ネコとお花見
ぼくのおうちのお庭には毎年、桜が咲く。
去年は大雨が降ってしまい、近くで満開の桜を見ることができず、
お部屋から散っていく桜を眺めていた。
「今年こそはお花見するにゃん。今日はいい天気だし、このチャンスを逃したら、桜が散ってしまうかもしれない」
そう思い、 お庭へ出ると、
「わー。キレイだにゃん」
桜の木は見事にピンク色の花を咲かせていた。
「近くに行ってお花見しなきゃ!」
近くで見る桜の木は遠くから見るよりも迫力があって、さらにステキだった。
「んにゃ~。いいにおいがする。これが桜のにおいかにゃ」
ぼくはすっかりご機嫌だった。
お天気だったせいもあり、ポカポカして気持ちよくて、ついつい眠ってしまった。
「スピピ~。スピピ~」
しばらくすると、
「んにゃ? 寒い!」
寒くて目が覚めた。空はまだ明るかったけど、風が出てきたから寒くなったみたい。
「ピュー」
風が吹くと、ヒラヒラと桜の花びらが風に舞い、ぼくの身体の上にも落ちてきた。
ふと周りを見ると、桜の花びらがたくさん散っていて、まるで、ピンク色のじゅうたんみたいだった。
「桜の花びらのじゅうたんみたいだにゃ!」
ぼくは思わず、この花びらのじゅうたんに転がってみたいと思った。
気持ちよさそうに見えたから。
けど、それはしてはいけないと思った。
ご主人様はぼくに、
「身体が汚れるから、お外でゴロゴロしないでね」
と言っていたから。
「ピュー」
風が吹いているから、早くしないと花びらのじゅうたんが消えてしまうかもしれない。
「花びらのじゅうたんに転がれることなんてそうないことだし、絶対に、あのじゅうたんの上に乗ってみたいにゃん。だけど、転がったら怒られるからそうしたらいいのだろう」
と悩んでいた。
そして、キョロキョロと周りを見渡した。
そう言えば、ご主人様はお出かけしちゃったから、ぼくを見ている人は誰もいないし、桜の花びらの上なら、ぼくの身体もそんなには汚れないはず……。
ぼくは転がることに決めた!
「ゴロゴロ~」
花びらのじゅうたんに転がってみた。
しかし、
「痛いにゃん!」
花びらの下は地面だから硬くて身体が痛かった。
見た目はじゅうたんだけど、やっぱり花びら。
“じゅうたんみたい”と“じゅうたん”の違いは大きかった。
「ピュー」
また風が吹いて、花びらが大量に舞っている。
桜の木を見上げると、花びらはほとんど散っていて、たくさんの枝が見えていた。
風が吹いて一気に桜が散ってしまったらしい。
「んにゃ? 何かが頭に落ちてきた気がするにゃん」
「ブルブルブルブル」
と頭を振ると、
「ポトン」
と何かが落ちてきた。地面に落ちてきたものを見てビックリ。頭から落ちてきたのは、毛虫だった!
「にゃ~。毛虫!!」
しかもぼくを見て笑っている。
「毛虫は嫌いにゃ~」
桜の木から風に飛ばされ、ぼくの頭の上に落ちてきたみたい。
よく見ると桜の枝には、一匹や二匹どころではなく毛虫がうじゃうじゃといた。
「寒気がするにゃ~!」
あんなに大量の毛虫が降ってきたら、
ショックでぼくの体から毛が全て抜けてしまう!
「桜の花と同じように、体の毛が散ってしまうのはいやにゃ!!」
ぼくは怖くなって、あわてておうちに入った。
桜はキレイだけど、散ったあとの桜の木は非常に危険!
「うじゃうじゃといた毛虫を思い出しただけで寒気がするにゃん」
「ブルブルブルブル」
とぼくは首を振った。
「来年は、桜が散り始めたら木に寄りつかないようにするにゃん」
そうぼくは心に誓った。
《終わり》




