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ネコとカタヌキ

「ピンポーン」


 玄関チャイムが鳴った。


「んにゃ~。誰か来たっぽいにゃ~」


 ご主人様は、玄関に向かって歩いて行った。


「こんにちは」


 聞き覚えがある声がしたからもしかして……と思っていたら

やはり子どもたちだったみたいで、玄関には子どもたちがいた。

リビングに入ってくると、子どもたちが駆け寄ってきた。

どうやら何かを見せたいみたい。


「さっき、ぶどうの森に行ってきたんだ。それでね、コレを買ってもらったの」

※ぶどうの森は、石川県金沢市にあるぶどう園。

旬なぶどうが買えるだけではなく、洋菓子、結婚式場、レストランなども併設されている。


 ネコのイラストが描いてあるサイコロの上と下を長くしたような四角い紙の箱を見せてくれた。


「ボクはコレ」


 別の子どもは違うネコイラストが描いてあった。


「ぼくはコレ」


 一番年下の子どもはパンダとネコのイラストが描いたネコだった。

 箱の大きさからからすると、ぬいぐるみが入っているとは思えない。

小さいマスコットであれば入っているかもしれないけど、

それなら箱をあけて中身を見せるよね。

もしかして子どもたちは中身を知らないのかも? 何が入っているのだろう。


子どもの一人が箱をあけると中から箱に描いてあるネコが出てきた。

パッと見た感じはお菓子みたい。厚みがあるから横側を見た。

全体的には黄色と茶色を混ぜたような色で、細い茶色いすじみたいのがたくさん入っている。

色と模様だけを見ていたら切り株みたいな感じ。何コレ?


「それはバウムクーヘンだよ」


 ご主人様が言った。


「バウムクーヘンは本来なら真ん中に穴が開いていて、断面が切り株の形をしたお菓子なのだけど、これはカタヌキができるようになっていて、外側を上手にはがすとネコの形になるんだよ」


「へ〜え〜」


 んにゃ?バウムクーヘンを見ると、ネコの形のラインに沿って切り込みが入っている。

もしかして、切り込みに沿ってはがすのかにゃ。


子どもたちは箱をあけ、ラインに沿ってカタヌキをし始めた。


「肉まん、見て!」


 上手にカタヌキをし、イラスト通りのネコの形になっていた。


「コレ、あげるよ」


 子どもの一人がカタヌキした端っこをくれた。


「ネコの方のバウムクーヘンをくれないの?」


 ぼくは不服そうな目をして子どもを見た。どうやら伝わったみたいで、


「ネコの方はあげないよ。ぼくが食べるんだから」

「端っこじゃなくて、ネコ本体ちょうだい」

「ネコはあげないよ。肉まんはネコでしょ。お友だちは食べちゃダメだよ」

「お友だちじゃないにゃん。それはネコの顔と形をしたお菓子だにゃん!」


 くれないなら子どもが口の中に入れる前に、ぼくが食べるにゃん。

ネコのバウムクーヘン目掛けて子どもたちに飛び掛かろうとした。

するとぼくは突然、首根っこを捕まれた。


「痛いにゃ~ん!」


 後ろを振り向くと、ご主人様がぼくの首根っこをつかんでいる。


「端っこもらえただけでもありがたいと思いなさい。

本来ならそれさえもあげたくありません。きみにとってはよろしくない食べ物だからね!」


 ご主人様に怒られた。


「肉まん、代わりに食べるね。いっただっきまーす」


 子どもたちはネコのバウムクーヘンを食べた。その様子を見ていたぼくは、


「ジュルジュル~」


 食べられないとはいえ、ついついよだれが……。


「肉まん、コレあげるよ」

「何をくれるのかにゃ?」


 子どもが差し出したものは、バウムクーヘンが入っていた箱だった。


「にゃー。ぼくがほしいのは中身だにゃん!」

「きみー。よかったね。かわいいネコの箱がもらえて」


 ご主人様はニヤニヤしている。


「箱なんてもらってもどうすればいいのさ」


 においだけではお腹は膨れない。もっとお腹がすく。


「グ〜」


 さっきごはんを食べたばかりなのにお腹が鳴った。

ぼくは箱を見てため息をついた。

※今回登場したバウムクーヘンは、『まめや金澤満久】の型ぬきバウムを参考にしています。



《終わり》


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