待つ場所へ
「おい!居たか!?」
「居ねえ、部屋はもぬけの殻だ!!」
「畜生、まだ出て間もない筈だ!探せぇ!!」
TEAM PRIDEが宿泊先に選んだホテル『バルダヤ・ビーチサイドバンガロー』では、既にバカンスを忘れ野蛮人と化した闘士達が入り込み、ホテル内を探していた。
充てがわれたホテルのバンガロー全ては、既にメンバー全員が出ていたらしいもぬけの殻であり、当てが外れたと野蛮人達は荒らした客室を後にした。プライバシーやセキュリティはどうなのだと思われるが、現地人のホテルマンが闘士に凄まれたら命が惜しくなるのも仕方がない。
では……TEAM PRIDEのメンバー達は何処へ?神山と町田は朝食に出て、幸い映像が見れた。中井は?河上は?長谷部、緑川、マリス、ニーナはどうしたのだ?それぞれはというとーー。
ーー
「勝手しやがるな本当に……ホテルから出て助かったと言うべきか……」
中井真也は、そもそもホテルに居なかった。昨晩の襲撃もあり、ホテルから出て街中に身を置いていたのだ。皆には待機に賛同した風に見せながら、単独で索敵に踏み切ったのが、運良く功を奏したという形である。朝のレストランのスタッフに作ってもらったサンドイッチを齧りつつ、中井はバルダヤ中心街路地の、目立たぬ小路にて今後を考える。
「さてさて……あのステロイド野郎の背中と地図を照らして見ますかねー」
そして、マッスル・ジェネラルの映像も見ていた。ガソリン式の非常用発電機を手に入れた為、スマホの充電も復活したTEAM PRIDEの面々、中井は先程の動画をスマホのカメラにて録画していたのだ。
背中を見せたポージングで動画を止め、中井真也は懐から粗雑な紙を取り出して広げる。バルダヤの観光マップであった、この世界には羊皮紙だけでなく製紙技術もあり、雑誌まで出ている。バルダヤの観光マップもこうして各地にフリーペーパーとして置かれていたのを中井は取っていた。そこにある程度照らし合わせつつ、自前の羽ペンを走らせる。生憎普通のペンは神山以外所有していない、書きづらいなぁ、一本くすねときゃよかったなと思いながら、マップにインクを刻み込む。
さぁどうする中井真也、頭の中でこれからどうするか考える。
他のメンバーと合流か、先にどこへでも向かうか……。サンドイッチを食べ終えた中井は……。
「近い東にしようかな……このまま裏道通ったら誰とも会いそうにないし」
合流をせず、東のどこかは知らないが待つ敵の元へ向かう事にした。ポケットに手を入れ、欠伸をしながら路地を歩く。
表通りに面した路地には、既に武器持ちの闘士達が屯し、彼方此方と殺気立っていた。が……中井は特に何事も無く、普通に路地へ出た。そして対面の裏路地へ、普通に辿り着いた。殺気立って、探し出そうとしているが、結局個人が私欲のために動いているので、全く見えてないのだ。
むしろ統率されて探されたらこうはならないと、中井は歩いた。中井真也……東にて待つ相手の元へ、悠々と進行開始。
一方、神山、町田組……。
「おらっしゃああ!!」
「みぎゃぁ!!」
大木薙ぎ倒すかのような、右の向こう脛が頭蓋を凹ませるハイキックを気合いを込め放つ神山と、吹き飛び二転三転する、神山狙うTEAM PRIDE HUNT参加者たる闘士。それと背中合わせに構えた町田は、周囲を囲む闘士達を前に、舌打ちした。
「なんとも卑怯な、どの道戦う前に戦意とスタミナを削ぐのが目に見えて分かる!」
「つーか!なんの権利あっての決定だよ!?こっちは順当に勝ち上がってきたのによぉ!!」
勝ち上がったと思ったら勝手に準決勝の出場権取り上げられて賭けの対象にされた事態に、神山も流石に泣き声を叫んだ。いかに戦いが好きであろうが、理不尽に対する耐性はこの少年には無いらしい。
「くそ!強えぞこの二人!?」
「囲め囲めぇ!二人がかりでいけぇ!!」
あれから何人倒した?足元やあちらこちらで伸びている野蛮な闘士達は、いよいよ統率が取れ始めた。二人がかりで神山町田をそれぞれ囲ってしまえと、武器を、拳を握りしめる。
「どうする神山くん!」
「どうするって!?」
「どの方角の敵に向かう!」
「やる気満々ですね……」
乗り気ではない神山に、町田が声を張り上げ訪ねた。あの筋肉ダルマの背中の、どの場所で待つ敵に向かうと。現在……神山達が居るのは南側、ここからすぐ近くに一つあるのが何となくだが分かった。
「というか…………」
「なんだね、神山くん?」
「場所は兎も角どこに居るんですか?虱潰しで探せと?」
「あーー!」
町田もふと気付かされた、確かにあの『マッスル・ジェネラル』は背中の地図に場所を示したが、その場所のどこに居るかまでは示しもしてない。ローラー作戦の如くその辺りを探して、待つ敵に出会えなどと馬鹿馬鹿しいだろと。
だが、まるで何処からか、それを聴いたかのようにーー。
「ん?神山くん……もしかしなくても、あれじゃないか?」
町田が、視界の端に、異質な景色を捉えた。そして……げんなりと脱力した。
「さっきまで無かったよな?あんな光の柱ぁ!なんだよあれ!スマホの無料オープンワールドのミッション開始の位置情報かよ!?」
「ごげへぇ!?」
絶対、さっきまであんな光無かったと断言して叫びながら、神山は八つ当たりで近場に迫っていた当時の一人の顔面に肘を叩き込む。空まで登る、様々な色に変化している四つの光の柱がそれぞれ、ここだ!と言わんばかりに立っていたのだから。つまりは、この様子を何処ぞで観覧して楽しんでいるのだと、苛立ちすらも湧き立つ始末であった。
「とりあえず、町田さん!近場の光に二人で向かいましょう!!話はそれからだ!!」
「あいわかった!!」
怒りを抱えながら、二人は闘士の囲いを突破して、近場たる南の光の柱へ向かった。
ーーその頃、朝帰りをした河上静太郎は。
「くああ……よく寝たぁ……」
今更ながらに起きた、まだ眠気眼で視界も霞がかかり、ゴシゴシと目を擦り、ベッドから起き上がる。そのまま、河上は眠気覚ましにシャワーを浴びる為、傍の物を退かして、ピタピタと床を鳴らして部屋を歩いた。
シャワーの蛇口を捻り、お湯の温度を調整し、髪の毛も顔も体も満遍なく浴びた。酔いで乾いた身体に潤いが染み込んでいく。
シャワーを出て、備えのバスタオルで身体を拭いてから荷物の方へ向かい、河上は服を着替えた。そのままゆっくり首を回し、背伸びをしながらシャツの襟元を正しつつ、部屋の出口に向かう。
ドアを開けながら、左手には愛刀を携えて……そのまま振り返り部屋を見た。
「弁償かなこれ……マリス嬢に相談せねば……さぁて、何があったか一人二人に聞けば分かろうよ」
部屋中に、赤い飛沫と線が散り、床に血溜まりや斬り飛ばされた手足……溢れる臓腑が晒されている。多分寝ながら、襲われたので防衛手段として斬ったんだなと、自分なら可能だし当たり前と頷き河上は、この部屋のリノベーション、清掃代、弁償代はマリスに相談しようと決めて、何があったのかを知る為、部屋を後にした。
河上静太郎、襲撃を寝ながらに撃破。
TEAM PRIDE、レギュラー勢全員……実行委員会の元へ進行開始!!




