085:念動力
ふよふよ~
ふよふよ~
黒い物体が宙をふよふよと浮いている
「...」
朝、目を覚ますと宙を泳ぐネコ、シュールな光景だ
「んしょ、んしょ!」
クロが一生懸命犬かきならぬ、猫かきで宙を進んでいる
「んしょ、んしょ!」
新しく手に入れたスキル、念動力で自分を宙に浮かしているのだろう
しかし、不思議な事にその効果に見合うだけの魔力発動を感じない
魔力を持たない魔人が使っていたスキルだけあって特殊なのか
便利なものだ
「...楽しい?」
「!!!」
ぽてっ、と私の腕の中に落ちてくるクロ君、むーとうなっている
起きてないと思ってたのか、いきなり声をかけられ集中が切れたらしい
「奇襲失敗なのだ!」
「んしょ、んしょって声出してたけど、奇襲するつもりだったの?」
「ぬ!、出してないのだ!」
毎朝の恒例行事をするつもりだったらしい
「たしかに魔力が感じられないから奇襲には向いてるかもね」
「うむ、もう少しで成功してたのだ!」
頭を撫でると嬉しそうに目を瞑るクロ
「そうだね?」
「そうなのだ!」
もっと撫でろと頭をぐりぐりしてくる、ふふ
「念動力って、テレキネシスとかサイコキネシスとかいわれているものでしょ、魔力消費しないで意志力だけで発動しているの?」
「うむ、見えない手が増えたようなものだな!」
見えない手かあ、わかり易い例えだね
「見える範囲でしか発動できないの?」
「いや、認識さえ出来ていれば見えなくても発動できるぞ」
んー?、あぁ
「認識さえ出来ていればいいって事かな、例えばあの椅子があそこにあることは既に見ていてわかっているから見えて無くても動かせるとか?」
「うむ、そんな感じだな」
けどそれって結局認識と言うか意識の範疇な気が、、んー、
「あの魔人がやってた事とか出来る?」
ぎゅ、ってやつ
「上手くできないのだ、どうにもその辺りは熟練度が足りんのか発動の発想が違うのか、まだよくわからないのだ」
クロはネコだし、手で握ると言う感覚がつかみ辛いとかかな?
「私も浮かせられるの?」
「リンは重いから無理だな!」
「えー、ひどい!」
「意志力でどうにかなるなら、クロと同じ重さってイメージで発動すれば出来ると思うんだけどなー、クロには無理かなー?」
ちらちらとクロ君を見る
「むぅぅ、我の意志力に不可能はないのだ!」
ふわり、とクロを抱いたまま宙に浮く
「おー、凄い、なんか不思議な感覚だね」
「うむ!」
自慢げにこちらを見つめてくる、もっとほめて欲しいみたいだ
そういえば、さっき一生懸命泳いでたよね
「もしかして移動できない?」
ピキッっと固まる
「別に出来るけど、今はそんな気分じゃないのだ!」
「ふーん、残念だね?」
「残念なのだ!」
しばらくふわふわと浮いた状態を楽しむ、気持ちがいいかも
ぱふっ、とベッドに落ちる
「MP減らないけど精神的には疲れるの?」
「うむ、何となく疲れる?」
「ふーん、もしかしたらMNDの値が関係しているのかもね、あのジェーンって魔人MNDが変に高かったし」
「MNDの判定が神魔への信仰心じゃなくて、信じる力という見方になるのか?」
「それはあるかもね、INTなら私達元から高いし都合が良かったんだけどMNDかあ」
「MND装備集めだな!」
「えー、INT特化のほうがいいでしょ、色々判定とかで有利になるしさ」
「でもでも、リンの光魔法の効果もアップするかも?」
「もうユニークスキルになってるし、関係無いかなあ」
「むぅぅ、パワーアップしたいのだ!」
「はいはい、INTとMND両方上がる装備集めようね?」
「ダメなのだ、STRもなのだ!」
クロ君、我が儘さんだね!
部屋で簡単な朝食をとり、宿を出る
最初の頃は食堂で朝食と昼食のお弁当を用意してもらっていたけど
声をかけてくる人がいるのでなるべく部屋から出ないようにした
対応が面倒臭いのだ、はやくマルアさんの宿屋に戻りたいな
そんなに強引な人はいないけど、
やっぱり冒険者相手だと宿の人も強く出れないみたいなのだ
その辺りはやっぱりギルド推薦だけあってマルアさんの宿は良かった
もっとランクの低い宿に泊まったら揉め事とか起きそうだよね
まあ、初めて泊まった宿では拉致されそうになったけどね!
どこかで昼食を調達してからカーサのところへ行こう
ふよふよ~
不自然にローブのフードが浮いている、もー!
「はーなーせー!」
じたばたするクロ君を胸の前で抱きしめる
「肉串買わないよ?」
「む、むむ!」
「あ、藤原君!」
近頃評判の肉串屋さんに寄ったら、遭遇した
「お、オス、楠木!」
くるくるくる、パシッ!
「キシャー!」
回転蹴りをお見舞いしようとしてたクロが華麗にキャッチされている
「そう何回も喰らうかよ、クソネコ!」
首の後ろをつかまれて手も足も出ないクロ君
キラン!
エメラルドグリーンの瞳が妖しく光る!
げし!
「あぅ!」
ちょ、クロなにしてんの!
スタッ、さささ、ばふっ!
クロがローブのフードに逃げ込んでくる
そして、見えない何かに顎を殴られて膝をつく藤原君
「藤原君大丈夫?」
「し、信じられないかもしれないが、今起こった事を、」
「あ、クロがやった事だから話さなくていいよ」
「へ?」
肉串と他にも色々購入して、藤原君とカーサのお店に行く
「なんでこいつも一緒なのだ?」
「んー、藤原君も管理迷宮行くって言うんだしいいじゃん?」
「やなのだ!」
「なんでさ?」
「なんでもなのだ!」
「楠木は俺が守るぜ!、キラン!」
「むっきぃぃぃ!」
「もー、藤原君もクロを挑発したらダメだって!」
「本気と書いてマジなんだぜ?」
「クソワラぶっ殺す!」
藤原君なんかキャラが変わってない?
「藤原君、今後私のこと呼ぶ時はリンでいいからね?」
「お、おう、リ、リン」
「却下だ!」
「いいの、楠木って呼ばれるほうが問題だしね」
あまりフルネームを知られるのはよろしくない
光魔法の洗脳や、闇魔法5にある呪いとか
あとは隷属契約とか、色々と面倒なものが多い
人は何で縛られるのか?
楠木凛、楠木、リン、あっちの世界では楠木凛が私だった
こちらの世界では?
曖昧だ、楠木凛であり、冒険者リンである
そのどちらでもあり、どちらでもない
楠木凛と認識している藤原君が、私のことをリンと呼ぶ
私という定義が曖昧になる、、ただの保険
魔道具屋に到着する
「なんでこいつがいるのよ?」
カーサ君の開口一番
「そうだそうだ!」
便乗するクロ君
「えー、なんでばあさん俺のことそんなに嫌うの?」
そして藤原君
「もー、みんな面倒臭いんだけど?」
「「「なにそれー!」」」
恥かしそうに藤原君をちらちら見ながら、本当のことを言う
「んーとね、藤原君の統率が目当てなの!」
衝撃の告白!
「カーサのためか、じゃあしょうがないな!」
「え、どういうこと?」
「え、俺って統率のみの存在なの?」
「だってカーサ、HP70だしVIT30じゃん貧弱だよね?」
「貧弱なのだ!」
「たしかにそれは貧弱だな!」
「なにそれ酷い!」
「多分藤原君の統率が有効になると思うから、それに期待なのです!」
「統率だけ置いて出て行け!」
「そんなん無理!」
「わたしがこんな奴より弱いって事なの?」
「統率のみ必要なクソワラは戦闘中後ろで正座な!」
「は?、ざけんなクソネコ」
仲良く喧嘩を始めた2人はほっといて
「カーサ、偽りの宝石+2になってるけど、どうやったの?」
「錬金よ、認識障害の性能も上がってるわ、それにこれも」
「うお!、若くなった!」
藤原君だけが驚く、耳の短い人間バージョンになったのかな
「同じ装備を錬金するとプラスが付くの?」
「同じ系統の同程度の装備を錬金、よ」
「ふーん、錬金便利だなあ」
「カーサ、気をつけろ!、いま小僧が邪悪な顔つきになったぞ!」
「え?」
「え!」
「お?」
「藤原君、ダメだからね?」
「あまいぞリン、今殺すべきだ!」
「そうね、殺すべきだわ!」
「えー、なにそれ?」
「俺はむやみやたらと人は殺さないから!」
「嘘付け、罠解除とか気配察知は魔物から取れないだろうが!」
「そ、それは襲ってきた盗賊を殺したらたまたま取れただけだぜ?」
「今、一瞬目を逸らしただろうがぁぁ、シネヤワレー!」
スキル強奪とか持ってると、仲間出来ないよね?
よく一緒にいるおじいちゃんも、いつでも殺しあおうぜ見たいな感じだし
「リンももっと気をつけないとダメなのだ!」
「藤原君は大丈夫だよ、信用できるしさクロだってわかってるくせに」
なにか頼みごととかしてたじゃんか
「リン、わたしは?」
なぜかカーサが張り合ってくる
「カーサも信用してるよ、錬金便利だしね?」
「なにそれー!」
耳をぴこぴこして怒り出す
そう、この世界で信用出来る人は少ない
藤原君にカーサ、そしてテレスさんもかな?
条件次第で信用できるのは
ウィリアムさんとギルバートさん、これはあくまで冒険者リンが前提
まあ、これだけだ
おそらく一番信用できるのは藤原君、
理由はまだこの世界にしがらみが無いから、それだけの理由
しがらみと言うのは、時間と共に増えていく
カーサやテレスさんは、今まで生きてきた人生がある
一族の掟とか、親兄弟を人質にとか、可能性はいくらでもある
信用をしているが誰も信頼はしていない、
そう教えられてきたしそう理解している、ただ、いまは少し違うけど
クロの頭を撫でる
私は無理だけど、
藤原君もそのうちそういう人を見つけるだろう
それまでは一緒に行動しておいたほうが良い
ギルバートさんみたいな人と一緒にいると戻れなくなる
笑いながら人を殺せるようになるのだ、
あの人は自分の正義があるからいいのだろうけど
藤原君はそのスキルの性質上、悪い方向へと傾く
まあ、私が心配する事でもないのだけど
笑いながら一緒にいられるなら、そのほうがいいよね?
「シネヤワレー!」
「うるせークソネコ、ぶっ殺す!」
あれ?
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名前:楠木 凛 種族:人族 性別:女 年齢:16
レベル:15
HP:210/210 MP:400/400
STR:155 VIT:170 DEX:175 MND:170 INT:400
スキル:(特殊)言語翻訳、アイテムボックス、鑑定
(技) 隠密5、罠解除1
(魔法)召喚魔法(式神)、空間魔法4
火魔法5、水魔法5、雷魔法3、土魔法5
光魔法、闇魔法5
(自動)HP回復、クリティカル
装備:普通の服、偽りの宝石、魔法の鞄
聖なる糸 :HP50、VIT25、MND25、HP回復
白のローブ:INT20
素早さの靴:DEX10
魔力の腕輪:MP20
力の腕輪 :STR10
ウサギの尻尾:DEX20、クリティカル
使い魔:クロ
スキル:(特殊)念動力
(武技)格闘術4
(技) 隠密5
(魔法)炎魔法2、水魔法1、風魔法5、鉄魔法3
光魔法5、闇魔法4
(自動)HP回復、クリティカル
名前:カーサ 種族:ハイ・エルフ 性別:女 年齢:116
レベル:30
HP:70/70 MP:250/250
STR:15 VIT:30 DEX:150 MND:30 INT:200
スキル:(特殊)鑑定
(武技)弓術4
(魔法)火魔法2、水魔法3、風魔法4、鉄魔法1
(生産)錬金4
装備:偽りの宝石+2(2up)、魔法の鞄+5
エルフの弓:MP20、DEX20、INT10
深緑のローブ:DEX10、INT10
エルフの衣:DEX20
エルフの靴:DEX10
巨人の腕輪:VIT20
大地の腕輪:HP20
セット効果エルフ:HP30、MP30、DEX30、INT30
名前:藤原 秀平
種族:人族 性別:男 年齢:16
レベル:15
HP:200/200 MP:165/165
STR:175 VIT:175 DEX:145 MND:145 INT:155
スキル:(特殊)言語翻訳、アイテムボックス、スキル強奪
(武技)剣術5、槍術3、格闘術2、弓術3
(技) 隠密5、罠解除4
(魔法)炎魔法1、氷魔法1、風魔法5
土魔法5、光魔法4、闇魔法4
(自動)気配察知3、HP回復5、統率3
装備:大地の剣:HP20、STR10、VIT20
騎士の剣:STR20
緋色のローブ:MP20、INT10
大地の籠手:HP20、VIT10
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