第15話 強面騎士は周囲の評価を聞く
「それでどんなデートをするんですか?」
イザベラ嬢に質問する。
1週間後と言っていたが、何かあるのだろうか?
「男のくせに一つも考えないのか?」
「デートどころか女性と付き合ったこともない俺にデート先が思いつくとでも?」
団長に馬鹿にされたが、仕方がないだろう。
せめて勉強していれば良かったが、自分には縁遠いと何もしてこなかった。
そういう意味では自分のせいか?
「1週間後に祭りがあるのをご存じですか?」
「ああ、そういえば、そんな時期でしたね」
王都で毎年行われる盛大な祭りである。
国内各地からこの祭りのために大勢の人が集まるらしく、出店される屋台も様々なものがあるらしい。
だが、その盛大さの裏に──いや、盛大であるが故に多くの問題が起こるのだ。
「すみません。祭りの最中は騎士として見回りをしないと」
申し訳なくお断りする。
問題が起こる可能性があるのに、仕事を休むわけにもいかない。
「いや、お前に仕事を休め」
「副団長の俺が大忙しの職場を休むわけにはいかないでしょう」
団長の命令に反論する。
この人は仕事を何だと思っているのだろうか?
「大丈夫だ。部下達にはしっかり説明しておくから、お前は自分のことだけ考えていろ」
「ですが・・・・・・」
俺は申し訳なさで一杯になってしまう。
祭りの見回りは正直かなりきつい仕事である。
祭りの間は王都の至る所で問題が起こる。
しかも、喧嘩などの得意分野で解決できるものだけでなく、店と客との間での諍いなど不得意分野も解決しないといけない。
そのため、意外と体力が消耗してしまうのだ。
だからこそ、部下だけに任せるのは申し訳ないのだが──
「お前が休んだ方が部下にとって良いだろうしな」
「どういう意味ですか?」
「お前、最後に休んだのはいつだ?」
「数日前の休日ですけど?」
団長の質問の意図がわからないが、あっさりと答える。
「じゃあ、その前は?」
「3週間前ですね」
「・・・・・・俺が休日を与えていないみたいじゃねえか」
俺の答えに団長が大きくため息をつく。
なぜかイザベラ嬢とお付きの二人が引いた目線を向ける。
どうしてそんな目で見られるのだろうか?
たしかに休日が少ないが、文句を言うつもりはない。
副団長としての仕事は忙しく、訓練する時間が取れないほどだ。
だが、副団長としての立場上、他の団員に示しがつくように強くないといけない。
そのために訓練時間を作っており、その結果休日を減らすことになるのだ。
「部下からも文句が来ているんだ」
「文句ですか?」
「休日のはずの副団長が訓練に来ている、とな」
「良いことじゃないですか?」
別に訓練は悪いことではないだろう。
それなのに、どうして文句を言われるのだろうか?
「あのな。お前がいたら、部下は常に気を張らないといけないんだ」
「訓練中なら当然でしょう」
「お前の言いたいことはわかる。だが、常に緊張状態であるせいで訓練が非効率になるのはお前の望むことではないだろう?」
「む?」
団長の言葉に反論できなかった。
たしかにその通りかもしれない。
まさか俺の存在が部下達の訓練を邪魔していたとは──
「別に訓練に参加するなとは言っていない。それはそれで部下達がダレるだろうからな」
「では、どうすれば?」
「しっかりと休日はとれ、ってことだ」
「・・・・・・わかりました」
言っていることはもっともなので、素直に受け入れる。
時折、この人は良いことを言う。
普段はちゃらんぽらんのくせにだ。
「では、よろしくお願いしますね」
「はい、よろしくお願いします」
デートできるのが嬉しいのか、イザベラ嬢が笑顔を浮かべる。
そんなに祭りに行きたかったのだろうか?
しかし、その相手が俺なのが申し訳ない。
「・・・・・・勘違いしてそうだな」
なぜか団長は俺を見て、ため息をついていた。
どうしうてだろうか?
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