ネコとおとなりさん2(前編)
ぼくが庭でひなたぼっこしていたら
「肉まん」
ぼくを呼ぶ声がしたから振り向いて見たら、順三がいた。
「順三ー。珍しいね。ぼくのおうちのお庭に来るなんて~」
思わず順三に声をかけた。
順三は、ぼくのおうちの隣に住んでいるネコ。
三軒隣に住んでいるミーコと違って、
ぼくのおうちに来ることはあんまりない。
もしかしたら順三は、ぼくよりも太っているから動くのがニガテなのかもしれない。
そんな順三を見ると、なんだか冴えない顔をしている。
「どうしたの? 何かあったのかにゃ?」
ぼくは気になって声をかけた。
「最近、ご主人君の元気がないのだよ!」
順三は心配していた。
順三は、ご主人様の田中さんといっしょに住んでいる。
長い間イギリスに住んでいて最近、石川県に引越しをしてきた。
順三は、田中さんのことを召使に思っているみたいで、ご主人くんと呼んでいる。
「元気がないってどうゆうこと? 病気になっちゃったのかにゃ?」
「それが、理由がサッパリ分からないのだよ!」
順三も困っている様子だった。
「分からないって?」
順三にも理由が分らないらしい。
「我輩がお腹がすいたからごはんをねだっても、すぐに用意してくれないし、おもちゃを取って欲しいから鳴いても、まるでうわの空みたいで聞いていない。この我輩がご主人くんの所まで言って、足元をスリスリしないとなかなか動いてくれいのだよ~」
順三は、田中さんに甘えてばかりのネコで、自分から動こうということはまったくしない。
ご主人様の田中さんには何でも頼っている。
田中さんは優しい人だから、順三がして欲しいことは何でもしてしまう。順三は、それが当たり前だと思っている。
だからご主人様なのに、召使のように思っているらしい。
「お腹がすいたのはしたかないけど、自分でできそうなことは自分でやったらいいにゃん」
「それは我輩がやることではない!」
順三は、キッパリと言った。
「順三、田中さんに頼ってばかりじゃダメにゃん。自分のおもちゃは自分で取りに行けるでしょ?」
このぼくだって、自分のおもちゃは自分で取りに行くのに……。
「順三、このままだと、田中さんがいないと何もできないネコになってしまうにゃ!」
と言うか、もうなっている気がするけど……。
「ご主人君がいなくなるなんてありえないから、そんなこと気にする必要はない!」
「いなくなることはそうないかもしれないけど、何か事情ができて順三の面倒を見ることができなくなっちゃうかもしれないときがくるかもしれないにゃん。そのときはどうするの?」
「それは、絶対にありえない!」
「どうしてそう断言できるの?」
「ご主人くんに限ってそれはないからだ!」
「だから、そうとは限らないにゃん。田中さんが病気になったらどうするの? だって、今、順三の面倒をみきれてないんでしょ?」
「あっ……」
順三は声を詰まらせた。
「とにかく、田中さんにどうゆう事情があるかは分らないけど、こうなったときのために、自分で出来ることはしておいた方がいいにゃん。それに田中さんは召使じゃないよ。順三のご主人様であることをよーく覚えておくことにゃん」
ぼくは順三にきつく言った
「分かった……」
順三はトボトボ寂しげに帰っていった。
それから数時間後、
「ピンポーン」
玄関チャイムの音が鳴った。
「んにゃ~。誰か来たっぽいにゃ~」
リビングで本を読んでいたご主人様はすぐに立ち上がり、
玄関に向かって歩いて行った。
「ガチャ」
ご主人様がドアを開けると、ご主人様は挨拶をしていた。
きっと、知り合いみたいにゃん。
誰が来たのかそっと首を出して覗いてみると、玄関に田中さんが立っていた。
「田中さんだにゃ!」
気になっていたぼくは、玄関に行って、田中さんを見に行った。
すると、パッと見ただけでも分かるくらい、順三よりも元気がなさそうで、ほっぺたがこけてやせたっぽい。
順三と違って、元からやせているのに、これ以上やせたら、ガリガリになってしまう。
その姿を見たご主人様もビックリした。
とりあえず、事情を聞くためにおうちに上がってもらうように言って、リビングに入ってもらった。
すると、ご主人様を見るなりいきなり泣き出した!
「どうしたのかにゃ?」
突然のことでぼくもご主人様もお互いに目を合わせ困ってしまった。
ご主人様はさんは田中さんに、
「まーまー。落ち着いて。何があったか話して下さい」
と言ったのだけど、なかなか泣き止まない。
これにはご主人様もどうしていいかわからずオロオロしている。
もういい大人なんだから、泣くのを止めて欲しい。
これだと話が進まないじゃない。ネコが鳴くのとはわけが違うだから。
≪続く≫




