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俺は異世界の潤滑油!~油使いに転生した俺は、冒険者ギルドの人間関係だってヌルッヌルに改善しちゃいます~  作者: あけちともあき
68・大雪だ

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第202話 凍った海で釣りはできるのか

 この雪である。

 海は凍っているのではないだろうか?


 凍った海といえば……ワカサギ釣りだ!

 この世界にいるかどうかは分からないが、寒い気候に適応したあんな感じの魚がいるはずである。


 釣りだ、釣りに行こう。

 お茶をいただいて温まった僕が提案すると、飼い主氏もコゲタとアララちゃんも賛成したのだった。


「いいね、冬の釣りは他の国じゃあまりできないからね。とてもいい」


「こおってるうみで、つりするのー? ふしぎ!」


「ふしぎねー!」


 では釣り道具を取りに戻ろうという事になった。

 宿では、主人とおかみさん、そして手伝うために戻ってきたらしい二人の息子が、宿屋の冬支度をやっていたのだった。

 具体的には……。


 隙間っぽいところにぎゅっぎゅっと布を詰め込む作業だ。

 全ての鎧戸は布でカバーされて隙間がなくなり、壁も保温力が高まる。


 夏場は隙間から風が吹いて涼しいのだが、冬は逆なのだ。

 まあ、換気は気を使わないとなあ。


 「やや、お疲れ様です」


 僕の部屋では宿の息子さんがせっせと作業をしているところだった。

 寒いというのに、汗だくになって仕事をしている。

 彼は振り返ると、白い歯を見せて笑った。


「ああどうも! もうすぐ終わりますから!」


「いえいえ、急がなくてもいいです。僕らはちょっと釣り竿を取りに戻ってきただけなんで」


「ははあ、ということは……凍った海の釣りですね。気をつけて下さい。氷が薄くなっているところを踏み抜いたら一発で水に落ちて死んじゃいますから」


「なるほど、気をつけます。まあ、僕は油を張って浮かびますけど」


「油を……? あっ!! もしかして、あなたがナザルさん!? 美食の使徒の!」


「使徒!?」


 僕に関する風聞はどこまで大げさになっているのだ。

 息子さんが握手を求めてきたので、手を握り返してあげたのだった。


 僕と握手して何が楽しいんだ……。


「うちのちびが偏食でして。嫁と二人で困ってたんですが、豆腐を美味そうに食うんですよ。俺達もほっと胸を撫で下ろしてて、この豆腐をアーランに紹介した人にお礼を言いたいなと」


「あーなるほど。豆腐はちびっこも食べやすいですからねえ」


「本当ですよ……。俺も酒のアテにさせてもらってます。油で揚げたやつを……」


「厚揚げ!」


「それです!」


 大いに盛り上がっていたら、コゲタに服の裾を引っ張られた。


「ご主人~!! つりー!! いこー!!」


「あっ、そうだったそうだった! じゃあまた!」


「ええ、楽しんできて下さい!」


 宿の息子さん気持ちのいい人だなあ。

 今は離れて別の宿屋で修行をしているそうだけど、あと何年かしたら戻ってくるんだろうなあ。


 僕のとコゲタので二本の釣竿をもって出かけた。

 飼い主氏とアララちゃんは先に出て待機済みだ。


「こんなこともあろうかとね。アララに言われて、私専用の釣り竿を買っておいたんだ」


「準備万端ですねえ。じゃ、行きましょうか!」


 道を行くと、あちこちで雪かきが行われている。

 雪を積み上げ、雪だるまみたいなものを作って遊んでいる人々も多い。


 アーランはここまで降り積もる時ってないから、まさしく非日常なんだよなあ。

 で、僕の知る前世の日本と大きく違うところは。


「どこの店もやってないなあ」


「日が高いうちはやらないだろうね。みんな夜に稼ぐつもりだろう。今頃、せっせと店の中で料理を仕込んでいるのさ」


「あ、商売っ気が無いわけではなかった」


 日本なら、みんなが休んでるなら抜け駆けして商売をやる人が出てくる……と思っていたら、アーランも変わらなかったらしい。

 問題はすぐには雪向けのメニューには出来なかったので、今必死に作っているところというとこだろうか。


 だとしたら、釣りの帰りの夕食が楽しみだ。

 四人で港にやって来ると、もう釣り人でごった返していた。


 やはり釣れるんだな!


「おや、皆さんも釣りですか」


「おさかなー!」


「ノーノー」


 ダイフク氏がいたので、コゲタが喜んで駆け寄っていった。

 ノーノー言いながらコゲタとタッチしてくれるダイフク氏、本当に人間(?)が出来ているなあ。


「やはり、凍った海で釣れるんだ?」


「釣れるようですね。ちなみに一人氷を踏み抜いて大変なことになりましたが」


「ほおー! 無事?」


「向こうで毛布にくるまって焚き火の前でブルブル震えている彼です。彼の犠牲で、みんな慎重になりましたよ」


「人死が出なくて本当に良かった!」


 ということで、僕らは氷上に乗り出した。

 氷が割れてしまってもいいように、木製のソリっぽいものに乗るのがいいらしい。


 おっ、向こうで氷が割れて、ソリが海の中に。

 だが、釣り人たちを載せてぷかっと浮かんだ。

 なるほどなあ。


 よく出来ている。

 では僕らもソリの上で釣るとしよう。

 氷を蹴ってちょっとずつソリを進め……。


 えっ、このソリ、僕ら以外は有料なの!?


「船主からのサービスですな」


 同じソリの上にいるダイフク氏が目を細めてパカッと口を開いた。

 笑ってらっしゃる。


「おさかな釣りするの?」


「おさかなではありませんが、わしも釣りましょうかな」


 コゲタと並んで、ダイフク氏も釣り竿を構えた。

 さて、釣るための穴はこれから開けるのだ。


 借りてきた銛を氷に突き立て、ぐるぐるぐる回し……。

 割と根気と体力がいるな。


「これ、時短のために上からハンマーで叩いた人たちが海に落っこちてるみたいだね」


「えっ、それで氷を割ってたのか! じゃあじっくりやるのがいいよなあ」


 こうして安全を確保しつつ、いくつかの穴を開ける僕なのだった。




お読みいただきありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
冬の榛名湖温泉に行ったときを思い出します。 凍った湖上のあちこちに穴を穿った跡がありました。
アレって、ドリルで「切る」んですよね。
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