エピローグ I'm……
昔、イノス先輩があの復讐者に人質とされてしまった時、復讐者はルクスを郊外の教会へと誘い出した。
今回、復讐者はかつて私達と対峙した時計塔へルクスを監禁した。
その復讐者の行動から私は、かつての出来事をなぞる意図を察した。
あの復讐者がイノス先輩を人質とし、ルクスが姿を消したとするならば恐らくあの教会にいるだろう。
そう思った私は、カナリオとの戦いを経てバイクで教会まで走った。
そして辿り着き、教会の様子をソナーで探る。
すると、教会内に起爆式が仕掛けられている事がわかった。
それも一つだけじゃなく複数。
教会を倒壊するに十分な量だった。
ルクスとイノス先輩は無事で、復讐者は倒れていた。
すでに先輩が言うには起爆式は起動状態にあり、もうすぐ爆発するという。
それを聞いた私は急いでステンドグラスから直接礼拝堂へ侵入。
二人を助け出して外へ出た。
教会が爆発するまでに十分に離れる事ができ、事なきを得た。
教会が爆発した後、私は適当な場所へ着地する。
抱えていた二人を地面に転がし、首に抱きついてもらっていたイノス先輩にも下りてもらった。
肩部装甲へ変形させていた黒嵐をバイクへ変形させると、体に力の入らないルクスを前に、イノス先輩には後ろに座ってもらった。
バイクを走らせる。
復讐者?
あいつならバイクの後ろで引き摺られてるよ。
タイプビッテンフェルトの水晶と関節を外し、足に魔力縄を引っ掛けて引き摺る事にしたのだ。
無法者がこうされるのは荒野の掟である。
馬より早いからかなり怖いだろうけどね。
そうして町を走り、国衛院本部へ向かう途中。
暴徒に囲まれる一人の少女を見かけた。
少女は暴徒を相手に怯える事もなく、むしろ怒鳴りつけていた。
この声は、エミユちゃんだ。
「お嬢ちゃん、一人かい?」
「どけ! お前らに構ってる暇なんて、あたしには無ぇんだよ!」
「威勢のいいお嬢ちゃんだぜ。へへへ」
暴徒達は、エミユちゃんに対して笑う。
エミユちゃんなら大丈夫そうだけど……。
私はバイクから下りて、高く跳び上がる。
マントを広げ、上空から奇襲する。
その際に、魔法で白煙を辺りへ撒き散らした。
「な、なんだ?」
「何も見えねぇ!」
「ぐあっ!」
白煙の中で暴徒達を倒した。
風を起こして白煙を散らすと、その場で立っているのは私とエミユちゃんだけだった。
「あんたは……」
エミユちゃんが私を見て声を発する。
私は答える代わりに、バイクを停めてある方向を指す。
ルクスがイノス先輩に肩を貸してもらいながら、こちらに歩いて来ていた。
「あ、あ……。父ちゃん! 母ちゃん!」
エミユちゃんがそちらへ駆けていく。
そのままルクスに抱きつき、ルクスが受け止めきれずに後ろへ倒れた。
「無事でよかった!」
ルクスをぎゅっと抱き締めてから、私の方に向く。
「ありがと!」
「約束を守っただけだ」
答える。
それからすぐに、国衛院の隊員がこちらへ走り込んできた。
「ルクス隊長! イノス副隊長! ご無事でしたか!」
隊員は敬礼する。
「おう。状況はどうなっているんだ?」
「はい。暴動の鎮圧はもうほとんど終わっています。あとは、散り散りになった暴徒達を捕縛するのみです」
「そうか。ご苦労だったな」
「はっ!」
ルクスは隊員を労うと、私を向く。
「今回は助かった。いつもは追われる立場なのに、よく助けてくれたな」
「この国を大切に思う者として、当然の事だ」
答えて、私はバイクの方へ向かう。
その背に、ルクスが問う。
「なぁ、お前は何者なんだ?」
何者、か……。
「I’m BLACK NOBLEMAN(我は黒の貴公子). Prisoned in the darkness of jet black……huhu(漆黒の闇に……ふふ)」
そこまで言って、私は言葉を止めた。
いたずら心が湧いてくる。
「Prisoner of Dark night(闇夜に囚われし者)」
そう言い残し、私はバイクに跨った。
ハンドルを回し、私は明らみ始めた空の下を駆けた。
つっこみどころはありますが、どうしてもそう名乗らせたかったのです。
去ってすぐにタイトルロゴがドーンと出てエンドです。
それから、もう一話後日談があります。




