27話 愛乃の大胆アプローチ
バスタオル一枚姿の愛乃が、透と同じ湯船の中にいて、すぐ隣に座っている。
そして、透になら何をされてもいいと、悪魔のような、魅力的な提案をささやいていた。
「連城くんが望むことが、わたしの望みだもの」
愛乃が甘えるように、そう言う。
透は焦った。
このままでは愛乃に流されてしまう。その提案を聞いたら最後だ。
湯船のなかで、二人きりという状況なのだから。
ブレザーの制服姿で、お腹を大きくして、「透くんの子どもだよ?」と微笑む愛乃を想像してしまう。
透はくらりとめまいのするような感覚に襲われた。
そうなるわけにはいかない。
(……でも)
愛乃は、透にそうしてほしいと望んでいる。何をしても、愛乃は受け入れてくれる。
そして、透は、愛乃に言ったとおり、健全で馬鹿な男子高校生なのだった。
透も、愛乃のような可愛い女の子に興味がないといえば、嘘になる。
周囲の状況も、それを認めている。透と愛乃は婚約者なのだから。
原因を作ったのは愛乃で、愛乃がそうしていいと言っているんだから、何も遠慮する必要はない。
「えっと、本当にしてもいい?」
「う、うん……連城くんが望むなら」
愛乃は湯船のなかで、顔を真っ赤にして透を見つめていた。
水分を吸収したタオルが、ぴったりと体に張り付いていて、体のラインが明らかになっている。
金色の流れるような髪も、愛乃の体にかかっていた。
愛乃がくすっと笑う。
「連城くんがわたしの胸を見る目……エッチだね」
「そういうふうにさせたのは、リュティさんだよ」
「うん……そうだね」
愛乃は緊張したように、深呼吸した。
透はどきりとした。
(どうしてこんなことになったんだろう……? やっぱり、問題があるのでは……?)
透の頭の中の理性が、そう問いかけるが、もはや、ほとんど意味はなかった。
「ど、どうぞ……連城くん。好きにしていいよ?」
愛乃は恥じらうように、青い目を伏せた。、その仕草は、あまりにも可愛くて……。
自分の無力も、愛乃に対する責任感も、守ってあげたいと思ったことも、すべて忘れそうになる。
でも、それで良いんだろうか?
透の脳裏にそんな考えがよぎる。
透は愛乃のタオルにそっと手をかけようとし――
「ご、ごめん!」
透がいきなり立ち上がると、愛乃はあっけにとられた様子だった。
そして、透はそのまま風呂場から逃げ出してしまった。
(やっぱりそこまでの覚悟は決められないよ)
ヘタレと言われてもかまわない。それでも、透は愛乃を傷つけることが怖かった。
脱衣所へ続く扉を開けて、ぴたりと締める
「もうっ。連城くんったら……わたしは本当に何をされてもいいのに」
そんなふうに、背後から愛乃が優しく言ってくれたのが救いだった。
☆あとがき☆
透が愛乃に……?
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