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7話 学長と話をしよう。

「母さん?で良いのかな?合ってるよね多分。俺より小さいから母さんって感じはしないけど」



 前の世界でも母さんは小さかった、背の高かった父さんと比べるとまるで子供の様だったのだ。母さんは俺の言葉に首をブンブンと縦に振る。こんな感じで子供っぽい所も実に母さんっぽい。



「和人!母さん和人にとっても会いたかったよー!480年も待ってたよ。長生きはしてみるもんだね!」



 確かに長生きだ500歳くらいか?エルフってそんなに生きるものなのだろうか。母さんはとても嬉しそうに未だに俺の体に引っ付いたままだ。

 勿論俺だって嬉しい、ナデシコは母さんの話を殆どして来なかった。故にもう亡くなって居ると思って居たし・・・ああ、さっきルィエが言ってたな、ワザと母さんやルィエの話をさせない様にしていたって。これは多分母さんの指示なんだろうな。



「母さん、ちょっと苦しいから離れてくれないかな。母さんからしたら7歳のままの俺なんだろうけど向こうで亡くなった時は17歳だし、こっちに来てから2年経ってるから19だぞ?恥ずかしいよ」


「え!反抗期?和人も反抗期なのね?あの頃はとっても素直で良い子だったし母さんにべったりの甘えん坊さんだったのに」



 そうは言いつつも俺から離れない母さん。


 まあ何百年ぶりだし、俺だってそう悪い気はしない。ルィエが俺たちを微笑ましい顔で見て居るのがとても恥ずかしいが母さんが落ち着くのを待ってから話をする事にした。





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 学長室の中、ソファに座った俺達にルィエが4人分の紅茶を入れてくれる。俺の分と、俺の腕にしがみつく母さんと反対側のソファに座ったルィエ、そして母さんの反対側の腕にまるで対抗する様に抱きつくサリュだ。

 あの後サリュの事を思い出し母さんに頼み、騎士科の教師に連絡を取って貰いこの部屋に連れて来て貰った。


 きっと今から込み入った話をするのだろう、

 まあ確かにサリュにはそろそろ話をしても良いんじゃ無いかなって思ってた、そう考えるとタイミングとしては今話すのも良いだろう。そんなサリュは俺を挟み反対側の母さんをジッと睨んで居る。そう、まだ説明してないからサリュは何故自分が呼ばれたのかまだ分かっていないのだ。



「和人、サリュちゃんってとっても可愛いのね!和人にべったりじゃない!10歳にしてお嫁さん候補かしら?母さんすごく嬉しいわぁ」


「お母さん・・・?わひとのお母さんなの・・・?」



 サリュの母さんを睨む目が穏やかになったのは良いが、サリュが混乱し始めて居る。どこから説明したら良いか・・・取り敢えず母さんにも俺の前世の話から話す事にした。


 まずサリュには俺が異世界から来たという話、サリュに異世界を説明をするのにとても苦労した。母さんと父さん方の祖父母は亡くなった話、いきなり居なくなった母さん達は失踪扱いで死亡届が出されて居る事。17歳まで入院して居て、医者の手術中のミスで死んでしまった話。       

 こっちに来てからの話はナデシコと密に連絡を取って居たらしく大体の事は知って居る様だった。



「和人、苦労したんだね・・・母さんと父さんがいきなり居なくなったのに母さん達きっと恨まれてるんじゃ無いかってずっと思ってたから、和人が普通に接してくれてすごく嬉しい。父さんも亡くなるまでそれをずっと心配してたから・・・」


「恨んで無いよ、じいちゃん達が凄く可愛がってくれたし、元の世界では人生楽しむ余裕は無かったから、新しい人生を用意してくれた母さんには感謝してるくらいだ、それよりもなんでこんなにべったりなのに俺がこの世界に来た時にすぐ会いに来てくれなかったんだ?後はナデシコに母さんの事を内緒にさせた事とか」



「うーん母さん説明下手くそだから、ルィエが説明して。よろしくねルィエ」


「解ったわ母さん。じゃあ母さん、ディアンスス・エルドリアが英雄と呼ばれたラインハイト・デュアリスと仲間と共に世界を救った話からしましょう」



 ルィエが話し始めた、ルィエの話し方は大分砕けてる、さっきまでの話し方は仕事用で、母さんから仕事中の言葉は丁寧に、呼び方も母さんでは無く学長と呼ぶ様に、と言われて居るみたいだ。

 そういやこっちの世界での父さんの名前を聞いたのは初めてだな、ライインハイト・デュアリス。チート持ちのハーレム主人公だとは理解してたけどなんか名前まで勇者っぽい、母さんの名前もディアンススって言うんだな。そんな事を考えながら、俺は話し始めるルィエに意識を傾ける事にした。





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「それで、ここからはナデシコに聞いて居ると思うけど、母さん達が女神に与えられた役目を終えた後、母さんと英雄は弟君を転生させる為に受け皿である身体を作る研究を始めたと言う訳」



 ルィエがついに弟君と俺の事を呼び始めた事については、あまり考えない様にしよう。隣を見ればサリュは頭が爆発しそうな顔をして居る。

 母さん達は結局魔王って奴を倒す為に呼ばれたらしい。話の中身は父さんと母さんが大体の敵をチートしまくり倒した。


当時の国王、と言うか当時はランダット王国という国は無く、国を起こすきっかけになった事に父さん達が関わって居るらしい。


 まあ、その初代国王に是非国の英雄になって欲しいと言われたそうだが其れをキッパリと断りラルンド領の近くのあの森にこもり転生陣と転生先の体の準備を始めた、という事だった。



「それでね和人の質問だけど研究が終わった後、元々この学園がある土地は何も無い森だったんだけど急にダンジョンが出現してねダンジョンが急に現れた影響で大規模なスタンビートが起きてね、当時の冒険者や王国の騎士達ではそれを止める事が出来なくて面倒だったけど母さんが止める事にしたの、150年前位だったかな?」


「そうね、その頃だったと思うわ」

 


 母さんの問いにルィエが答える。



「そしたらさ!スタンビートを止めてダンジョンをクリアしたのは良いんだけど、アレよあれよという間にダンジョンマスターになっちゃたのよ。ここのダンジョンすごく特殊でダンマスが不在だとすぐにスタンビートを起こすみたいなの。困っちゃうよね!」


「それで、弟君の転生魔法陣はその後に造られたナデシコに任せて、私は母さんがただダンマスするのも暇だって言うからこの学園の創設と運営を手伝ってるって訳」


「成る程、じゃあナデシコに黙ってる様に言ったのは?」


「「それはただのイタズラだね!」」



 コイツらハモりやがった・・・さっきからサリュが何も喋らない、腕はしっかりとつかまれてるがサリュの顔を見ると呆けた顔で俺を見て居る。俺と目が合うと



「エイユウとケンジャの…子ども・・・わひとが?」


「あー、そうなるな黙ってて悪かったな」



 ポンっとサリュの頭に手を乗せクシャッと頭を撫でる、サリュは気持ち良さそうに目を細め小さく首を横に振った。



「ううん、わひとがなんでこんなに強いか納得できた」


「今日聞いた事は、知られたく無い所が沢山あるんだ、黙っててくれるか?」


「うん、わひとには2回も助けて貰ったし、えーと、わひとの事大好きだから。わひとがこまる事、サリュはするつもり無いよ?」


「そっか、ありがとサリュ」



 もう一度頭を撫でるとサリュが口を開く。



「あ、あのね?耳も撫でて欲しい・・・」


「あ、ああ、これで良いか?」



 ピンと立った耳をゆっくり撫でる指が触れた瞬間、ピクッとフサフサの耳が揺れるがどうやら気持ち良いのかサリュの目が先程よりも細められて居る。



「はぁ、良いわぁ。うちの息子ってこんなジゴロだったのね。7歳までしか一緒に居なかったとは言えやっぱり父さんの子だわ!まさかこんな光景が生きて居るうちに見られるなんて。手術を失敗したお医者さんに感謝ね」



 母さんが何か言って居るがサリュが嬉しそうにして居るから、良い事にしよう。



「そう言えば、住む所なんだけど寮って入学金とは別に費用が掛かるのかな?」


「え?寮に入る必要なんて無いわ。母さんと一緒に住めば良いじゃ無い」


「あーまあそうなるか。確かにその通りだ、サリュは寮に入るか?寮代が掛かるならその分は俺が出してやるが・・・」


「えぇと、サリュはどうしよう、あんまり考えて無かった、かも・・・わひとと一緒にいれると思ってた・・・」



 サリュの耳はこれでもかと言うほどペタンコだ。うーんどうしたもんか、流石になあ俺自身が用意した住処なら兎も角・・・



「一緒に住めば良いじゃ無い!ええそれが良いわ!サリュちゃん可愛いもん。3人目の娘だと思って可愛がれるわ。寧ろ1番可愛がり甲斐がありそうね」


「いいん、ですか?ディアンススさま、わひとといっしょに住んでも」


「いいに決まってるじゃ無い。だって和人の事大好きなんでしょ?大歓迎だわ!後、様はやめて欲しいわ、寧ろお母さんと呼んでくれても良いのよ?」



 話がドンドン勝手に進んで行く、まあ、サリュの住む所も何とかなったし良いとしよう。俺もサリュがそばにいる事は単純に嬉しい、授業が別だから尚更だ。



「でも流石にケンジャさまを、お母さんだなんて・・・」


「母さんが良いって言ってるし、母さんは言い出したら聞かないから呼んでやってくれ」


「ええと、でも・・・うーんじゃあ、かあさまって呼んでいいですか?」


「はぁーん!もう可愛いわあ!サリュちゃんヨロシクね?」


「はい。よ、よろしくお願いします」



 サリュは俺から離れると立ち上がり母さんに頭を下げた。


 その後、少し今後の事を話して宿に荷物を取りに戻る事にした。何か忘れている様な気もするが何だろう?そう思いながらサリュと2人で宿へと向かった。

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