第11話 強面騎士は令嬢から感謝される
(コンコン)
「入れ」
扉をノックすると、中から返事が聞こえる。
それに従って入室する。
「どうも、一週間ぶりです」
「貴女はイザベラ嬢?」
まず最初に目についたのが、イザベラ嬢だった。
むさくるしい団長の部屋には似つかわしくない雰囲気なので、すぐに気づいた。
彼女の連れている二人の女性も相まって、そこだけ隔離されているようだった。
一人はメイドでもう一人は騎士のようだ。
同じ騎士のはずなのに、男性と女性でどうしてこれだけ違いがあるのだろうか?
「どうして彼女がここに?」
「とりあえず、まずは座れ」
「・・・・・・はい」
団長に問いかけたが、返答はなく命令される。
仕方がないのでソファに座った。
空いている場所がなく、なぜかイザベラ嬢と対面に座らされた。
「どうして私がここにいるのか、気になっている様子ですね」
「そうですね」
イザベラ嬢の言葉に俺は頷く。
別に隠すようなことでもない。
彼女のような貴族令嬢にこんなむさ苦しいところは似合わない。
どういった理由か気になって仕方がない。
「あなたに用があったんですよ、ウルス副団長」
「俺にですか?」
思わず首を傾げてしまう。
一体、彼女が俺に何のようなのだろうか。
そんな彼女は予想外の行動に出た。
「先日は危機的な状況を助けていただき、ありがとうございます」
彼女は大きく頭を下げる。
その行動に俺と女性騎士が慌て始める。
「頭を上げてくださいっ」
「お嬢様、こんな男に頭を下げるなんて」
イザベラ嬢は再び顔を上げる。
なぜか女性騎士の方に視線を向ける。
そこには何故か怒りがあった。
「彼は恩人ですよ。恩人に向かって「こんな男」とはなんですか?」
「で、ですが・・・・・・」
「謝りなさい」
「うっ・・・・・・す、すまなかった」
主人の命令に女性騎士はしぶしぶ従う。
本当は納得していないのだろう。
だが、主人の命令には従わざるを得ない。
そんな彼女の気持ちはわかっているのだろう、イザベラ嬢はこれ以上追求しなかった。
「彼女の失礼な対応、申し訳ありません」
「いえ、構いませんよ。主人に対する忠誠心は素晴らしいものです」
「ちょっと暴走することも多いので、困ったものです」
どうやら主人に認知されるほど暴走しているようだ。
おそらく強すぎる忠誠心のせいだろう。
今までの彼女の行動でなんとなくわかる。
だが、これ以上この話題を続けるのは止めておこう。
彼女の鋭い視線が俺に突き刺さる。
話すにつれ、俺への嫌悪感が増している。
「とりあえず、感謝の言葉は受け入れさせてもらいます。しかし、それだけのことでわざわざお越しいただくなんて、こちらが申し訳ないです」
「あら、用件がこれだけだといつ言いましたか?」
「え?」
イザベラ嬢の言葉に俺は驚きを隠せない。
少し不穏な雰囲気を感じ、警戒してしまう。
そんな俺の様子に気づき、イザベラ嬢が苦笑する。
「大丈夫ですよ。取って食おうとしていないので、警戒しないでください」
「そうなんですか?」
流石に警戒するのは失礼だったのだろう。
素直に警戒を解く。
この場で俺にどうこうできるのは団長だけである。
彼女に対して警戒する必要はなかったかもしれない。
「ただ婚約の話を持ってきただけですよ」
「はい?」
予想外の言葉に呆けた声を漏らしてしまう。
状況が飲み込めず、頭が真っ白になってしまった。
「おい、大丈夫か?」
俺の様子に気づき、団長が頭を小突いてくる。
そのおかげでなんとか元に戻れた。
「どなたの婚約の話ですか?」
「もちろん、ウルス副団長のですよ。結婚相手を探しているんですよね?」
「ええ、まあ」
真っ向から聞かれ、視線を逸らしてしまう。。
年下の令嬢から聞かれることがこんなにも恥ずかしいとは──
だが、これはチャンスかもしれない。
団長の条件を達成できる可能性が出てきた。
「それでお相手はどなたですか?」
「もちろん、私ですよ」
「はい?」
更なる予想外の言葉に俺は再び頭が真っ白になってしまった。
個人的には女性からグイグイ行く方が好きですね。
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