第13話 強面騎士は自身のデメリットを告げる
※タイトルの間違いの指摘があったので訂正しました。
「このおっさんは強い奴と戦うのが好きなんですよ」
「そうなんですね。でも、趣味は人それぞれでは?」
イザベラ嬢は俺の言葉を良いように取る。
たしかに趣味は人それぞれである。
だが、それはあくまで周囲に影響を及ぼさない場合である。
「ですが、すでにこのおっさんに勝てる人間はほとんどいません。まともに打ち合える相手も数えるほどです」
「そんなにお強いんですね」
素直な反応をするイザベラ嬢。
実際に戦っている姿を見たことがないから、そんな反応が出来るのだろう。
あの恐怖は相対しないとわからない。
まあ、彼女に怖がらせることはないが──
「さて、そんな彼が自分の欲を満たす強者と出会うため、どんな行動をすると思いますか?」
「普通に探すのでは?」
イザベラ嬢はあっさりと答える。
普通に考えれば、それが答えだろう。
だが、この男は違う。
「このおっさんが満足できる強者はすでにそれなりの身分にいることが多いです。そんな人を相手にしたら、いろんな意味で問題になります」
「なるほど。では、どうするのですか?」
「いなければ、自分で作れば良いのです」
「自分で作る?」
イザベラ嬢は首を傾げる。
流石に分かりづらかったのだろう。
「才能のある人間を騎士団に引き入れ、自分の手で鍛え上げるんですよ」
「なるほど。それならわざわざ強い方を探す手間が省けますね」
「でも、貴族の才能のある人間は基本的に他の団に所属します。平民出身も同様です。その結果、どうなると思いますか?」
「人員が集まらない、ですか?」
「いえ、集まるには集まります。他の団に入れないあぶれ者たちが、ですけど」
「ああ、なるほど」
ようやくこの結論に辿り着く。
団長は優しいだけであぶれ者を集めているのではない。
結果として、集まっているだけだ。
それでも、おっさんの目的を達成できる可能性があるので、その状況を変える気はない。
「おいおい、俺がまるで変人みたいじゃないか」
「それは事実でしょうよ」
笑いながら文句を言ってくる団長。
事実であることは間違いない。
普通の人ならどうにか状況を改善しようとするはずだ。
「こういう状況の騎士団なので、貴族内での評判はかなり悪いでしょう。当然、そこの副団長という立場は決してメリットに働くことはない」
あぶれ者集団の副団長。
しかも、見れば思わず逃げてしまうほどの強面。
到底、女性から好意を向けられる条件ではない。
「なるほど。ウルス様の言いたいことは理解できました」
「そうですか。では、今回の話はなかったことに──」
イザベラ嬢に理解して貰えたようで良かった。
これで彼女は俺と結婚などと血迷ったことなど言うことは──
「ですが、私には関係の無い話ですね」
「はい?」
予想外の反応に呆けた声を漏らしてしまう。
先程までの話を聞いていたのだろうか?
「俺との結婚は百害あって一利無しですよ」
「それはあくまでウルス様の判断ですよね? 私にとってはそうではないだけです」
「いや、イザベラ嬢だけでなく、侯爵家にも迷惑がかかることに・・・・・・」
「それは気にしなくて大丈夫ですよ。すでに両親には話を通しているので、自由にするように言われました」
「はやっ」
あまりの早さに驚いてしまう。
てっきり彼女が好意を持ってくれたので、直接来たと思っていた。
まさか外堀を埋めていこうとしているとは──
「一番大事なのはお互いに好意があるかどうか、です。当然、私は好意を持っています」
「俺はまだ持っていないですよ」
彼女からの好意は理解できた。
だが、俺は彼女に対して好意はない。
正確に言うと、好意を持つほど交流はしていない。
「まだ、ということは今後持つ可能性があるということですよね?」
「それは否定しません」
「でしたら、私にもチャンスがあるということですよね」
「まあ、そうですね」
俺が好意を持つ可能性がある以上、チャンスがないわけではない。
だが、その可能性はかなり低いだろう。
彼女がいくら好意を抱いてくれようと、俺はいろいろと気になってしまう。
素直に受け入れることはできない。
「では、まずはお互いを知ることを始めましょう。好意を抱いてもらうには知ってもらわないと」
「まあ、そうですね」
否定はせず、受け入れる。
たしかに好いてもらうのには知ってもらわないといけないが、その逆もあるだろう。
知ったことで逆に嫌われることもある。
嬉しそうなイザベラ嬢には言えないが──
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