ネコと赤ちゃん2(前編)
「スピピ~。スピピ~」
いつものように、ぼくがリビングで気持ちよく眠っていると、
「ギュ~」
誰かにシッポをつかまれているような違和感を感じ、ハッと目が覚めた。
ふと隣を見ると、ニコニコしながらシッポをつかんでいる赤ちゃんがいる。
「カナちゃん!!」
どうやら、カナちゃんがぼくのシッポをつかんでいたらしい。
カナちゃんは、ご主人様のお友達のリカちゃんの子ども。
この前、おうちに遊びに来たとき、
シッポで遊ばれて大変な思いをしたから、よーく覚えている。
さっきみたいにシッポを掴んだり、
口の中に入れてかじったり、とっても痛かった。
「カナちゃん、シッポから手を離してにゃん!」
そう言ってもカナちゃんには伝わっていないようで、
相変わらずニコニコしているだけ。
「手を離そうとする様子はないにゃ……。こうなったら、強行手段!」
ぼくはシッポを勢いよく振
り回した。すると、カナちゃんはいきなり掴んでいる手を突然離した。
「にゃ!」
ぼくはシッポを振った反動で、倒れてしまった。
「痛いにゃん! 急には離しちゃダメにゃん!!」
カナちゃんは、そんなぼくのおマヌケ姿を見てニコニコしている。
「もう~。カナちゃん~!!」
本当なら、怒りたい所だけど、赤ちゃんに腹を立てるのは大人げない。
「カナちゃんがいるってことは、リカちゃんもいるはずだけど、
どこにいるのかにゃ?」
見渡すとテーブルの上にカタログを広げて
ご主人様とリカちゃんが何か話をしている。
「何のカタログを見ているのかにゃ?」
近づいて見ると、
カタログには子ども用のお洋服がいっぱい載っていた。
白いレースのフリフリがついているワンピースや、
黒と白のギンガムチェックのスカート、
ピンク色のリボンがついているTシャツ。
「にゃ~。どれもかわいいにゃん。カナちゃんに似合いそうなお洋服ばかりにゃん」
このカタログを見て、つい最近、ネコ集会へ行ったとき、
「ご主人様の趣味で変なお洋服を着せられて困っている」
と言うネコたちのことを思い出した。
やっぱり、ネコと人間の赤ちゃんが着るお洋服は違うね。
ネコ服のお洋服だって色々と種類があるし、
ステキなのもあると思うけど、
ご主人様の趣味を一方的に押し付けられたようなお洋服だと大迷惑だよ。
趣味のいいご主人様が選んでくれたお洋服を気に入っている
ネコもいるけれど、
やたら派手な服を着させられたり、
ありえないような趣味の悪い服を着させられたりと、
散々な話を聞く方が多い。
しかも、お洋服を汚すと、ものすごく怒られるらしい。
勝手に着せておきながら!
お外で遊ぶと、色々な所を走り回るから汚れちゃうのが当たり前だよ。
それなのに、好きでもないお洋服を着せられ、
さらに汚れないように気を使わなきゃいけないなんて大変だね。
「ぼくのご主人様は、お洋服を着せる趣味がなくてよかったにゃ~」
リカちゃんは赤いドット柄のワンピースにふせんをペタっと貼って目印をつけていた。
きっと、この目印をつけたものを気に入ったのだと思う。
それから二週間後、リカちゃんがカナちゃんを連れて、
ぼくのおうちに来た。
カナちゃんはあのカタログに載っていた赤いドット柄のワンピースを着ている。
「カナちゃん、かわいいにゃん。似合っているにゃん」
リカちゃんはカナちゃんを座布団の上に降ろして、バックから積み木を取り出した。
カナちゃんは楽しそうに遊んでいる。
遊びに夢中になっているみたいだから、
今のすきにぼくはもうひと眠りしよう。
《続く》




