新たなる王
突然の宣言に神山達は驚いた、神山を新たな四聖に迎え入れると言い出した『姫』それを聞いた篠宮は立ち上がり拍手した。
「おめでとう!君は今日からこの国の最高戦力であり最高権力者となった!よろしく頼むよ、神山くん!」
そのまま神山の手を無理矢理に掴んで握手してくる篠宮に、握手を終えてから即座に手を引いた神山が待ったを掛ける。
「いや待て、待てい!待ってくれ!唐突すぎる、まず話してくれよ、いきなりすぎるわ!!」
幾ら何でも唐突すぎる、説明しろ説明をと神山が言うと、姫はならば説明しようと語りだした。
「説明するわ、貴方は拳神を倒しました、拳神より貴方が強い、つまり貴方が拳神にふさわしい、だから貴方が拳神になる……はい、簡単でしょう?」
「わーめっちゃ簡単な説明……意見いいっすか」
「許可するわ」
「そー言うのって、正式に試合組むんじゃないんすか?倒して内地の闘士を脅した手前、今更な話っすけど」
何と簡単に纏めてくれたのでしょう。神山はそれを聞いて、理解した上で挙手して質問の許可を貰い、質問を許可されたので尋ねた。そもそも、そんな権力や象徴たる物を賭けた試合は、正式な手続きを経てちゃんとたたかわせるのではと。
これに対して姫は回答する。
「仮に……貴方が他の闘士に路上で喧嘩して負けたら、それを言い訳に負けてないと言えるかしら?」
「いや負けは負けっすね」
「それと同じよ、四聖はいつ何時、いかなる理由があろうと負けは許されない……確かに正式な試合は組むけど、負けたらそれきりよ」
「24時間ハードコアルールかよ……」
実際、現世のプロレスでもあるルールながらそれをやってるのか四聖はと神山は唖然とした。まぁ内地の城住まいなら余程の事がなければ大丈夫だろうが……と、話が逸れそうになったので神山は軌道修正に入る。
「あの、四聖とかいいんで、うちの主人と仲間の呪いどうにかーー」
「待ってくれ!姫様!!」
それより主人や仲間の呪いなんとかしてくれよと、どうにかならんかとお願いしようとした矢先であった。意識を取り戻した高原が顔を押さえて立ち上がり、待ったをかけた。
「お、俺はまだ負けてない!戦える!!まだ心は死んでない!!」
負け惜しみ、言い訳、それしか聞こえない言葉を吐いてファイティングポーズを取る高原に、篠宮は呆れて言い放つ。
「何を馬鹿な……高原くんの負けだ、誰がどう見ても負けたんだよ、それを今更そんな事言ってしがみつくのはみっともないんじゃあないの?」
「黙れ!!俺はこうして立っている!!戦う意志を見せている!!意思ある限り負けてはいないんだ!!」
だったら今まで何を倒れていたのかと、篠宮はなんとみっともない同輩に顔を顰めて右手のひらを高原に向けた。手に光が集まりだし、練り上げられ光弾が作り出される。
「口に気をつけろよ負け犬、カッコいいセリフ吐いても今のお前には似合わないんだよ」
そんなかっこいい台詞を今更言っても釣り合わないんだよと、迎え打つ気満々の篠宮。ここで最高戦力同士の戦いが始まるのかと、神山ですら今まで戦って来た魔法を使う者たちと、比較にならない雰囲気を醸し出す篠宮に冷や汗が流れた。
それを止めたのはーー姫であった。
「姫様!!」
篠宮と高原の間に悠然と歩いて割って入り、それを見て即座に手を下げた篠宮。対して高原を見た姫は、手を伸ばした。
「返して貰うわよ」
「!?ま、ーー」
その台詞を聞いた高原が驚愕するも、次の瞬間には高原は高圧電流に感電したかのように痙攣し叫びを上げた。
「がぁあああああぁあああぁああああああ!?」
何をしている、何をされているのだと高原が痙攣する様に見る事しかできない神山、そしてTEAM PRIDE一同。その高原の胸元から……煌めきを放つ野球ボール程度の球体が引き摺り出されるように出て来た。
心臓を引き抜くかのような、そんな絵面にも見えてしまう景色。その球体が完全に引き抜かれ浮遊し、姫の手に掴まれると、高原はうつ伏せに倒れた。
「高原!?おい!!」
いかに喧嘩じみた戦いになろうと、斯様な事態で倒れた相手を放ってはおけない神山は、うつ伏せの高原をすぐ仰向けにした。心音はあるが弱い、呼吸もあるが浅い、失神状態と見た神山はそのまま高原を楽な体勢にさせた。
「高原に何した!そりゃなんだ!?」
高原から取り出した球体、その上に何をしたのかと問い詰める神山に、姫は平静で物怖じ無く答えた。
「これはアビリティ・スフィアと呼ばれる物よ」
「アビリティ・スフィア?」
聞き慣れない単語に見ていた河上が尋ねると、姫は包み隠さず開示した。
「私が能力を与えられるように、取り戻す事も自由自在なの……これは私がシンジ・タカハラに与え、そして彼が育ててきた加護、異能その全てよ」
それを聞いた神山は、倒れた高原の両手を確認した。今その目で確認してみれば、両手に刻まれた刺青じみた刻印が、じわじわ薄くなって消えていく様を目視する。
「本来能力を取り上げる事はまずしないけど……あまりに無様なものだから取り上げる事にしたの……さて」
弄ぶようにその手中にある高原の加護、異能が詰まった球体を軽く投げては掴みを繰り返し、立ち上がった神山に姫は差し出した。
「代わりに貴方が使いなさい、これを身体に植え込むとシンジの加護、異能を全て手に入れて貴方は優性召喚者になれるわよ」
姫がアビリティ・スフィアを神山に投げて渡し、神山はそれをキャッチした。高原の加護や異能そのもの、これを取り込むと、劣性召喚者たる自分が優性召喚者となり、高原の持っていたその力や異能を使える様になるという。
しかし神山はノータイムで、それを楽な体勢に寝かせた高原の胸元に置いた。
「いらねぇよ、まるでお古の押し付けだし必要ねぇし、四聖にも俺はなりません」
「あら……」
「それよか、さっさとうちの主人や仲間の呪いをどうにかしちゃ貰えないか?」
そんなもの要らんからと神山はアビリティ・スフィアを高原に返却して姫に四聖にも興味無いので、マリス、ニーナ、長谷部、緑川の呪傷をさっさと治すなりどうにかしてくれと願った。それを聞いた姫は……ベール越しで表情が見えなかったが、明らかに困ったような口調で、そんな表情を浮かべたて思わせる身振りで言った。
「それは困るわね……できれば四聖を空けときたくないのよ……呪いも私ではどうにもならないわ」
「はぁ?おい、あんた能力を好きに与えたり取り上げたりしといて、呪い一つどうにもならないのかよ」
四聖は継いで欲しい、枠も埋めときたいと本当に困っている声色で神山の頼みを断る姫。呪いも自分ではどうにもならないと言うや、そりゃないだろと中井がつっかかる。
「そう、私は才ある者に与え、罪あるものから取り上げるしかできないわ……才、貴方達みたいな者たちじゃない、この世界に呼ばれて希望を抱く者達にね」
「ふん、勝手吐かしよる……」
自分は与え、取り上げるだけ、自らがそれらを行使できないのだと姫は語る。そしてこの世界で『才ある者』は、この世界に希望を抱いて呼ばれた者達でもあると言う姫に、不機嫌な河上が吐き散らした。
「まぁー……四聖の執務とか任務とかはこっちがどうにかするからさ、ちょっと話が終わるまででいいからさ、頼むよ神山くん」
余程自分が『拳神』を継がねば都合やら何やら悪いらしい。しかし神山からすれば、斯様な少したりともこの世界に縛られる事は嫌だった。
「断る、そんな事の為に俺は今日、内地に喧嘩売りに来たわけじゃあーー」
「神山くんーー」
なおも断る神山に、声をかけたのは町田であった。
「神山くん、この国の頂点の一つを君は倒したのだ……」
「はぁ……まぁ、それが?」
「つまり君は……チャンピオンというわけだ」
その単語を聞いた神山が、身体を強張らせた。
「新たなチャンピオンが、前チャンプからベルトを奪って、巻かずに返すという行為……侮辱となるのは君は分かっているだろう」
それを町田より言われた神山は、それはもう嫌な顔をした。篠宮ですら町田の話に、成る程と諭し方というか、その例え方があったかと納得と関心で表情を染めた。
「そ……の……例え、今出しますか……町田さん?」
「間違っているか?」
「それ言われたら断れないじゃん!恨むよ町田さん!!」
「いつぞやの、スラムでの仕返しだ」
断れない、その単語に篠宮は顔を歓喜に変えた。そして、振り返って姫と篠宮を見る苦しげで、嫌々がもう顔に浮かぶ神山は言い放った。
「なるよ!責任取るから!!今日から負けるまで、俺が拳神になってやる!!」




