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22話 転生特典?

「へぇ。あんたが未来が見える異世界人か。

 俺はジャミルよろしくな」


 言って現れたのは短髪茶髪の気の良さそうな青年だった。

 作中でもでてきた暗殺者ギルド員のジャミルだ。

 わりと好青年っぽい感じの茶髪の美形である。


 あの後。

 結局、「私に囮になってもらうかもv」と、語尾にハァトを付けてそうな感じで微笑まれた。

 なんでも、イフリートの部隊の奇襲を考えると、そろそろ行動を起こさないとダメとかで、強硬手段に出ることにしたのだ。


 人を容赦なく囮にするとか、エグイ。流石鬼畜はやることがエグイ。


 旦那様には公爵家に密偵が紛れ込んでいるのはマルクの方から話は通すそうだ。


 私は囮になるのだから、ある程度護身術を学んでほしいと、紹介されたのがジャミルだったのである。


 ちなみにジャミルには未来の見える異世界人ということで話が通っているらしい。


「はい、宜しくお願いします」


「に、してもあんたも大変だな。

 あんなのとずっと付き合ってるんだろ?」


 ジャミルが腕を組みながら言えば


「あんなの?」


「あの腹黒商人だ。

 まったく大したもんだぜ。

 こっちが逆らえないようにガッチガチに条件を固めてきやがった」


 言って腕を組んで憮然とした表情になる。

 ……うん。想像できて、なんだか怖い。


「貴方なら、逆らう術もあったのでは?

 よく受けましたね」


 私が言えばジャミルはポリポリ頭をかいて


「まぁ、あんたは大体知ってるんだろ。

 紅蓮の炎の連中に一泡吹かせてやることができるらしいからな。

 悪くない話だからな。今の幹部連中にはこっちも恨みがある。

 邪魔できるってなら、こっちも願ったりかなったりだ」


 言って微笑む。

 そう、作中ではジャミルは紅蓮の炎という暗殺ギルドの一員だった。

 だが死んだ先代の意思に反した新たな紅蓮の炎の幹部とそりがあわずに抜け出してきたはずだ。

 ジャミルもジャミルなりに思うところがあるのだろう。


 作中では全く触れられなかったが、ジャミルとマルクもお嬢様とロゼルトがイチャイチャしていた時期、屋敷の密偵を探っていたのかもしれない。


 私がそんな事を考えていれば


「んじゃ、ちょっとお手並み拝見っと」


 と、ジャミルがお気軽にいいながら私ににっこり微笑み――いきなり切りかかってくるので私は身を交わす。


 って何するかな!?危なっ!!

 鬼畜といいジャミルといい、この世界の男って女に切りかかってくるルールでもあんの!?


「うん。遅いな。

 鍛錬怠ってただろう」


 何事もなかったかのように、剣を片手にぽんぽんと叩きながら言うジャミルに、私はため息をついた。


「そ、そうはいってもメイドが鍛錬していたら不審に思われるでしょう?

 それに私は毒物専門ですから。

 あまり戦闘は得意じゃありません」


「そりゃまぁそうだが。

 こりゃ短時間でどうなるレベルじゃねーな。

 飛翔の翼の暗殺者っていうからもっと出来るのかと」


 言ってジャミルは頭をぽりぽりかいて、私を上から下まで見たあと。


「魔力高いんだろ?

 そっちでカバーしたほうがいいかもしれないな」


 と、ジャミルが顎をなでる。


「あんたに戦闘は期待してない。

 自分の身を守る事に特化してくれればいい。

 魔力が高いならバリアも張れるんじゃねーの?」


「魔法ですか。そういえばまだ使ってませんね」


 鬼畜に魔力が高いとは聞いてはいるがそういえばまだ使ってない。

 屋敷の中では余り目立つ事をしたくないし。

 こうやって休みをとって屋敷外に出てこれるのもせいぜい半日までが限界。

 それも王都だから出来ることであって、セバス達のいる屋敷では怖くてマルクさんの屋敷に長居するなんて無理だし。


「んじゃいっちょ、どれくらいか試してみようか。

 あそこにいる虫を殺してみてくれ」


 言われて私は頷いた。

 小さい虫を殺す程度の魔法なら平民でも使えるからだ。

 リンゼの時もよく使ってた。

 まぁ本当に小さな虫程度なのだが。


 私は詠唱し、飛んでいる虫めがけ魔法を発動し――



 どっごーん



 虫もろとも。あたり一面が爆発した。


 そりゃもうすごい勢いで。


 鬼畜の家の中庭だったその場所に小さなクレーターのような土のエグレができあがる。

 私とジャミルの位置も爆風はきたが、この世界、魔法を放った人は魔力障壁なる防御壁が出来、術者とその周りのものを守るので、私と隣にいたジャミルはなんとか無事だった。


 しばし続く沈黙。


 遠くではなんだなんだ!とマルクの家の使用人達の声が聞こえる。


「……悪いな、これ、俺の管轄外だわ」


「すみません」


 悟ったような目で言うジャミルに私はトホホと謝るのだった。

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