様に皆の力を抜きかねないので、少し黙っておく事にした。


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― 新着の感想 ―
[一言] 呪いの発生源から中継して行使するタイプみたいですね。 エルフ至上主義とはまさか…貧乳以外は認めん的な奴らか? きっとオロチの連中が諸悪の根源だろうな~
[一言] 内地の闘士くんたち無駄死にで草ァ!
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