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ネコと子イヌ4【後編】

~ネコと小イヌ4(前編)のあらすじ~



ご主人様のお友達、つとむ君の小イヌのえりかを預かることになった。

最初は楽しく遊んでいたけれど、夜になって、えりかに異変が。


怖い夢を見て、過去のトラウマを思い出してしまった。

その夢の内容は、

「突然、大切な人が消えてしまい、暗い部屋に一人ぼっちになっちゃう夢」


 えりかは過去に、つとむ君のお姉さんに、弟のさくたろうだけを連れていかれたことを

今でも忘れられないでいる。

自分だけ置いていかれたから。


「つとむ君もゆいちゃんも少しの間、

お出かけしただけだよ。えりかを必ず迎えに来るから」

「いつ戻ってくるの?」

「明日だよ」

「本当に?」

「だから寝て」

 ぼくはえりかをなだめた。


「どうしたの?」


 えりかが騒いでいたから、ベッドの上で寝ていたご主人様も起きた。

ご主人様は、えりかにタオルケットをかけて身体をくるんであげた。

「おやすみ」


 と言った。すると、安心したのか、えりかは目をつぶった。

それを見て、ぼくも眠ることにした。


 次の日の朝。

 みんなでごはんを食べていると、えりかはあまり元気がなかった。

「えりか、食べないの?」


 えりかのごはんは、少ししか減っていなかった。

いつもなら、ぼくの分まで食べそうなのに、

えりかはごはんを目の前にしてそっぽを向いてしまった。

「お腹、すかない」


 もう、いらないらしい。

 

 それを見ていたご主人様も、

「しばらく、置いておくから食べたくなったら食べてね」


 と片づけないで置いておくことにしたらしい。


こんな調子で、えりかは元気がなく、遊ぶこともしなかった。

えりかは、ぼーっとしているか、寂しそうな顔をするかどちらかしかしなかった。


「えりか、元気出して。つとむ君は必ず来るから。ねっ」


 そう言っても、えりかは顔色一つ変えることはなかった。


「えりか。おもちゃで遊ばない?」


 気を紛らわそうと、ネズミのおもちゃを持って行ったけど、

全く見ようともしなかった。

ダメにゃん。他のおもちゃにするにゃん。

「えりか。ボール遊びしようよ」

「コロコロコロ~」


 えりかの元へボールを転がしたけど、さっきと同じで、全く見ようともしなかった。

それどころか、足元にボールに当たっているのにボールに気づいていない感じだった。


「どうしようかにゃ~」


 ぼくはすっかり困ってしまった。


 そのまま日が暮れた。夕方になったころ、

「ん?」


 えりかは何かに気がついたらしく、突然走り出した。

「えっ。どうしたの??」


 ぼくは、えりかを追いかけた。

「ワンワンワンワン」


 と鳴きながら走っていった。行きついた先は、玄関だった。

すると、


「ピンポーン」

 玄関チャイムが鳴った。

ご主人様は、玄関のドアを開けると、

 ご主人様がドアを開けるとつとむ君とゆいちゃんがいた。

えりかはつとむ君に飛びついて、

「ワンワンワンワン」


 と鳴いた。


 どうやら、つとむ君が乗っている車の音に気づいて

つとむ君の元へ行こうとしたらしい。

「えりか、帰ろう。いろいろと迷惑をかけただろうし」


 つとむ君は言った。

 つとむ君の姿を見たえりかはすっかりご機嫌になった。

「またね。肉まん」

「じゃあね。えりかー」

「おじゃましました」


 つとむ君はそう言うと、さっきまでのえりかはなんだったのだろうかと思うくらい

元気になり、嵐が去ったかのように帰っていった。


 玄関のドアが閉まると

「は~」

「にゃ~」


 ぼくもご主人様もため息をついた。

えりかのせいで、気疲れしちゃったよ。


「えりかはたまに、怖い夢を見るらしく、

騒ぐことがあるからとつとむ君に言われていたんだ。

だから夜、えりかが騒いでいたからきっと怖い夢を見たのだと思っていた。

タオルケットをかけると安心して眠るから、かけてあげてね。

と教えてくれたんだ」


 だから、あのとき、えりかにかけてあげたんだね。それでおとなしくなっていたにゃん。


「きみも、気をつかうことができるんだね」


 ご主人様は言った。失礼だにゃん。ぼくは、気づかいができるネコにゃん。

「冗談だよ」


 ご主人様は笑いながら言った。

「ほら、おいで。『ネコセレブ』あげるから」


 えっ! 今、『ネコセレブ』って言ったよね?

高級キャットフードの『ネコセレブ』を

くれるのはうれしいけれどうして?? ぼくには分からなかった。

ぼく、いいことなんてした覚えがない。

それとも、ご主人様の気まぐれかにゃ。

「気づかないとでも思ったの? きみがえりかのことを気づかっていたこと、

ちゃーんと見ていたよ。だから特別にあげる。ご褒美」

「にゃー」


 ぼくも気を使っていたけれど、一番気づかいができるのはご主人様だと思う。

えりかにも気をつかい、ぼくのことも気にかけてくれた。

やっぱりご主人様は大好きにゃん。

だって、『ネコセレブ』もくれるし。

 ぼくはさっきのことは忘れ、すっかりご機嫌になっていた。



《終わり》



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