第166話 これがコロッケである!
豆のげんこつ揚げで大体満足してもらっている感があるが……。
本題はコロッケ。
やるしかねえ。
「みんな。げんこつ揚げはオードブルに過ぎない……。メインディッシュはここからだぜ!」
しっかりと蒸し終わった芋がゴロゴロと出てくる。
これをマッシュマッシュ、押しつぶす。
「マッシュポテト? それはよくやるぜ?」
農夫の一人の言葉に、僕は手を振って応えた。
途中までは似ているかも知れないが、ちょっと待ってくれ。
ひき肉が欲しいところだが、それは無いので干し肉を戻したものをみじん切りにし、これを炒める。
で、芋に混ぜ混ぜ……。
「ここで粉に卵をだな」
「オー」「また粉に卵を!」「あれは万能なんじゃないか」
気付いたようだな……。
衣は揚げ物にとって最高の武器だぞ。
僕はひき肉を混ぜたマッシュポテトを、衣に漬け込んだ。
さらに用意してきたあらびきの粉にまぶし……。
これを油にイン!!
じゅわーっと音が響き渡る。
「マッシュを揚げたらバラバラになるんじゃないか!?」「いや、見ろよ! きちんと固まってるぞ!」「さっきのげんこつ揚げとは全然音が違う……」「もっとこう……どっしりしたような……」
コロッケがきつね色になると、オーナーと農夫たちが「オー」とどよめいた。
めちゃくちゃ美味しそうだろ?
コゲタがゴクリと唾を飲む。
鼻息が荒いぞ。
これをサッと掬い上げて、油を落として並べていく……。
どうだ?
芋を揚げたものなのにとんでもなく美味そうだろう。
「出来上がりだ。塩は練り込んであるが、お好みで味付けして食べてくれ」
「お、おう! 俺が先に食べるぞ!」
「あっ、オーナーずるい!」「俺も俺も!」「うおー!」
みんな掴みかかってきた。
手掴みは火傷するからな! なんかで巻いて食え!
彼らは皿に取り分けたコロッケを、あちあち言いながら指でちぎって、口に放り込んだ。
「むほー!!」
「ふほ!」「これが芋かよ!?」「ざくざく、ほくほく、うんまあ」
「揚げたてコロッケは最高だろう……」
頷くオーナーと農夫たち。
これを見て、リップルが堪らずにコロッケを手に取った。
あっ、コロッケと手の間に温度を遮断する魔法をかけたな!
彼女はサクッとコロッケを齧ると、ほふほふしながら噛みしめる。
「ああ~。これは……美味しいねえ……。なんというかこう、ホッとする味だよ。さらに調味料で味付けしてもいいんだろう? それは楽しみだねえ!」
「コゲタも! コゲタもたべる! あちぃー!」
「あー、熱いから気をつけないとだぞー」
僕はコゲタのぶんをフーフーして冷ましてやった。
コゲタも横で、フーフーしている。
で、ほどよくなったところをパクっと食べる。
やっぱり熱かったらしくて、コゲタもほふほふしてる。
だが、噛み締めて飲み込むと、彼はニコニコした。
「おいしー!!」
「良かったなあ。ちゃんとフーフーしながら食べるんだぞー」
「わん!」
どれ、僕も食べるとしよう。
揚げたてコロッケは最高だからね。
ザクッと食べてみると、さすが僕の油、揚がり加減は最高だ。
芋はマッシュ具合がちょっと甘いか?
割とゴロッとした歯ごたえが残ってる。
いや、むしろ美味いかも知れない……。
僕のコロッケはこれで行こう。
こっそり持ってきた醤油を掛けて食べる。
あっ、うっまあ……。
これだよ、これ。
僕が醤油を掛けて、感動しながら食べているのを見たリップル。
「ナザル、私も私も!」
とくっついてきた。
仕方ないな……。
醤油をちょっと垂らしてやる。
彼女は醤油の掛かったコロッケをパクっとやり、「んん~!」と感嘆の声を漏らした。
「美味いなあ! なんだろう。すごくしみじみ美味しい。これはナザルが作ってきたものの中でもかなり上位じゃないかな。これ、絶対に季節を選ばずに美味しいやつだろう?」
「間違いない。食事によし、おやつによし、おかずによし、パンに載せてよし、つまみによし」
「完璧じゃあないか……! しかも主となるものが芋だから、お腹へのもたれ具合も周りの衣くらい……。いいじゃないかいいじゃないか」
リップルは大変満足したようだ。
その後、オーナーと農夫たち、そして奥さんたちが集まってきてコロッケパーティとなった。
作り方を完全に伝授した後、
「コロッケの芋を完全に潰してしまって作るやり方もある。これだと、コロッケの中身は舌触りがとても滑らかになる。色々アレンジしてみて欲しい」
そう伝えたのだった。
僕はあくまで、最初の一つ目を作る役割。
これを強化発展させ、広めていくのはこの世界の人々の仕事なのだ。
そして僕に進化した揚げたてコロッケを食べさせてくれ!
ああ、そうそう。
コロッケが完成したなら、やっておかなくちゃだな。
コロッケパンと、コロッケ蕎麦!!
新たな野望を達成するため、僕はアーランへ戻ることにするのだった。
そうだ、殿下にも献上しないとな、コロッケ。
もうね、何かを生み出す度に世界が広がっていく。
料理の選択肢が無限に増えていって、僕の手に負えなくなっていくのだ。
これは……思いつく限りのバリエーションをあちこちに広めて、後は流れに任せてアーランの人々にアレンジしてもらうのがいいのではないか……。
今後のやり方について、色々考えてしまう僕なのだった。
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