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俺は異世界の潤滑油!~油使いに転生した俺は、冒険者ギルドの人間関係だってヌルッヌルに改善しちゃいます~  作者: あけちともあき
102・婿修行だ!

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105・求めよ、精のつく食材 第319話 そもさん、説破!

「そもさん! 精のつく食材!」


「説破! 牡蠣でしょうねえ」


 至高神の神殿まで行ってサルシュを見つけたので、すぐさま問答を仕掛けてみたらサクッと返答が来た。

 やっぱり牡蠣ですか。


「牡蠣はほろ苦い海の珍味です。生牡蠣であれば、柑橘の汁を乗せたものをつるりと飲んでしまうわけで、それはもう素晴らしい喉越しなのです」


「喉越し!!」


 まだいた!

 喉越しで美味を語る人物!!

 まあ、トカゲも丸呑みしたりするもんな。


「あ、ですがワタクシ、焼き牡蠣などはしっかり咀嚼いたします」


「あっ、やはり」


「サルシュ高司祭、美食伯、お二人で何をなさっているのですか」


 通りかかったのは、ゴールド級パーティ、グローリーホビーズのリーダーにして王弟デュオス公爵の第一子であった男、ツインである。

 属性多いな。

 彼も近々、慈愛神の神官であるゴールド級冒険者、ルリアとの結婚を控えているらしい。


 ちなみに、僕が結婚したあの式のお陰で、アーランは空前の結婚ブームが起こった。

 あちこちでカップルが結婚し、さらに結婚に憧れて付き合い始める男女がもりもり出た。


 その結果が出始めるのが今という頃合いである。

 なお、僕と同郷である地球生まれの異世界転移者シズマは……。

 ちゃっかりアーシェを妊娠させたらしく、そんなこんなでグローリーホビーズは開店休業状態になっているということだった。


「実はですね、ツインくんにも関わりがあると言えばあることなのですが」


 サルシュ、喋り方が前よりもぐっと人間っぽくなっている。

 冒険者として外を回るようになり、多くの人間と触れたことで色々変化しているのだな。


「美食伯のご友人が第二子を作りたい、しかし日々の仕事の疲れで精力に不安がというですね」


「ああ、なるほど。僕はあまり不安はないのですが」


「若さですね。人族は若さによって露骨に精力に差が出ると聞きます。ご覧なさい、美食伯などすっかり枯れきって……お幾つでしたか」


「まだ二十代だよ」


「なんですって」


 サルシュが尻尾を使って、その巨体をぴょーんと飛び上がらせた。

 それくらいびっくりしたらしい。


「人族は見た目で年齢が分かりづらいですが、ワタクシてっきり美食伯は百年近く生きているものだと」


「人間は長く生きても八十で死ぬから」


 最近は僕の興した美食ブームのお陰で、乳幼児死亡率が大きく減少した。

 これは母親の栄養状態が著しく改善されたためだ。


 同時に、美食のやり過ぎでそれなりの年齢の男女が生活習慣病をこじらせて亡くなるケースがポコポコ出始めた。


 人間族の平均寿命は伸びたが、上限は伸びないどころか、ちょっと落ちた。

 それがこのパルメディアの現状である。


「まあ、僕はパルメディアの救い主であり、死神でもあるので。甘美な死に人々を誘う死神です」


「はははご冗談を」


 ツインが笑った。

 サルシュはじーっと僕を見ている。

 目が笑ってない。


「……粗食で長生きするよりは、美食で太く短く……そういう考えもございますな」


 なんか自分を納得させるようにぶつぶつ言ったあと、彼は「では」と動き出すのだった。


「牡蠣を手に入れに参りましょう。ワタクシの知る、精のつく料理のその一です」


「ほう、まだまだご存知で? うなぎとか」


「うなぎもいいですね。あれも後で採りましょう。他に、海藻もいいですしはちみつもいいものです。全部採取して行きましょう」


 そういうことになった。

 ちょうど冒険者を休業しているツインも暇があるので、ついてくることになった。


 僕、サルシュ、ツインの三人組である。

 至高神の信徒がそんな暇してて大丈夫なのかという話もあるが、世の中が結婚と美食に明け暮れているので、みんなそこそこ満たされていて犯罪ごとが極めて少ないのである。


 隣人と仲良くして美味いもの食って酒を飲んでたら、人間悪さをあまりしないものだ。

 そのうち、仲良くなりすぎて人口爆発が起きそうだな。

 あっ、でもそのためのアーラン第二市街区か。


 ソロス陛下、考えているなあ。

 あの人は賢王だ。


 僕らはアーランの港を通過し、近くにある岩場に到着した。

 岩礁があちこちに突き出しており、この間はここで釣りをした。


 今日の目的は牡蠣である。


「皆さん、ナイフは持ちましたか」


「あるぞ」


「ここに」


「よろしい」


 満足気にサルシュが頷いた。

 そして三人で、波が打ち付ける岩礁へ取り付く。

 海水に半ば浸かっているところに……。


 いた。

 びっしりと、一見すると石に見える貝がへばりついているのだ。

 これを隙間にナイフをこじ入れてスポンと外し、回収する。


 牡蠣は筋肉というものがなく、全身内蔵なんで抵抗なくゲットできる。

 牡蠣殻も、隙間からナイフを入れて貝柱を切ってやればパカッと開く。


「アーランではあまり牡蠣を食べてなかったようだけど」


「当たりますからね。生が最高に美味しいのですが、人族は牡蠣で口と尻からジャーっと漏らすようになります。ですので、先王陛下が牡蠣を禁止なさいました。焼き牡蠣も禁止です。焼くと見せかけて生で食う者がおりましたので」


「そりゃいかん」


「美食を求める、人間の業は深いですねえ……」


 ツインがしみじみと呟きながら、袋の中に牡蠣を放り込んでいた。


「でも、そんな牡蠣をいいんですか? 生牡蠣も焼き牡蠣も禁止ではありませんか」


「ここに抜け道がある。ツイン、僕はなんだ?」


「美食伯……!? 何かと問われれば……美食伯は油の使い手……はっ! ま、ま、まさか!!」


「そう。僕はこれより……カキフライを作る!!」


 揚げた牡蠣を食ってはならぬ、という触れは存在しないのである!!



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