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21話 現状把握

「それでは現状を確認しましょう」


 マルクさんの王都の館で優雅にティーカップをもって語りだした。

 あれから私は鬼畜にデートをしようと誘われて食事をしたあと館に来ていた。

 もちろん偽装デートでマジデートではない。断じて。


「状況整理ですね」


 私が言えば鬼畜が頷く。


「まずグエン様は国王派です。

 そして対立しているのは第一王子ガルシャの母の家ロティエン家。

 元々ガルシャ王子の母は現国王、ラルシャーナ・バル・ランディリウムの実の兄セントルイア様の婚約者でした。

 ですが婚約の儀をすませ子供を作る前に病気でお亡くなりになってしまった。

 慌てた王子派は、現国王の妻として無理矢理推挙して妻に迎えさせたのです。

 国王陛下もその頃はほとんど後ろ盾が少なく、断る事もできなかった。


 ですが現国王は優秀な方でした。


 数々の実績をあげ小国だった我が国を豊かにし。ロティエン家が口出しできないほど力をつけたため、派閥ができあがりました。

 現国王が王子時代から仕えていた国王派と、国王の兄君を支持していた王子派です。


 もし、国王派のグエン様の娘であるリシェル様が聖女だった場合。

 危険分子の王子派は神殿に一掃されるでしょう。

 それを恐れての犯行かと思われます」


 言ってコトリとテーブルにティーカップを置く。


「ただ疑問点もあります。

 まず、何故神官すら知らぬ聖女がリシェル様と知っているのか。

 それも犯人側の行動からするに、リシェル様が生まれる前から知っている節があります。

 それなのに、リンゼの知る世界では聖女なのに殺してしまっている。

 これは何故でしょう?」


 言って窓際で私を見つめてくる鬼畜。


「物語では王子の独断で行動したといっていましたが」


「それでも公衆の面前で裁いたのですよね?

 ここまで入念に物事を準備する人物が王子の蛮行を予想できないとは思えないのですが。

 それがマリアの誘惑で操られていたとしてもです。

 リシェル様を殺すのは、マリアが聖女の力を使えなくなると同義です。

 マリアの不利益にしかならない。

 誘惑をされているなら全力で止めるでしょう」


 鬼畜の問いに私は考えて


「考えられるとすれば――お嬢様が聖女と知る人物は、本当の聖女の秘密を抱えたまま途中で死んでしまっている、くらいしか想像がつきませんけど……」


 私が言えばマルクは顎に手を添えて


「何かそのあたりの記述はなかったのでしょうか?」


「ないです。まったくないです。作者がいい加減なのかそこらへんスルーでした」


「本当ですか?」


「そんな意味不明な事で嘘を付いても仕方ないじゃないですか。

 こっちだって命かかってるんですよ?」


 私がむくれて言えば鬼畜は「これは失礼」と営業スマイルを浮かべ


「では質問を変えましょう。

 マリアを娘として迎え入れた貴族は位が低かったと聞きますが。

 これは間違いはありませんか?」


「はい。確かそうでした」


「位のあまり高くない人物が神殿にまで影響力をもてるとは考えにくいですね。

 神殿がうちのような小国の位の低い貴族を相手にするとは思えません。

 紅蓮の翼を雇い、神殿の一部さえもとりこんだとなると、それなりの資金力が必要です。


 今までの情報から考えるならば、主犯はロティエン家と考えるべきかと。

 ロティエン家を調べてみたのですが領主がクロム様になったとたん、投資が成功を続けています。

 何かしら未来予知の力を身に付けているのかもしれません。

 彼ならグエン様に個人的も恨みもありますからね」


「恨み?」


「はい。ラチェル様を巡ってグエン様とロティエン家当主のクロム様が争っていました。

 学園では有名な話です。

 彼はグエン様を敵視していましたから」


「学園なんてあるんですか?」


 私は思わず聞き返す。作中でそんな話なかったように思うけれど。


「はい。貴族が通う学園です。

 魔力の高い平民も通うことができますが、学舎は別ですね。

 本来女性が通うところではないのですが……女性でも魔力が高く本人が希望しているなら通うこともできます。ラチェル様も通っていました。


 ですから、犯人はロティエン家として、私たちは調べています」


「……たち?」


 語尾が複数系だったので思わず聞き返せば


「ジャミルに調べてもらっています。

 彼も元々紅蓮の翼の一員ですから。ギルドの行動を把握していますから話は早い」


「現状怪しいのは20人」


「多いっ!?」


「いえ、人事権を握るセバスがいるのにこの人数は少ない方かと。

 恐らく発覚を恐れて必要最低限の人数にしていると思います。


 ジャミル達の調べでは騎士達の方は大丈夫だそうです。

 騎士の人事権はセバスはもっていませんから」


 窓際で言うマルクに私は用意されたお茶を飲みつつ


「意外です。騎士の中にも密偵がいるのかと」


 と、答えた。

 普通こういうのって騎士も味方につけておいたほうがいいと思うのだけれど。


「騎士は領主との間に『血の誓い』を結ぶ可能性があります。

 貴族間で結べる絶対忠誠の呪いの誓いです。

 これを結べば、忠誠を誓った部下は主に逆らえません。

 ですので、ごく稀にではありますが、戦地で窮地に陥った時など裏切らないように強制的に結ぶ場合もありますので。

 血の誓いを結べば、主に不利益な情報は全て提示しなければいけません。

 下手をすればそこから発覚する恐れもあります。

 必要がないのなら無理に引き入れる必要もないでしょう」


「そんな便利なものがあるのになんでセバスとは結んでないのですか?」


「セバスは先代と結んでいましたから。

 改めて結ぶ必要もなかったのかと。

 ですが、セバスも貴族です、もう一度結ぼうと思えば結べます。

 それを考えると、セバスもそれほど重要な情報はもっていないでしょう」


「じゃあ、どうするのでしょうか?」


「そこで貴方の出番です」


「……物凄く嫌な予感しかしないんですけど」


「ご明答。予感はあたっていると思いますよ?」


 ……ですよねー。


 ニッコリ微笑む鬼畜に、私は乾いた笑いを返すのだった。


誤字脱字報告&ポイント&ブクマありがとうございました!!!!


以下言い訳というネタバレになります。苦手な人注意。


本編では、リシェルとロゼルトの恋愛を主軸にしたかったのでバッサリ省いてしまった真相編です!一応本編でもマルクさんが頑張ってましたorz

これやり始めちゃうと恋愛いつはじまるんだ!になってしまうので、カットさせていただきました;;

改正版ではちゃんと本編で触れようとおもいます。

改正版書くとしたらここらへんもリシェルが頑張らないとリシェルの出番がなくなってしまう……主役がマルクに……><;

改正版は本編とは別物と考えてちょっと構成かえてロゼルトも一緒になるように時系列変えたほうがいいのか考え中です;;

それともさらっと触れるだけにしようか、ちょっと迷ってます。

主軸が恋愛だから難しいorz

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