ネコと子イヌ5【前編】
「ワンワンワンワン」
外から聞き覚えがあるイヌの鳴き声が聞こえた。
「ピンポーン」
玄関チャイムが鳴った。
「んにゃ? もしかして……。」
ご主人様が玄関に向かって行った。
「ガチャ」
玄関が開くと
「ワンワンワンワン」
リビングから顔をひょっこりと出して誰が来たのか確かめると、
子イヌのえりかとつとむ君の姿が見えた。
ぼくが見ていることに気づいたえりかは、
「肉まん!」
だっこされているつとむ君から飛び降り、リビングに向かって走ってきた。
「え?」
ぼくはその速さにビックリして怖くなり、慌てて首を引っ込めた。
その間、
「ワンワンワンワン」
鳴きながらどんどんえりかは迫ってくる。分かっていても身体は動けなかった。
そしてものの数秒でぼくがいるリビングにたどり着き、
「肉まん。ひさしぶりー」
勢いよくぼくにぶつかってきた。
「痛いにゃん!」
毎度毎度、ぶつかると痛いのはいつもぼく。
えりかの方が軽いはずなのに、ちっとも痛そうじゃない。
「何で?」って思う。
えりかは、ご主人様のお友だちのつとむ君が飼っている小イヌ。
さびしがりやで、一人にすると鳴いちゃうし、
今みたいに、誰かに会うことが分かると興奮して鳴くこともある。とにかくよく鳴く。
大抵、えりかが来るときって、
えりか以外の人たちが困っていることが多い。
きっと今回も何かあったに違いないにゃん。
「えりか、元気そうだけど、身体の具合が悪いんだって?」
ご主人様は言った。
えりか、具合が悪いの?
「この前、検診に行ったら肝臓の数値が高くて薬をもらったんだけど、なかなか飲んでくれなくて。薬を飲ませたいんだけど……」
どうやら薬を飲ませるため連れてきたらしい。
けど、えりかのおうちからぼくのおうちに場所を変えたくらいで飲んでくれるのかなぁ。
「とりあえず、いつもの方法で試してみようか。環境が変わればえりかも何か変わるかもしれないし」
すると、つとむ君は持ってきたバックからえりかのごはんらしきものを出してきた。
食べ物に混ぜるっぽい。
えりかには分からないようにキッチンでごはんといっしょにまぜた。それをお皿に入れて運んできた。
「えりか、ごはんだよ」
すると、ぼくのネズミのおもちゃで遊んでいたえりかはすぐにつとむ君にかけより、
運んできたお皿をえりかの前に置いた。
「いただきまーす」
ムシャムシャ食べていた。うまくいっているじゃない。これなら大丈夫かも……ん?」
「ペッ」
えりかは薬だけ吐き出していた。
「やっぱりダメだね~」
つとむ君は言った。
そんなのに、ひっかからないわ! と言わんばかりに見事に薬だけを避けた。
「いつもこんな感じなんだよ。は~」
つとむ君はため息をついた。
「じゃあいつもはどうやって飲ませているの?」
「食事のときに薬を混ぜるんだけど気づかれちゃうから、食べ終わったときに薬を飲ませる。それが分かっているからえりかには逃げられる。だから追っかけまわして、えりかを捕まえて口を開けて飲ませている。毎回こんな調子だからいつもヘトヘトだよ。指をかまれそうで怖いんだ」
えりかならやりかねない。怖いよね。
「じゃぁ次は、おやつに入れてみようか」
ご主人はそう提案した。
「おやつに入れてもいっしょなんじゃないの?」
「錠剤だからバレちゃうのかも。粉々にして粉末にした分からないかもよ」
「えりかのおやつってどんなものをあげているの?」
「最近は、さつまいも味のペーストだよ」
「それなら混ぜたら分からないかも」
ご主人様は薬を砕き、ペースト状のおやつに混ぜた。
見た目はぜんぜん分からない。コレならバレないかも。
※薬によってはこの方法を実践してよいものといけないものがあります。
実践する場合は粉々にしてよいものなのかどうかを確認して下さい。
《続く》




