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ネコの悩み

「肉まん。肉まん」


 ぼくを呼ぶ声がした。目を開けて声のする方向を見ると、ミーコがいた。

ポカポカして気持ちよかったからうっかりお庭で寝てしまっていた。


「おはよう。ミーコ」

「おはよう。じゃないわよ。こんにちはの時間よ!」

「んにゃ? そんな時間なのなの。まっさか~。まだ午前中だって……」


 お部屋の時計をチラリとのぞくと13時を過ぎていた。


「あっ。お昼だね」

「まったくもう~。肉まんはいつも寝てばっかりじゃない!」


 ミーコはあきれた顔をしている。


「ぼくは寝るのが好きだし、だいたい、ネコは寝てばっかりの動物にゃん。

だからぼくは、動く必要がないときには寝て、

ムダなエネルギーは使わないようにためておくにゃん」


 そうミーコに言い返したら、ミーコは「まったくこの子はっ」と言う顔をした。


「そうそう。昨日はどうしてネコの集会に来なかったの?」

「昨日の夜は、録画していたアニメを見ていたの。見終わってから行こうと思えば行けたけど、面倒くさかったから」

「へ~え~」


 ミーコらしい理由だった。興味があることにはものすごく飛びつくけど、

そうじゃないことはまったく興味がない。


「昨日はどんなことを他のネコたちと話しをしたの?」


 どうやら、行くのは面倒くさかったけど、どんな集会だったのかは気になったみたい。


「ご主人様とケンカばかりしてうまくいっていない子。

遊んでくれなくなったと言っていた子がいたよ。

それから、エサをケチられ、おいしくないごはんにされたとか、

変な服を無理やり着せされたとか……。みんな色々な悩みやぐちを言っていたにゃん」


 ざっと昨日の話題になったことを言った。


「ふーん。そうなの」


ミーコはやっぱり興味がない話しだったみたいで、

「そんな話、どうでもいいわ」と言う顔をしている。


「ミーコにとってはどうでもいいことかもしれない悩みかもしれないけど、他のネコたちにとっては切実な悩みかもしれないにゃん」


ぼくはそう言った。確かに、


「どうでもいいよ。そんな悩み!」


 と言いたくなるものはあった。

だけど、それぞれの受け止め方や考え方。おうちの事情が違うから、悩みの重さは簡単には決められない気がする。ぼくにとっては重大な悩みなのに、他のネコにとっては


「そんな悩み、たいしたことないじゃない!」


 と言われちゃうことだってありそうだし……。


「ミーコはいいよね」


 ミーコに言った。


「何のこと?」

「だって悩みがなさそうにゃん」


 ぼくは、ハッキリと言った。


「まっ! 失礼ね。そんなことないわよ!!」


 ミーコは反論した。


「だって、ミーコのご主人様はお金持ちだからごはんだって、ミーコのためにわざわざ外国からお取り寄せしているじゃない。それに、おうちにはネコ用アスレチックがあるからいつでも楽しく遊べるにゃん。ミーコの身の回りのことは、不自由なく整っているから、悩みなんてないはずにゃん」


 ぼくはうらやましかった。


「それはそれよ。悩みはあるわ」


 ミーコは当たり前のごとく言った。


「どうせ、贅沢な悩みにゃん」


 と言いそうだったけど、怒られそうだったので我慢して違うことを言うことにした。


「どんな悩みなの?」


「寝たくないのに、無理やり寝かされることよ!」

「それってどうゆうことかにゃ?」

 

 無理やり寝させられるってどうゆうこと? ぼくはご主人様にそんなことをされたことがなかったから分らなかった。


「まだアスレチックで遊びたいのに、もう遅いからと言う理由で寝なさいって言われて、無理やり寝かされたり、まだテレビを見たいのに、テレビも消されちゃうの。それってひどいでしょ!」


 ミーコは不満そうだった。


「それって何時ごろの話?」

「夜の2時か3時よ」

「え? それはそうでしょ。普通の人なら寝ているよその時間。ミーコのご主人様は夜型の生活をしている人ではなかったよね。だったら、ミーコのご主人様の行動は普通だよ」

「そうかもしれないけれど、私が遊びたかったりテレビを見たいのだから、そのままにしておいてくれればいいじゃない」

「そうゆうわけにいかないでしょ。ミーコがアスレチックで遊んでいたら、もの音がするだろうし、テレビをつけていたら、テレビの音だって聞こえるでしょ? 同じお部屋にいるのなら、気になって寝られないにゃん」

「私は遊びたいときに遊びたい。テレビは見たいときに見たい。これのどこがいけないの?」

 

 ミーコは納得がいかない様子。


「もし、ミーコがご主人様の立場だったらどう思う? 眠たいのに音が気になって寝られなかったら……」


 ぼくは、ミーコのご主人様の立場になって考えてみるようにミーコに言った。


「それはいや!」

「それならご主人様の言うことを聞くべきだにゃん。人がいやがることをしちゃだめにゃん!」

「もう、分かったわよ。肉まんならそう言うと思ったわ。じゃあね」


 ミーコは、ぼくが言ったことを聞いて、どう思ったのかは分からないけど、もういいみたい。


「さぁ。ミーコも帰ったことだし、もうひと眠りするにゃん」


 ポカポカ日差しを浴びながら眠った。


 数時間後……。


「さ、寒いにゃん」


あまりの寒さに目が覚めた。辺りを見ると暗くなり、風が吹いていた。


「しまった。寝すぎてしまったにゃ!」

 

 こんな所で寝ていたら、風邪をひてしまうかもしれない。

冬は日が短いからすぐに寒くなるし暗くなってしまうことをすっかり忘れていた。


「クシュン」


ぼくはクシャミをした。


「またやってしまったにゃん」


何度もこんなことをして風邪をひきそうになったから、あわてておうちの中に入った。

そして、コタツの中にもぐりこんだ。


「あったかいにゃん」


 ぼくはコタツのあたたかさでまたウトウト始めた。確実に眠くなるパターンだった。


「スピピ~。スピピ~」


 案の上、ぼくは寝てしまった。


 しばらくたって、


「痛いにゃ!」


 ぼくは誰か蹴られて起きた。コタツの中から外へ出ると、

ご主人様と目があった。どうやら、犯人はご主人様みたい。


「きみは、さっきまでコタツの中で、寝ていたでしょ。そんなことをしていたら、だからこうなるんだよ。ふふふふ」


ご主人様に笑われてしまった。まるで「蹴られてしまっても仕方がないよ」みたいな言い方だった。

 これってぼくが悪いの? 違うんじゃない?? ご主人様がよく見ないからいけないんでしょ。


「きみはどこでも寝ちゃうからさっきみたいに蹴られたり、お外で寝てしまって風邪をひきそうになったりしているよね。気をつけないと危ないよ」


 もしかして、ぼくの悩みはどこでも寝てしまうことかもしれない。

これからは、ちゃんと場所を考えなくて寝ないと……。

外で寝て風邪をひいたり、ぼくがいることに気づかず、誰かに蹴られてケガをしたら病院に行かないといけなくなる。そうなったら、ご主人様に迷惑をかけてしまうかもしれない。

 ぼくの悩みは太りすぎていることだけだと思っていたけど、それ以外にもあったんだね。

知らず知らずのうちに迷惑をかけている。これだとミーコのことは言えないのかもしれない。


 だけど、食べるのもお昼寝もあたたかいところも大好き。当分はやめられそうないにゃん。

ぼくはまたコタツにもぐりこんだ。


《終わり》



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