端話 雑誌の評価
「はー……で、シード組どころか四聖にも喧嘩売ってきたと」
「後悔はしてねーぞ」
「お、何だったら今から全員鏖殺しに行くか、神山くん?」
「まぁ……くじ運は仕方ないとして、1回戦からマギウスかぁ……」
同日、マリス邸宅。抽選会から帰宅した神山、マリスに結果を尋ねた一同に、神山はマギウス・スクワッドと1回戦でぶつかる事、中井と河上の希望を果たせなかった事。そして会場で全員に喧嘩を売って来た事を説明した。
中井は呆れながらも笑みを浮かべ、町田はそうなったかと苦笑。河上静太郎は今から行くかと大いに口端を吊り上げ、長谷部はくじ運に嘆いた。緑川は、理解が追いつかず真顔になった。シードチームなら兎も角、四聖に喧嘩を売った?しかも、その四聖の一人を流血させた?本当、キミハイッタイナンナンダ?と言いたげだった。
さて、後悔はしてないという神山の言う通り、もう決まってしまった訳なので仕方がない。マギウス・スクワッドととの戦いに向けて最終調整やをしなければならない。
のだが……今回神山は帰宅する前に、マリスに頼み『ある物』を買って貰ったのであった。
「この世界のさ、雑誌を買って来たんだよね、展覧試合関連というか、闘士関係の」
「雑誌?雑誌なんかあったの?この世界」
「本もあるしなぁ、しっかり作ってあったよ」
リビングのテーブルの上に、現世の週刊ゴシップ誌となんら変わらない作りの雑誌を数冊投げ出した。やれ羊皮紙だ何だとしときながら、こんな雑誌まであるのかと、中井は興味ありげに一冊持った。
「あ、カラー?うわ荒いな、手触りも絵も、違法コピー品みたい」
「中途半端な印刷技術だな、これなら文だけの方が……」
「こっちは綺麗だな、魔法で作ってるのか?」
魔導書やら羊皮紙やら出ているのに普通の紙の雑誌まで出て来た。が、印刷技術やら製紙技術にはムラ付きがあるらしい、はてさてこれは魔法でつくったのか、カラー印刷技術でもあるのかと、中井、町田、長谷部がパラパラ捲る。
「おや、展覧試合出場闘士特集なんてあるぞ」
そんな中、河上静太郎が一冊の雑誌から、特集が組まれているのを見つけた。雑誌名は神山には読めなかったが、何と表紙にトロフィーを掲げる村田翔吾が印刷されていた。実はこれが、神山が抽選会で不貞を働いた『シダト闘士通信』だとは知らない。
「しかもこれまた、綺麗なカラーだ?シードチーム代表がデカデカに載ってるよ」
河上が見つけた記事を神山は立ち上がり、後ろから覗き込む、中井、町田、長谷部、緑川、そしてマリスも河上の背に回り込んだので、河上は雑誌をテーブルに置いた。
「さて、まずは……ブルー・ラウンズ大将、村田翔吾……顔よし実力よし、時期剣聖はこの男かはたまた副将の水戸景勝か……高い魔法の素養と剣技の光る魔法剣士と……」
魔法剣士、剣士のスキルに魔法を兼ね備えた、この世界の上位クラスの中でも派生先としては最高の物らしい。
「神山くぅん?」
「ダメっすよ、一人一試合っすから」
嗚呼やっぱりと、神山は、河上の食指が動いた事に感づいた、あんた副将の『剣術無双』の水戸景勝と戦うでしょうがと、連戦しそうな雰囲気を醸し出すが、負けない限りは一人一戦と決めているだろうと諭す。
「ちぇっ……特筆すべきはユニークスキル『未来視』だろう、このスキルの前ではあらゆる攻撃が見切られ、対戦相手の武器は空を切る……」
「未来視……」
未来を見るスキル持ちか、攻略の肝となるなと神山は頭の隅に置いた。実力は前年優勝チームの大将だ、弱いわけがないだろう。
「いいか、次は……ギガンテス大将、馬場聡。恵まれた肉体を補うが如く、クラスはガーディアン、スキルに金剛体を持つ鉄壁強靭の肉体で、一切の攻撃を受け付けない」
一際図体のデカイ、ギガンテス大将もそこに印刷されていた。兜に、鎧を着て、デカイ盾に槍……重装兵というやつか。見るからに頑丈そうな輩だ。
「このどっちかと戦うわけか、潰しあってくれるあたり楽っちゃあ楽か?」
この二人がトーナメントで潰し合うわけだ、ならば戦うとしてもどちらかだろうなと、中井はそれは楽だなと呟く。そして次のページを捲ると……。
「おおっ!?すごい美人!!なんだよ神山くん、こんな美女居たなら教えなよ!!」
また河上が唸った。何しろ印刷された、朝倉海莉は……なんとも凄まじい煌びやかな衣装に、マスクを付けた……ルチャドールの格好だったのだ。あのドレス姿が、こんな派手な格好で戦ってるのかあの人はと、予想外の姿に驚くしかなかった。
「何々?ヴァルキュリア・クランの大将、朝倉海莉は……天空淑女の二つ名を持つ女性闘士、クラスはモンクで、スキルは特別なものは無いが、その空中殺法は我々を魅力してやまない、スリーサイズはバストーー」
「河上さん、次行きましょう次、目に毒だ」
食い込み尻のアングルやら鼠蹊部アングルがやたら多い、悪意の写真に神山が次だ次だと促した。
「はいはい……っと、暗そうな奴だな、マギウス・スクワッド大将、鹿目駿、前年ベスト4の大将はアークメイジ、身体強化魔法、そして火の魔法を得意とし……火の魔法だけならば四聖の魔将、篠宮倉人を上回ると言われている」
杖を構え、火を操る様は中々に決まっているマギウスの大将、鹿目駿、身体強化に火魔法と、偉く抽象的で全容が捉えにくいなと神山は、まず自分が戦うだろう強敵の顔をしっかり刻み込んだ。
「鹿目駿……緑川、どんな奴かわかるか?」
そして、まずはそのチームに所属していた緑川に尋ねた。緑川は、あまり言いたく無い感じに顔をしかめ、そして話す。
「偉そうな男ですよ、まぁ実際、実力はあるしマギウスで勝てる奴は居ない感じでしたから……火の魔法は本当に凄まじいです、打つ速さも、威力も」
「ふむ……」
威張り散らした輩だが、そうしても文句言えない力を持っていると語る緑川に、顎に手を当て考える神山。と、ここで……。
「あれ、おい、僕らも雑誌載ってるぞ」
「なに!?」
河上がひょんな事を言い出して、またも雑誌に目を移す。
「えー……今、最も敗北を望むチーム、最悪の闘士集団……TEAM PRIDE……大将神山を筆頭に、副将河上、次鋒町田、先鋒中井は……おおよそ闘士とは思えぬ素行と戦い振りに批判が寄せられている……」
それは、こき下ろしであった。民衆を焚き付けるTEAM PRIDEは悪とばかりに位置付ける記事に、神山達は……。
「まぁ、こうなるか?」
「色々やったしねぇ」
神山と中井は仕方ないわなーと、予選の行いから批判上等と軽く流した。
「結構……こたえるなぁ、最悪、か」
町田恭二はそれこそ、他3名と違い戦い方も批判を受けない筈だったが、一まとめにされて溜息を吐いた。
「もっといい写真なかったのかな、アングルが気に入らん」
河上はアングルに文句を言うどこ吹く風とした態度に、緑川は尋ねる。
「あのー、怒らないんですか?」
これだけの批判に晒されて、怒らないのかと尋ねる緑川に、神山達レギュラー勢4名が答えた。
「まぁ、もうチームの根幹が喧嘩売ってるしねぇ、劣性召喚者の集まりだし」
「実際、喧嘩売ってるし、馬鹿にしてるし、勝つし」
「言い訳ができん……その通りだ」
「つまりは我々は悪役、ヒールであるのは間違い無い」
そもそも、TEAM PRIDE自体がこの優性召喚者とした偉そうにしてる奴らをぶちのめす為に集まった集団、根っこからヒール団体だからその通りなのだと頷いた。この返答を聞いた緑川の肩を、長谷部が優しく叩いて首を横に振った。
「そう言うわけだ、ベビーフェイスの活躍は諦めたまえ、緑川くん」
緑川社もまた、この批判に晒されながら戦う事になるのかと、華やかしさからかけ離れた運命に、膝を折りそうになるのだった。




