表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
82/104

81 妖狐復活

『ビーストファンタジー4』は『ビーストファンタジー3』の十年後のお話。


 だから時系列的にも繋がっていて、前作に出てきた場所にも普通に歩いていくことは可能。

 まあ、普通に歩いていったら時間がかかりすぎるから聖獣モードになって突っ走っていくんだけど……。


 ついた。

 そしてやっぱりあった。


「白玉天狐の封印石……」


 現在俺の目の前には、小山と見違えるような巨石が聳え立っている。

 帝国から遠く離れた別大陸の一角だが、ここはかつて『3』のラストダンジョン『無限の迷い館』があった跡地だ。


 今はもう巨石以外何もないが。

 天獣・白玉天狐の大妖力で次元を歪め、亜空間内に形成されたダンジョンは、主を失った今存在を保てず消滅。

 今は天狐当人の成れの果てとなった巨岩があるばかりである。


「この岩に白玉天狐が封じられてるんだよな……!?」


『ビーストファンタジー3』のラストを思い出せばそのはず。


 何となく人類を滅ぼそうとした白玉天狐は、それを阻止せんとする救世の勇者ライガと、そのライガ恋しさに裏切った分身クズハのラブラブパワーによって敗北。

 封印されるに至った。


 見上げるほどに巨大なこの岩は、白玉天狐を封じる要石。


 この岩の中に閉じ込められているのか、岩の下に押し潰されているのか知らんけど……。


 とにかく、俺の望みを聞いてもらうためにも封印を解くのは避けられないだろう。

 ……。


「……果たして大丈夫なのだろうか?」


 平和を得るためとはいえ、かつて人類を滅ぼしかけた大天獣の封印を解いて世界に解き放つ。

 甚だしい本末転倒を感じないわけでもない。


 しかしセロとライガ、思い詰めた二人を救うには、二人の共通の大事な人を冥府から呼び戻すしかない。

 俺個人の安泰のためだけじゃない。


 今こそクソ制作者によって歪められたキャラの未来を正しく導きなおすのだ!


「よし! 解いてやるぞ! 最悪の邪神、白玉天狐の封印を!!」


 やってることがほぼ悪役。

 まあ俺、最初から悪役なんだからいいんですけど。


『聖獣術式<鼠祢裂神獣(そねざきしんじゅう)>ッ!!』


 いきなり放つ聖獣モードの最終奥義。


 空間すら削り取る魔鼠の歯が、巨岩を容赦なく削り、真っ二つに両断する!


 ……と思いきやならなかった。

 傷が入ったことには入ったが、彫刻刀で削った程度の浅い傷。


『さすが大妖狐を閉じ込める封印……。簡単には砕けないか……!?』


 いや、俺の最強技で浅い傷しかつかないって滅茶苦茶なんですが、本来なら。


『なら完全破壊できるまで何回でも繰り返すまでだ! 聖獣術式<鼠祢裂神獣>ッ!!』


 さらに空間を削り取る防御不能の一撃を繰り出す。


『<鼠祢裂神獣>ッ!!  <鼠祢裂神獣>ッ!!  <鼠祢裂神獣>ッ!!  <鼠祢裂神獣>ッ!!  <鼠祢裂神獣>ッ!!  <鼠祢裂神獣>ッ!!  <鼠祢裂神獣>ッ!!  <鼠祢裂神獣>ッ!!  <鼠祢裂神獣>ッ!!  <鼠祢裂神獣>……ッ!!』


 普通なら『ラスボスの封印解くなんて、よい子は真似しないでね!』という注意書きを入れておくところだが、むしろ『こんなの誰が真似できるんだよ?』と返されて終わる。


 大抵の相手なら一発当てるだけで必殺できる究極技を、数重ねて当てないと壊せないなんて……!?


 でもその甲斐あって、やっと封印石に大きな亀裂が走った。

 もう一息だ……!?


『聖獣智式<鼠祢裂神獣>ッ!!』


 渾身の最終攻撃で、封印石は見事に割れた。


 めちゃ硬かった。

 まあこれぐらいでないと大妖狐を封印するには足らないんだろうけど……!


 改めて『とんでもないことをしているんではないか?』という気分が湧き上がってきた。


「大丈夫だよな? きっと……!?」


 聖獣モードを解きつつ、成り行きを見守っていると……。


「……ッ!?」


 いきなり俺自身に急激な変化が!?

 なんか浮遊感が出てきたなと思ったら、なんか地面がなくなってる!?


「おおおおおおおおおおおおおおおおッッ!?」


 そして俺は真っ逆さま。

 落下。


 さっきまで俺はたしかにしっかりとした地面に立っているはずなのに、突如俺の足元に穴が開いて、吸い込まれるように落下。


 まるで空間を自在に操られる者の罠にはまったかのようだった。


 そんなことを考えている合間も、なおも俺は落下中。

 ただ落下しているんじゃない。重力を制御されているのか、聖獣モードになって落下速度を抑えようとしても全然手応えがない。


 この分じゃたとえグレイリュウガのように飛行能力を持っていても抗いようがなかったろうな……。


 そうして落下の挙句……。


『んぐえッ!?』


 やっと止まった。

 底にぶつかったということだが、聖獣モードで強化されてなかったら間違いなく潰れたトマトだったな……!?


「随分下まで落とされたな? どこ? ここ……?」


 落下の視点が地表だったことを考えたら、地下ってことかな?

 だとしても落下時間を考えたらかなり地下深いぞ?

 地獄の底なんじゃなかろうな?


『春咲く花を手折り持ち……』


 ッ!?

 今、物凄い寒気が……!?


『万の年を恋わたる……。その想い、そなたは愚かと断ずるか、否か?』


 呼びかけられて気づいた。

 俺の目の前に、恐ろしい天獣がたたずんでいた。


「これが……白玉天狐……!?」


 獣神ビーストすら凌駕するという究極存在……!?


 キツネとは言うが、その姿は美女だった。

 齢千年を生きたキツネは変化の術を得ると言うが、目の前の妖美人はまさに変化の究極というべき、息も忘れる美しさ。


 金色に輝く髪は長くしだれ落ち、全身の肌の白は処女雪にも勝る輝かしさ。


 平安時代の十二単にも似た衣装をまとっているのは、キツネというキャラ性で東洋感を出そうとしているのだろうか。

 しかし着付けに厳密に拘っているわけではなさそうで、着崩した隙間から覗き見える太ももや胸元が艶めかしい。


 そして何より妖狐のシンボル。

 尻から伸びる尻尾は九本もあり、これも伝承の通りだが、そのキツネの尾が凄まじく大きい。

 本体である美女の体格など遥かに超えて、尾一本の大きさがまるで大蛇のようだった。

 いや龍? と言えるくらい大きい。


 それが九本。

 シルエットクイズしたら九尾のキツネって言うより八岐大蛇と回答する人の方が多そう。

 それくらいの尻尾スケール!?


『……おい』

「ッ!?」


 あまりに圧倒されていたら、天狐様よりお声がけが?

 声音がめっちゃ不機嫌そう!?


『わらわより問いかけられたら疾く答えぬか。万世の想いは虚しからずや? からざるか?』

「想いが虚しいということはありません!!」


 俺答える。

 そして答えながら確信する。この問答、選択肢を誤ったら即デッドエンド。それ系。


 アドベンチャーゲームでよく迫られた状況だが実際なのは初めてだ。

 そして改めてその理不尽さを実感する。


「想いは必ずや通じます! 俺もそれを信じるからここまで来たんです!」

『…………』


 天狐様、無言。


 どういうこと? 俺選択肢間違えた?

 命がボッシュート?


 混乱し怯えていると、美女キツネはニッコリと朗らかな笑顔を浮かべ……。


『その通りじゃ、通じぬ想いなどありはせぬ。わらわもそれを信じて幾千年と想い続けておる。気が合うのう、ぬしとは』

「あざっす!」


 ……辛い。

 白玉天狐の放つ妖気に、ともすれば呼吸を忘れ、気が遠くなる。

 心掛けないと呼吸が止まるなんて初めての経験だ。


 俺もたぬ賢者の下で修行し、智聖術を学んで、聖獣モードを使いこなすまで至ったがが、それなのに白玉天狐の前では縮み上がるしかない。


 皇帝の前では不遜でいられるのに!


 そんな俺を見て、絶大なる妖狐はコロコロと笑って……。


『畏まらずともよい。忌々しい封印よりわらわを解き放ったのは誰か、明敏なるわらわは察しておる。恩人に無下するわらわにあらず』

「そ、そうですか……!?」

『答えのしくじりぐらい一回程度は見逃してやるわ』


 じゃあ二回間違ったらどうなるんですか!?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] まさか、最近無人島で商売始めてそうなどこぞの たぬ畜生の招待もイケメンという可能性が…?
[一言] そうなると天狐ってセロ君のおばあちゃんのようなもんなのかな?
[良い点] 間違えたら責任取って婿入り
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ