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大将、副将の秘密会話。

 こうして、TEAM PRIDEはコテージタイプのホテルを確保した。部屋割りはマリスとニーナが相部屋で、他全員はなんと個室を用意された。内地組より資金だけは潤滑、それがTEAM PRIDEなのかもしれないと神山はホテルのコテージの鍵を開けて中に入る。


「うん、持て余す」


 それが出てきた感想だった、上等も上等。クイーンサイズベッドに各種アメニティにシャワー付き。男一人だと持て余す事この上ない。荷物も少ない、着替えくらいだ。此度は合宿とは銘打ったがあくまで修学旅行だと河上が言う以上、休養目的で練習道具はバンテージくらいしか持ってきてなかった。


 一息吐きながら、神山はベッドにダイブした。クッションもいいやつだ、柔らかいなと神山は痛む腰や尻に呻きながら寝返りを打つ。気候も雰囲気も特に変わらないので、旅行に来たとは思えなかったが、それでも戦いから離れつつ練習もしようとなれば、少しばかり胸が高鳴った。


 そんな高鳴りを促す様に、扉がノックされた。


「おーい、神山くーん!今から買い物行かないかい?」


 河上の誘いに、神山は身体を起こした。


 

 さて……神山達TEAM PRIDEが慰安の地として踏み行ったバルダヤは、シダト首都ルテプより、更に南下したリゾート地であった。雰囲気としてはさながらインドネシアを思わせる。シダトがギリシャの欧州に対して、東南アジアじみた雰囲気を醸し出していた。


 南から西にかけてはビーチとなっていて、闘士も、貴族も、この世界の平民も身分関係無しに泳ぎ、寛いでいる。その近くには様々なホテルが乱立していた。高級なホテルから、安宿まで様々だ。そのホテルの向こう、中心に向かう程に様々な店や雑貨店が規則正しく建てられている。上空から見たならばバルダヤの街中は、規則正しい格子状になっているのが分かる。


 北側には現地民の居住区、そして神山達が入ってきた入場口に馬車の駐車区域、東側には内部の街中とは違う、また別の雰囲気の賑わいある区域が見える。所謂闘士向けレジャーやスパ、様々な施設があるらしい。神山は河上に誘われて、早速街中を歩いて買い物へ向かった。


「あれ、町田さんに中井さんは?」


「二人は長谷部や緑川と一緒に、マリス達と服を買いに行ったよ、見合った装いさせないとだからねぇ、まぁ僕らもそうするんだが……」


 ならば、全員で行けば良かったのでは?そう思った河上は、慣れた様な足取りでバルダヤの街の路地を歩く。朝方は過ぎて昼前、人の姿も増え始めた路地で、神山は河上の半歩後ろ右横をついて行く。


「今、何故皆で行かないと思ったろう?」


「よく分かったっすね?」


「まぁそうだろうよ、単純だからねぇ神山くんは」


 馬鹿にされた様な気がする、しかし見抜かれたのは本当である。何故態々二人になったのかと、河上は続けて言った。


「神山くんは確かメモを書いていたね、それを踏まえて聞くが……どう思う、この異世界?」


「と言うと……」


「率直な感想、簡単に纏めて言ってみたまえよ」


 河上の問いかけに、神山は顎に手を当てて、自らがこの地にて書き記している手帳のメモを思い出し、頭でまとめ上げるや言い放つ。


「不安定で、つぎはぎだらけ……っすかねぇ?」


「ほう」


 神山は言う、この世界は『不安定』であると。


「流れ着いた場所じゃローマのグラディエーターよろしくな建造物、かと思いきやバイクやらバギーに電気まである世紀末の様な街、そしてバルダヤはさながらパタヤみたいだ……穴が空いた場所に適当にワッペン縫い付けた小学生のジャージみたいな世界っすね……何でもありと言うべきか」


 そうだ、もう何でもありだと。


 剣と魔法があるのに、排気ガスにガソリン、電気と化学まで出てきた。そして似通った見た事ある景色……適当な風景を切り取って縫い付けた様な世界であると神山は論ずる。その話を聞いた河上は歩きながら、その弁舌に更なる話を重ねてきた。


「神山くんは、異世界転生、異世界転移なる単語を聞いた事はあるかね?」


「何すかそれ?」


 聞き慣れない話に神山はまたも首を傾げる中、河上がふと見せを指差す。明るい店内には、様々なサーフパンツやらシャツが掲げられている。ここで話をしながら揃えようぜと言うわけかと、神山は頷いた。らっしゃーせーと、店員の声が響く。他にもこの世界に流れた闘士か、はたまた現地人かは知らないが、色々と吟味していた。


「現世で蔑まれている立場や、何もできなかった人生の敗者が、ある日トラックに轢かれたり、過労死したり……またある時は突然光に包まれて、こんな世界に流れ着き、女神やら何やらに力を貰って活躍する……という話さ、流行ってたらしいんだよそんなジュブナイルノベルやら漫画がね」


「何すか、ゲームのリセットみたいっすね、そんなんが流行ってたんですか現世って、病んでんなぁ現世の流行り……」


 人生やり直し願望とは病み切っているなと神山は笑って吐き捨てた、こればかりは神山は理解も同情も、持つ事ができないだろう。というより、TEAM PRIDE内で理解できるのは、緑川だけやもしれない。


「あー……鹿目が何か戦ってた時に言ってたな、聞き流してたけど耳に残ってた」


 現世のスポーツショップと変わりない水着、サーフパンツを棚から取り出して眺めながら神山は呟く。マギウス・スクワッドの大将、鹿目瞬が話していたなと。柄が気に入らないなと棚に戻し、別のサーフパンツを神山が取り出して眺める。


「私が思うに、この世界はそれだ、そんな奴らが流れ着いた世界と思われる……どうかね、これ?」


「へー……いやでも、俺はそんなやり直してーとかは……ぶふ!ちょっと河上さん……それはやべーでしょ、はみ出ますって河上さんだと」


 その呟きに河上が言葉を返しながら、一着を腰に当てて神山に似合うかと尋ねたので、神山は振り向くや笑う。見事なVのブーメランだったのだ、河上の♂ナウイ息子♂を見てしまった神山からすれば、大惨事になるならやめてくれと忠告する。


「はみ出るか……あぁ、それでな?そのやり直したい奴らが蠱毒みたいに集まってるこの世界で、私たちの様なタイプはどんな役目が与えられると思う?」


「え?漫画の話っすよね、異世界どーたらの」


「そうだ」


 冷やかしに見せたブーメランパンツを戻しながら、話も戻る。そんな世界に呼ばれた我々の様な、別段人生に悔いもやり直しも求めちゃいない輩が、この世界に引き込まれた場合は如何なる立場に置かれるか?神山は分からんなと首を傾げた。


「大概、現世で活躍している奴らはこのタイプの話だと……そんな力を持った奴らの噛ませ犬とか、序盤で死ぬ登場人物になるのさ」


「ああー……海外ホラーの序列高いやつが最初に死ぬみたいな……どっすか、これ?」


「キミは映画好きだったからそっちで例えるべきだったかな、まぁそうなる……いいな、似合ってる」


 映画のあるあるに例えた神山に、河上はそうだと頷き、神山は一着のサーフパンツを見せてセンスいいなと河上から評価をもらいながら話はまだ続いた。


「現に神山くんに中井くん、町田に私も武芸を修めた身、そんな輩を異界の力で屈服させる快楽は彼ら優勢召喚者の拠り所なのだろうよ……それが、この世界のルールなのだろう」


「そこに、俺らが現れたっつーわけっすか、癌細胞的な感じに」


「となるな……」


 一通り話し終えた河上が、好みの一着を決めたらしい、それを持ってレジに向かう。神山もそれについて行く。


「TEAM PRIDEを他のチームが目の敵にする理由がそれだろうよ、脇役らしくしてろとな……」


「ふーん……まぁ、挑まれたら倒すだけっすけどね、こっちは」


「簡単な思考でいいなぁ神山くん、さて、次は上着を買おうか、あっちにいい感じのがあったから見に行こう」


 大将、副大将による異世界考察は、買い物と共に他愛無く続いた。

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― 新着の感想 ―
[一言] 誤字修正 河上がふと見せを指差す。 正 河上がふと店を指差す。 河上さんゆったりとしたサーフパンツでも結構モッコリになるような気が…
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