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ネコとおうち遊び

「ピンポーン」


 玄関チャイムの音が鳴った。


「んにゃ~。誰か来たっぽいにゃ~」


 ぼくといっしょにリビングでテレビを見ていたご主人様は、玄関に向かって歩いて行った。

 すると玄関からさわがしい声が聞こえてきた。


「この声はもしかして……」


 リビングから首を出し、聞き覚えのある声が玄関から聞こえてきた。

子どもたちがいた。子どもたちと目が合うと、


「タッタッタッタッタッ」

「肉まん!」


 子どもたちは、ぼくの名前を呼びながら廊下を走り、猛スピードでこちらに向かってくる。


「んにゃ!」


 ぼくはビックリした。いつもだったらそんなに急いでリビングに入ってくることはないし、明らかにぼく目当てで走っている。

怖くてたまらない。まるで、獲物を見つけたときみたいに急いで確保するような速さだったから。

いったいどうして。


 あっという間に子どもたちがリビングに入ってきた。


「肉まんみーつけ」


 子どもたちはどんどん近づいてくる。恐怖はさらに大きくなっていく。一人じゃなくて三人という人数もぼくにとっては怖い。恐怖のあまり、ぼくは動けなくなっていた。


せめて


「にゃー」


 と威嚇のために泣いたけれど。けれど、効果はなく、子どもたちは容赦なく近づいてくる。

ぼくは悲しくなった。子どもたちが止まる気配はない。


子どもたちは、ニコニコしながら近づいてくる。

それがさらに怖い。

残り、ぼくと子どもたちとの距離が2メートルとまできたとき……。


「はい。そこまで。肉まんに触るのは石鹸でキレイに手を洗ってから!」


 ご主人様はそう言った。


 すると、子どもたちはくるりと振り向き、手を洗いに行った。


「あー。助かった。ありがとう。ご主人様ー!」


 とぼくは心の中で言った。

それにしても、さっきの子どもたちの態度はなんだったのだろう。


 手洗いをした子どもたちがリビングに入ってきた。

さっきまでの態度とは打って変わって、手洗いをして落ち着いたのか、

いつもの子どもたちに戻っていた。


「肉まんに見せてあげるよ」

「んにゃ?」


 ぼくは子どもたちに近づくと、子どもたちは背負っていたリュックサックを降ろし、

中身を取り出した。

すると、中から布でできた20センチくらいのイヌやゾウなど動物の人形とボールが出てきた。


「これでボーリングをするんだよ」

「ボーリング?」

「この布のボールをころがして、動物さんのピンを倒すの」

「へ~え~」


 子どもたちは動物の人形を並べると、ボールをころがした。

6個並べたうち、2個が当たって倒れた。


「面白そうだにゃ~」


 次の子は、転がしたのに、どれも当たらなかった。


「にゃにゃ」


 うまくないにゃん。ぼくは思わず笑った。

 すると、当たらなかったのは、勢いがないからだと考えたのか、思いっきりころがした。

ころがしたボールは勢い余ってぼくの方へきて、逃げる間もなくぼくに当たった。


「痛いにゃー」


 それを見ていた子どもたちは大笑いをしていた。ひどいにゃ~。痛いし。笑われたにゃん。



「次はこれで遊ぼう」

 

 おもちゃが入っている箱を持ってきた。箱には、


「ネコ危機一発」


 と書いてある。


「ネコ危機一発。なにそれ?」


 箱には、タルの中にネコが入っている写真が写っていた。

子どもたちは箱から、タル、人形、小さい剣を取り出した。


「コレはね、タルにネコの人形をいれるの。タルには細い穴が開いているから好きなところに小さい剣をタルにさす。すると、どれかの穴をさしたときに人形が飛び出て来るんだよ」


「へ~え~」


 ドキドキするおもちゃだにゃん。


 子どもがタルの中に人形をセットして準備完了。

誰が最初にさすのかを決めて始まることになった。


 最初にさす子どもは、怖いのかゆっくりと剣を刺した。

すると、人形は飛び出てこなかった。

次の子どももさしたけど、なにもなかった。それが3周ほど続いた。

なかなかさしても出てこない。


「なーんだ。出てこないじゃない。いや、次こそ飛び出てくるかも!」


 と思っていたけれど、次のターンも飛び出てくることはなかった。


「いやいや。次のターンだよ」


 ドキドキしながら見ていたけど、変化なし。

 もしかして、ちゃんと奥まで剣をさしていないんじゃないのかにゃ?

それとも、タルに人形をセットするとき、説明書通りにセットをしなかったからじゃない?

それか、子どもたちがこのおもちゃを遊びすぎて、タルの反応が悪くなったのかなぁ。


ぼくは気になってタルに近づいた。

そのときだった。子どもが剣をさすと


「ピョーン」

 

 タルの中に入っているネコの人形が勢いよく飛び出した!!


「にゃー!」


 ボクはビックリして悲鳴を上げた。

その様子を見ていた子どもたちは大笑い。

ひどいにゃ。さっきも笑われたし、今も笑われた。


その後、子どもたちはご主人様が用意したおやつを食べていた。


「ご主人様~。ぼくもおやつ食べたいにゃ~。それか、子どもたちの相手をして体力を使ったからちょっと早いごはんでもいいにゃ~」


 と思っていたら、


「コトン」


 目の前には、『ネコセレブ』の缶詰が置かれた。


「『ネコセレブ』だにゃ。コレを食べていいの? 嬉しいにゃん!」


 普段はなかなか食べることができない高級キャットフードの『ネコセレブ』

でも、なんでくれるの?

 ぼくは『ネコセレブ』を運んできたご主人様を見た。


「コレはね、子どもたちのお母さんがくれたの。新型ウイルスが流行っているから

子どもたちが外で遊べなくて、ストレスが溜まっていてね、

うちに来たくって仕方なかったんだって。肉まんと遊びたいって。

で、きみと会える嬉しさからいつも以上にきみを疲れさせちゃうかもしれないと思って特別にくれたの」


 そうなんだね。確かに今日は疲れたにゃん。

だから、ぼくの顔を見て子どもたちは廊下を走り、猛スピードでこちらに向かってきたんだね。

子どもたち、かわいそうだけど、今は辛抱だにゃん。もう少ししたら、新型ウイルスも収まるはずだにゃん。


 ご主人様はネコセレブの缶を開けてくれて、ぼくのお皿に出してくれた。ぼくはムシャムシャ食べた。相変わらずおいしいにゃ~。



 子どもたちは帰ることになり、おもちゃを片付けリビングを出た。

玄関まで見送ると、


「じゃあね。肉まん」


「グシャグシャ!」


 子どもたちはぼくの整った毛並みを思いっきりかき立てた。


「にゃー! ぼくの毛並みが乱れたにゃん!」


 子どもたちは満足した顔をして玄関を出た。

いつもなら怒りたいところだけ、『ネコセレブ』がもらえたし、子どもたちもストレスが溜まっていたみたいだから特別に許してあげることにした。


「気をつけて帰ってにゃ」


 ぼくはそう思いながら見送った。 



《終わり》


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