シードチームについて知る。
「これまたいきなりだな、しかし君のところの主人はそう簡単にーー」
「いいわよ、ハセべ、うちに来なさいな?」
「判断早いなぁ!TEAM PRIDEの主人は!?」
神山の勧誘に対して、長谷部は主人の裁量が必要なのではと言おうとした刹那に、来いと被せられてしまった。いくら何でも短絡すぎるのではと、長谷部は膝裏を蹴られ力が抜けた感覚を覚えた。
「うちは人手不足だから、とれぇなぁ?ぱぁとなぁ……色々必要だから逆に有難いわ、フリーなんでしょう?ウチに来なさい、寝床もごはんも用意するわ」
「決まりっすね」
こうなってしまえば、もう逃がさんとばかりに神山以下、TEAM PRIDEのメンバー達は目を光らせた。長谷部も、断る理由が無い条件と快諾に頭を掻いたが、しっかりと頭を下げて告げる。
「お世話になります」
こうして、TEAM PRIDEのサポートとして、元シルバードラゴンの大将、長谷部直樹が加入する事になったのである。
そして……翌日の午後にまで時間は飛ぶ。
TEAM PRIDE本拠地、メッツァー邸宅談話室。メッツァー邸の談話室は、今やTEAM PRIDEの作戦会議場として使われていた。長谷部直樹は引っ越しを終えてから、早速チームトレーナーとして、仕事を始める為、皆を会議室に呼んだのである。
事務机に座すマリスに、横へ立つニーナ、そして長谷部は談話机の前に立ち、ソファに座す神山達へ問いかけた。
「さて……早速悪いな、話をすべき事があるから集まって貰ったわけだが……君らはシードチームについてはご存知だろうか?」
この問いへの返答は無し、知らぬで終わりだった。そもそもがTEAM PRIDE自体が展覧試合初出場だ、どのチームが強いだの、特色があるだのとは全く持って知らない。全員ルーキーという訳である。長谷部は席を一つして立て直し、話を続けた。
「本戦のトーナメントは、予選組4組、前年ベスト4が4組の計8組で戦うわけだ、確か半月後に抽選会があるから、君らその時に全員と顔を合わせるだろう」
「勝手に決まる訳じゃないんですね」
半月後に、トーナメントの抽選会があると聞いて、神山は運営側が勝手に決めるのかと思ったらしい。くじ引きがあるのかと納得していると、長谷部は頷く。
「シードのチームだが、優勝チームのブルーラウンズから説明すべきだな」
そして始まる、シードチームの解説に皆が耳を傾ける。
まずは、前年優勝の『ブルー・ラウンズ』からだと語りだす長谷部。
「前年優勝チームで、他3チームの様に特色やこだわりが無い、強ければ良しの常勝軍団……ここ数年ベスト4落ちが無く、現大将の魔法剣士の村田翔吾、そして副将、剣術無双の水戸景勝の ツートップが代名詞……控え……補欠も総勢50人は居る大所帯チームだ、率いる貴族は……ガズィル・リンチ卿」
ガズィル・リンチ。その名前を聞いて神山と中井は思い出した、まだ二人だった時の練習試合、闘士決闘で戦った時に立ち会った貴族だったなと。
「あのオッさんの本命か、自信満々なわけだわ」
「副将とは……引導を渡すのが楽しみだ」
本命がこいつらかと神山は歯を見せて笑うと、河上も笑った。特に河上は過去の因縁が副将に座しているならばちょうど良しと、既に勝つ気で居る。
「次は、前年準優勝のギガンテスだな……全員、控えも含めてクラスを重戦士、聖騎士に固めて身長180cmオーバーの高身長で固めたチーム、四聖の一人『盾王』の白浜雷電もここ出身だ」
2チーム目として説明が入った、ギガンテスは現四聖の一人が所属しており、重量級の闘士のみで固めたチームらしい。
「全員ミドルからヘビー級か……当たりたくないな」
その説明に神山が珍しく弱音を吐いた、これに河上はどうしたと笑みを向ける。
「随分弱気だな、神山くん」
「身長差に体重差ってもろハンデっすからね、俺だってピーター・アーツやらセーム・シュルト相手に勝てる訳ないっすから」
現実的な判断だと神山は河上に理由を答えた、肉体的な差異はどうしようも無い部分があるのだと。こればかりは虚勢が張れないと溜息を吐く神山だが、中井から出た言葉は強気だった。
「はんっ!もし当たったら、僕が全員アキレス腱断裂させてやるさ、そのための関節技、サブミッションだからね」
中井からすれば、この無差別な差こそ自分の真骨頂だとばかりに強気な言葉だった。実際予選でも、シルバードラゴンにて身長差を覆す足関節を決めたのも自身の理由だろう。
「3組目は、中井くんと町田さんが会ったらしいな、ヴァルキュリア・クラン……珍しい事に闘士から控え、医療班までが全て女性に統一されたチームだが……実力はご存知の通りだ、特に三条原オリヴィエは今までの戦いで、一度も負けていない不触不敗の令嬢と呼ばれている」
「神山くん、1回戦こいつらの横取ってよ、あのクソアマは僕がやるからさ」
そして中井と因縁が出来上がった、三条原のチームたるヴァルキュリア・クランは、全員女性と聞いたがそれに対して中井は1回戦の相手はこいつらにしろと、殺意を滲ませて宣った。ついさっきまでギガンテス相手に自信満々だった声から一気にトーンが落ちたあたり、本気でオリヴィエを標的としているらしい。
が、ここで河上から疑問が投げかけられた。
「不敗と聞くがベスト3なのだな?」
不敗の乙女が所属するチームが、なぜ優勝していないのかと河上の疑問に長谷部はすぐに答えた。
「個人としてはだ、展覧試合ルールで引き分けも負け扱いになるが、彼女はこの日まで一度も攻撃を受けず、更には倒された事が無い……四聖すらも彼女と引き分けになるくらいだ、僕も実はワンマッチで戦ったが……勝てなかったよ」
「長谷部さんもっすか……」
「故に、不触不敗の令嬢……か」
三条原オリヴィエの実力は、四聖と同等であり、未だに攻撃をその身に受けていない。そして一度も、倒されての敗北は無しという事実に河上も顎に手を当てた。しかも、長谷部自身も対峙して負けたとなれば、その強さは本物だと解らされてしまう。
「僕、あと少しで後ろから絞めあげれたんだけど?」
「なに?」
「三度叩きつけられた中で、足を絡めて引き倒したのだ、中井くんは……」
それに対して中井は宣った、邪魔がなければ締め落とせたと。それを聞いた長谷部に、町田が補足とばかり声を上げた。中井真也の、グラップリングテクニックが攻略の糸口かもしれないと。
「ま、まぁ中井くん、もしかしたら組み合わせでは当たらないかもだし、そこまで固執しなくても」
「ワンマッチ組んでもらってでも殺してやる……」
「ダメだ長谷部さん、聞いちゃいない」
執念じみた固執に長谷部が落ち着く様にと宣うが、聞いちゃいないと神山が溜息を吐いて、次にと進行をお願いした。
「ああ、最後は彼らだな……4位のマギウス・スクワッド……全員が魔法使いの闘士であり……君たちが最も避けるべき相手になるだろうな」
最後の一組を持ってして、シードチーム4組が出揃った。
完全なる実力主義の修羅『ブルー・ラウンズ』
剛力巨人の軍団『ギガンテス』
不敗の令嬢を抱えた戦乙女の園『ヴァルキュリア・クラン』
未知なる異能、魔法の使い手達『マギウス・スクワッド』
以上が、展覧試合シードチームだと長谷部が説明し、話を戻す。
「で、君たちが最も避けるべきは、マギウス・スクワッドだ、君たちは彼らとだけは戦ってはいけない、理由は分かるな?」
それは、回避するべき相手の話であった。他三組は兎も角、マギウス・スクワッドだけは回避しろと長谷部は忠告した。
「魔法使い集団か……」
その理由は、言わずとも分かる……相性の問題だと、TEAM PRIDEの面々は押し黙った。
TEAM PRIDEはそもそも、昨日加入した長谷部を除き、全員がクラスもスキルも持たぬ、劣性召喚者のチーム。この世界の異能には、程遠い位置の存在であり、魔法への対策、耐性が皆無な集まりであった。




