マザー 2
母が壊れる前から母が好きだった私は、人に見つからぬように部屋を抜け出しては母の部屋を訪ね添い寝をしてもらっていた。
誰も知らない母と二人だけの秘密。
だからあの女も知らず私と母が寝ている部屋に男を向かわせ襲わせようとした。
大人しい母なら抵抗せず暴行されると思ったのだろう。
母だけならあの女の通りになっただろう、けれど私がいた。
私を守るために母は枕元に隠してあったナイフを取り男に突き刺した。
非力な女の力でも油断していた男は避けることもせず深々と刺さったナイフを引き抜くと母に襲い掛かった。
転がるナイフを取り男に止めを刺したのは私。
母を押し倒し今にも殺そうとしている男の首にナイフをつき立て引いた。
もがき悲鳴をあげながら横に倒れた。
騒ぎを聞きつけた使用人が明かりを手に扉を開けた。
照らされる光の中ベットの上では傍らに事切れた男を見ることも無く虚空を眺め悲鳴を上げる母。
その姿のなんて美しい事か。
鮮血が散る中母だけは真っ白なままで、きっと心も真っ白になったんだ。
それはとても素晴らしいことで母をこの世界の辛さから開放してくれたんだ。
それから母は離れに移されよりひっそりと暮らす事になった。
私が男を刺し殺した事で騎士に向いているのでは無いかとあの女が言ったため騎士になることになった。
私も強くなるために異論はなかったのでそのまま騎士団見習いになり騎士になることが出来た。
何処からか伝わったのか私が幼い頃人を殺したのが伝わったのか私の周りに近づく者は居なかった。
母以外どうでもいい私だったが母を守るためには情報も必要だと裏で生きる人間とばかり知り合いになった。
私が騎士として地位を確実にしつつある時にある情報が伝わってきた。
聖女が代替わりすると。
次の聖女は聖騎士である人物だけが知ることができる。
が、白銀の髪と紫色の瞳をしているらしい事だけはわかっているらしい。
珍しいが居ないわけではない。
けれど心の美しい人間しか聖女にはなれない。
神に罪など知られてしまっているから。
もしも母が聖女だとしたら神殿につれて行かれ会えなくなってしまう。
悪い噂があるから聖騎士が来ることはない。
そう思っていても母が聖女でない事を願うしかなかった。




