Workout TEAM PRIDE Earlymorning
ワークアウト、試合や本番に向けたトレーニングを意味する。
展覧試合に向けて他のチーム達もトレーニングを積む中、TEAM PRIDEも例外では無い。
いや、むしろトレーニングらしいトレーニングをしているのは、彼らだけかもしれない。
夜明け、TEAM PRIDEの面々はこの時間に起床する者が大半だ。まず起きたのは町田恭二。
朝のランニングである、この亜熱帯な気候のシダトで、日が登る前のまだ涼しい時間のランニングが、TEAM PRIDEの始まりであった。町田がマリス邸宅前でストレッチを始める。
「おはざっす、町田さん」
「おはよう町田くん」
「おはよう、二人とも」
少し遅れて、神山と長谷部が合流、同じようにランニングに参加する為だ。
「お、おはようございます」
「おっ、来たな社?」
「おはよう社くん」
次いで、新たに加わった魔法使いの優性召喚者、緑川社が初めてランニングに同行する。強くなる為の第一歩を踏み出した。
「うーす」
「中井おはよう」
最後に、中井真也が合流。全員が柔軟体操を始め、これからランニングに入る。なお、河上静太郎は全くランニングに参加しない。偶に剣を振るったり、夜遊び帰りに合流してそのままベッドに直行なのが彼なのだが。
「おはよう、早いねキミら」
「え!河上さん!?」
なんと、今朝は違った。河上静太郎、まさかのランニング参加。彼も肩を回したり体を捻ったりしながら柔軟を行い、準備を始めている。ランニングどころか、日頃鍛錬らしい物には全く参加しない為、神山には驚かれた。
「まぁなんだ、偶にはこうして走るのもいいかとな?」
「着いて来れるのか河上?」
「なぁに、無茶はせんよ」
柔軟をする河上に町田が、着いて来れるのかと少しばかり悪態を込めて尋ねるが、河上は無理はしないと笑って言う。一通り柔軟を終えた全員に、神山は夜明けの少しだけ冷たい空気を吸って言い放つ。
「よっし、いこう!」
こうして、TEAM PRIDEの一日が始まった。
朝のランニングは、ウォーミングアップの為、あまり激しいものはしない。体力、スタミナを鍛える為にサーキットトレーニングをまた別に行う為だ。ランニングコースは、マリス邸宅をスタートに富裕層の街を一周、体感にして3〜4キロを走る。
富裕層街でも、朝早く起きるこの世界の人々は、TEAM PRIDEがランニングする姿を目撃する。何せ外壁唯一の出場チームだ、無論話題にも上がっている。
大凡トップを走り引っ張っていくのは、長谷部と町田の二人。その後を抑え目に、なおかつペースを保つ神山が走っている。
「緑川、無茶すんなよ、キツけりゃ歩け」
「っはあ、はぁ、はぁ」
その後ろを新たに参入した緑川が食らいつく、無理はさせない為に神山が前から確認も兼ねていた。
「ま、バテるよね、走った事無い感じだったし」
「ペース配分は大事だな」
そして最後列、マイペース組の中井と河上が程よく走る。無理はしない、あくまで体を起こす為と、最前線の町田と長谷部組から結構後ろを走っていた。
大凡半分を走った頃合いで、ここからメンバー全員のランニング内容が変わってくる。
「ダッシュ!」
長谷部が掛け声を上げた瞬間、神山、町田が一気にスピードを上げる。声を上げた長谷部自身も地面を蹴り抜き、3人ほぼトップスピードを維持して、走り抜ける。
「かは、はぁ、ぁああう」
ランニング初日の緑川は、よたつきながらも、その様子を見て走ろうと身構えたが。
「はい、無茶しない」
「うっ……」
河上に肩を掴まれて制された。
「体力ついてからやりなさい、今はコース完走を頑張ろう」
「そうだ、無理して身体壊したら意味無いからな?」
マイペース組の中井と河上が、緑川の無茶を押さえてペースを守らせる。が、河上はニヤリと笑って中井に向けて尋ねた。
「中井くんは彼らについていかないとな」
「いや、僕はこのまま押さえ気味にーー」
「スタミナ不足なんだろ、そら走れ!ダッシュダッシュ!」
河上に促され、中井も一気にギアを上げて神山達を追いかけて行くのだった。
「お疲れ様です皆様、朝食の準備ができてますよ」
しばらくして、TEAM PRIDEは全員マリス邸宅に無事帰還した。最初に神山、町田、長谷部が同着し、少しばかり息を上げており、次いで中井が息を切らして膝に手を置いて到着。河上は全く息をあげておらず、流す走りをしていたが、それでも緑川は酷く息を荒げていたあたり、やはり体力差が伺える。
それを迎えるのは、元執事、現在はメイドのニーナであった。
「うーし、緑川、完走おめでとう」
「はぁ、はぁ、はぁ……」
「いやはや、偶には走るのもいいな、すっとするよ」
走り切った緑川の背中をさする神山、そして走り込みも偶にはいいなと頷く河上。ニーナは皆に汗拭き用のタオルを渡していき、TEAM PRIDEは朝食に移る。
走り込んで疲労もある、ましてや直後に固形物をがっつり取ろうものならば、内臓が受けつけないのは目に見えている。よって朝食は飲み物や、あまり噛まなくていい形にするのがいい。朝の運動を休んだならば普通にパンやらも取れるだろう。
現世であればプロテインやらでそれができただろうが、この異世界にプロテインは無い。が、その代わりに亜熱帯南国の恵みがある。
よってTEAM PRIDEの朝食はフルーツで纏められている。神山だけの時は朝から鶏肉やら卵やらを張り切って使っていたニーナだが、河上からのアドバイスを経て統一感が出てきた。
そんなチームPRIDEの朝食は……ベリースムージーである。苺、ラズベリー、ブルーベリー、本当にどこから来たのだそんなベリー系をペーストにし蜂蜜で味付け、切り分けたパイナップルやバナナ、ココナッツを付けて食べたり、そのまま飲んでもいい。
現世における『アサイーボウル』と言う、スーパーフード『アサイー』を使ったハワイの朝食を元にした食べ方である。残念ながらアサイーは出回って無い為、使われていない。
「ああー……染み渡るし甘いし、いいっすねこれ」
「現世とは違い、自然食が摂れるのはいいな本当」
神山と長谷部はグラスに注がれたスムージーをそのまま飲み下して評した。現世の日本で同じ物を作るなら、それこそコストが掛かってしまうし調達も大変だろうが、こればかりはこの異世界の気候とフルーツの種類に感謝を示した。
「何というか、お洒落なもの食べてますよね、こう……肉ガッツリ野菜ガッツリ想像してました、あ、美味しい……」
肉体や格闘技の凝り固まった先入観により、食事がこうも洒落た物を取っているとは思わなかったと、緑川も飲みながらその味に感想を漏らした。
こうして身体を眠りから覚ましたTEAM PRIDEの面々は、これから昼までの練習へ入っていくのだった。




