異変
TEAM PRIDEによる内地への襲撃は、こうして幕を下ろした。
たったの一夜で、全てが変わった。
まず、内地のあらゆるチームの代表達が、外壁のマリス邸宅まで来訪して謝罪と今後の関係良好をなどと述べて来た。無論、それらは中井と河上の二人により門前払いとされた。足元に銃弾でダンスを踊らせ、首元に刃を向けて帰らせた。この機会に擦り寄るのが見えてならないので、逆に謝罪に来ない方が堂々としていると神山は感じた。謝罪やら話に来なかったチーム……展覧試合決勝で戦う、ブルー・ラウンズがその一つであった。
外壁の診療所に運ばれたマリス、ニーナ、長谷部、緑川は、内地の病院に移され治療を受けている。
しかし、余程強い呪いらしく、内地の闘士による如何なる解呪の魔法でもそれらは解けず、進行を止めるしかないと突きつけられたのが現実であった。呪いを掛けた犯人も解析しているが、流石に時間は掛かると見える。
そして……マリス達の解呪とは別に、問題が一つ。
神山が四聖の一人『拳神』高原泰二を倒した事による、新たなる四聖問題であった。
「あの……なんだよこれ」
「何って、四聖が着る正式な礼装さ、大変だったんだよ?君のために内地の職人やれ魔導士総動員して、夜なべして織らせたんだぜ?」
翌日の昼前、最後の謝罪客に中井が銃弾の雨でダンスをさせたそのしばらく後に、篠宮が尋ねて来た。リビングに通された篠宮が、そのテーブルへ重厚な金属製の箱を置いて開いたのだが……その中には真白を基調に、黒いラインが所々に入ったロングコートにズボン、さらに左胸元にはこのシダト国の旗のレリーフが刺繍された服が入っていた。
高原を下し、新たなる四聖となった神山へのプレゼント、ないし正式な四聖たる証である服だという。神山はその服を取り出して、コートの下にはインナーまで覗いたので、それらを全て見てから渋い顔をした。
「似合わねぇって俺に白は……えーー……着なきゃダメ?」
自分にこんな真っ白な服は合わないぞと、着慣れない色の服を前に着なきゃ駄目なのかと篠宮へ尋ねる神山、それに篠宮は残念そうな口ぶりで返した。
「着てくれないか……これを突貫で作ってくれた人達には申し訳ないのだが、君が嫌なら作り直すよ」
「分かったよ……今か?」
「あぁ、これから改めて、城に来てもらいたくてね」
神山は、自分に責任があったり厚意が向けられたらそれを無碍にはしない。昨晩の町田が責任を取れと言って、嫌々言って四聖を蹴ろうとした神山が、転じて四聖の席に座ると言葉を変えたのもそれ故にであった。それを篠宮は理解して言っているあたり、食えない男である。
神山は四聖正式礼装を持って、自室に消えた。それを見送りつつ篠宮は、リビングに集まった他の面子にも話を始めた。
「ああ君たちに朗報だ、どうやら……呪いの特定が完了したらしい」
なにっーー。一同の目が篠宮に注目を集め、更に話は続く。
「その為に内地の魔導士、聖職者……また魔法にスキルを割いた魔法剣士やマジックモンクがーー五十人くらいは使い物にならなくなった」
「何だ?謝罪と賠償でもしろと言うのかよ?」
その為の犠牲の数を態々報告する篠宮に、中井は食ってかかる。篠宮は笑ってその意図を説明した。
「違う違う、ちょっと実感湧かないかなぁ……つまり、そんな残り香というか、残ってしまった呪いを、調べあげる為更に50人が死にかけてるって話」
「調べようとしたら凄まじく強い感染力か致死性で犠牲が出ている……というわけか?」
「それ!この場合は、複雑過ぎてスタミナ切れというべきかな」
こればかりは優性劣性の実感の意識、その差異だなと言葉を変えて話す篠宮に河上は理解を示す。呪いとは言え、解析に掛かった人間がここまで倒れるのは異例中の異例らしい、今現在こうしてTEAM PRIDEに居るのは加護、異能に縁無き者達で実感が湧かないのは仕方なかった。
「それで神山くんには……僕たちと一緒に呪いの原因を討伐しに行く事になった訳、彼にはその為に姫から話を聞いてもらう」
「待て」
篠宮の話に待ったがかかる、町田が壁を背に預け腕を組みながら言い放った。
「この件はウチの問題だ、TEAM PRIDEの主人、仲間たちが被害に遭ったならば、TEAM PRIDEが解決するのが筋ではないか?情報開示して貰おうか、誰が呪いをかけたのか……」
町田恭二は言う、TEAM PRIDEを攻撃した人間は、TEAM PRIDEが討伐するのが筋であろうと。いきなり神山含めた四聖だけで、事態収集を図るのは違わないかと。それを聞いた篠宮が浮かべた表情はーー。
「その通りだ」
眉間に皺寄せた、苦々しい顔だった。
「町田さんの言う通り、君たちが犯人を捕縛、討伐するのが筋だろう……それは分かっているんだ……現に、姫様は君たちへ正式な協力を後で要請するだろうよ」
町田の言い分は理解しているし、その流れでもあったのだと篠宮は語る。その口ぶりで町田も何となくだが、そうはいかない事態に直面したのかと察して、篠宮の言い分に耳を傾けた。
「ーー君たちが内地から引き上げた後……ある事がすぐ分かったと言うか、あーー……間が悪い話になったんだよ」
「何だ、さっさと話せ」
勿体ぶらずに話せと河上が苛立ちながら急かすと、篠宮は頭を掻きながら言った。
「実は、内地側でも同じ時刻に、同じ呪いを受けたチームが居たんだよ、その報告は君たちが帰った後の事でーーもうてんやわんやさ」
篠宮の話に、TEAM PRIDE一同が耳を疑った。
「何だそれ、聞いてねぇぞ!」
「そりゃ君らが帰った後ーー」
そんな重要情報開示の瞬間に、神山は着替え終えて聞いていたのか声を荒げて更に尋ねる。そして皆がその姿を見てーー。
「ーーぷっ」
笑ったのは中井だった、それを皮切りに河上も口元を押さえ、町田は神山を視界に入れまいと首を窓側に向けた。
「あーーはっはっはっはっは!!何だよ神山その格好!まるで深夜アニメに出て来る騎士団の脇役その1みてーじゃん!」
「こ、ここまで似合わないとは……すまん神山くん、く、くくく!」
中井は大笑いを始め、河上も下を向いて笑い震えた。神山は流石に腹を立たせて声を荒げる。
「ほら見た事かよ!!こうなったんだよ畜生!!町田さんもそっぽ向いて震えないでくださいよ!!あああああ!!」
笑っている顔を見られないようにしている町田にも指摘をし、やがてこの服を持って来た張本人、篠宮へ顔を向けた神山。篠宮は笑わなかった、服を渡した本人だからこそそれはできなかった。
「……ごめん」
ただ、真顔で謝られた。謝罪が出るほどに似合わなかったというわけである。これなら神山は、逆に篠宮からも笑ってもらった方がましであったと心に傷を刻まれたのだった。
「まぁ、もういい……それで、俺らの主人や仲間みたいに呪いを受けた奴らって、どこのチームよ」
もうこの話は終わりと神山はため息を吐いて切り替え、篠宮が聞いた、TEAM PRIDE同様呪いを受けたチームはどこなのだと改めて尋ね、篠宮は言い放つ。
「呪いを受けたチームは……ブルー・ラウンズ、君たちが決勝で戦う予定のチームさ」




