第10話 強面騎士は団長に呼び出される
パーティーから一週間が経ち、俺は騎士団の訓練場にいた。
騎士として実力を発揮するため、訓練は毎日欠かさず行っている。
「ま、参りました」
木剣を首元に突きつけられ、部下は両手を上げる。
既に彼の得物は弾き飛ばされ、手の届かない位置にあった。
ここから反撃する手立てはないので、彼はあっさりと降参した。
「少しは反撃する意志は持ったらどうだ?」
「いや、ここからじゃなにもできないでしょう」
俺の指摘に部下は反論する。
彼の方が年上のはずなのに、下手にでている。
まあ、この騎士団は実力主義なので、強い者に従っているだけだろう。
「例えば、左手を前にして待ってもらった状況で、右手で砂をばらまけばどうだ?」
「ばらまく直前に右手を叩かれるのがオチでしょう。副団長が思いついている時点でその動きはバレてますよ」
「む、そうか」
部下の指摘に反論できなかった。
俺が発案している時点で、考えられる行動である。
あっさり対処してしまうだろう。
そういう意味では考えていなかった。
「まあ、あっさりと降参するのはやめますよ。何か副団長の隙を突ける作戦を考えますわ」
「ああ、楽しみにしてるよ」
部下がやる気を出してくれるようで嬉しい限りだ。
一体、どんなことをしてくれるだろうか。
期待に胸が一杯になる。
「副団長、又怖い顔してるよ」
「いや、あれは笑顔だな」
「笑顔なんですか? めっちゃ怖いんですけど」
「口角が上がっているだろ? まるで得物を見つけた化け物みたいな表情だが、笑顔で間違いない」
俺の顔を見て、部下達が何か話している。
しかし、強面の集団でも俺の顔は怖いに分類されるのか。
本気でどうにかした方がいいだろう。
このままだと女性どころか一般人と話すことすら難しい。
「あ、副団長」
「ん?」
訓練場に入ってきた騎士に話しかけられた。
どうやら俺に用件があるようだ。
「団長が呼んでいましたよ」
「団長が?」
「部屋に来るように言っていました」
「どういう用件だ?」
とりあえず、用件を聞いておく。
急を要するのならすぐにでも行くべきだろう。
「詳しいことは聞いていませんが、すぐに来るように言われました」
「本当に何も聞いていないか?」
「はい、それ以外は何も聞いてないです」
問い詰めてみるが、騎士は口を割らない。
どうやら本当に具体的な内容は聞いていないようだ。
まあ、急ぐように言われているのならすぐに向かうべきだろう。
「俺がいない間もしっかり訓練をしておけよ」
「「「はいっ」」」
部下達に指示を出し、俺は訓練場から出る。
だが、そこで違和感に気がつく。
「なんで後ろから着いてくるんだ」
なぜか背後から三人の部下がついてきた。
先程の連絡してきた騎士もいた。
「団長からの命令です。副団長のあとにつづけ、と」
「どういうことだ?」
「さあ?」
俺と同様に部下達も首を傾げる。
どうやら彼らもその命令の意図がわからないようだ。
本当にあの人は何を考えているのだろうか?
「本当に何も聞いていないのか?」
「はい。副団長への用件とあとにつづけという命令以外は何も聞いてないです」
「そうか」
再度質問するが、同じ返事だった。
おそらく俺に情報が伝わらないようにするため、彼らに何も伝えていないのだろう。
何も知らない状況で俺を驚かせるつもりなのだろう。
団長の考えそうなことである。
しかし、一体何が起こるのだろうか。
嫌な予感がするが、俺に断る選択肢はない。
足早に団長の部屋へと向かった。
一体、何の用件でしょうか?
そして、背後に騎士たちが着いていく理由は?
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