表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺は異世界の潤滑油!~油使いに転生した俺は、冒険者ギルドの人間関係だってヌルッヌルに改善しちゃいます~  作者: あけちともあき
54・蕎麦に関する冒険

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

157/337

第157話 蕎麦切りを食す

 蕎麦をいただくとしよう!

 つゆの中に浮かぶツヤッツヤの蕎麦。

 実に美味そうだ。


 箸を使っていただきます。

 実は既に作ってもらっている。

 例のドワーフの鍛冶師にだ。


 スッと箸を構えたら、ざわつく森の職人たち。


「なんだあれは!」「太い串みたいなのを二本構えたぞ」「細く切った蕎麦を茹でるところまでは分かった。だが……何をするつもりだ……!?」「あの串で突き刺すのか!?」


「ふふふ、見ているがいい。こうだ!」


 蕎麦を箸でたぐる!

 練習しておいて良かった!

 指先は前世の動きを思い出しているぞ。


 そして蕎麦を口に運び、ツルツルツルッと啜る。

 美味い!

 蕎麦だ!

 ちょっと茹ですぎだったり足りないところがあるかもだが、立派に蕎麦だ!


 だが!

 職人たちからは「おお」「なんということだ」「ありえない」とか声がするではないか。


 あっ、そうか!

 アーランでは、高く音を立てて食事をするのはマナー違反とされる。

 蕎麦を啜る動きはよろしくないのだ!!


「こ、これはこのように音を立てて食べるのがマナーなんだ」


「本当にぃ?」「蕎麦は昔から食ってるけどさ、そんな風な食べ方聞いたこともないぜ」「いや、そんなパスタみたいな細さになった蕎麦は始めてだけどさ」「茹でるのもだよな。ぶよぶよの粥じゃなく、つるっつるのパスタになるなんてなあ……」


 混乱の職人たち!

 なお、僕の横ではコゲタがフォークで蕎麦をくるくるっと巻いて、あーんと食べている。

 美味しいらしい。


「仕方ないなあ……。じゃあ音を立てずに啜るよ」


 僕は少しずつ蕎麦を手繰って、するするーっと啜った。


「口に吸い込まれていく……!?」「どういう食い方だ!?」「蕎麦は飲み物なのかよ」


 またざわついている!

 そうか、啜って食べる食材がアーランには存在しないからだ!

 この動作そのものが未知のものなのであろう。


「今回の蕎麦は苦戦しそうだな……。ええい、面倒だ! 一気に食うぞ!」


 僕は猛烈な勢いで蕎麦を啜った。

 魚醤のつゆが絡んで美味い。

 いや、前世で食べた蕎麦に比べると、明らかに野趣あふれる味わいになってはいるのだが……。


 まあよし。

 次は丁寧に出汁を取ってつゆを作っていこう。

 僕は関東圏の蕎麦派だから、しょっぱくて黒いつゆを作るつもりなのだ。


 研究の余地ありだなあ。

 これからどんどん美味くなるぞ。


 ズズズーっと蕎麦を啜りきった。

 小腹が満たされた。


「おいしかったー」


 コゲタがお腹をぽんぽんした。

 ちょうどいい量だったみたいだ。

 よきよき。


 職人たちは、僕の後半戦の食べっぷりを見て腰を抜かしたようだ。

 音が出るのも構わず、超高速で蕎麦を食い切ったからな。


 そのうち、蕎麦食いの文化を広めたいものである。

 道は遠そうだが……。


「職人たちの反応を見るに、しばらくはパスタの仲間みたいな売り方をした方がよさそうだな……。つゆと薬味で、麺そのものの香りと歯ごたえで楽しんでいくスタイル……」


 僕が腕組みしてぶつぶつ言っていると、職人たちがわいわいと詰め所に入ってきた。

 さっきまでみんな入口に並んで僕らの食事を見ていたのだ。


「ちょ、ちょっと俺等にも食わせてくれよ」「知ってるはずの蕎麦なのに、全然味が想像できねえ……」「どういう食い方してたんだあれ……」


「おお、興味がお有りかな皆さん! では人数分の蕎麦を茹でてさしあげよう……」


 僕は職人たちの手を借りて蕎麦を粉にした。

 さすが、蕎麦を食い慣れている人々の手際はいい!


 あっという間に大量の粉ができたぞ。

 これを粉を繋ぎにして練り、蕎麦切りに……。


 そして茹でる。

 茹で上がったやつから、つゆと一緒に並べていく。

 職人たちはフォークを使って食べ始めた。


「むほー!」「なんだこれ!」「つるつるしこしこしてやがる!」「ああ、なるほど! あのツルツルーっと食うやり方がやりやすそうだ、これは!」


 お分かりいただけただろうか。

 蕎麦は特に、この香りと食感が大好評だった。


 食べ物は味だけじゃない。

 匂いと歯ごたえ、そして喉越しでも楽しむものなのだ。


 これまで味によって美食を堪能してきた、アーランの人々。

 そこに、新たな価値観の一石を投じるのだ!


「コゲタはどうだった?」


「おいしかった! おもしろかった!」


「そりゃあ良かった!」


 この面白かった、というのが大事だ。

 どんなに美味しいものでも、食感が同じだったら飽きてしまうからな。


 ここで、歯ごたえや喉越しが異なるだけで、同じ調味料でも感じる美味さが変わってくる。

 それによって、味以外の食のバリエーションが増えるのである!


 思えば寒天もそういうものだったなあ。


 夕方になる頃、やっと職人たち全員が蕎麦を食べ終えた。

 大変好評である。


「蕎麦の味は知っているし、魚醤だって最近食べ慣れてきた。だが、それが組み合わさったら全く違う味になるんだなあ……」


 職人の一人がしみじみと呟いた。


「何より、あんなツルツルシコシコした食べ物、他に知らねえ……」「蕎麦、悪くないかもな……」「粉と水があれば作れるんだろ? 今度作ってみようぜ!」


 職人たちに新たな食のブームが来たる!

 蕎麦なら近くでたくさん採れるからね。

 ぜひともたくさん作り、創意工夫をしてみて欲しい。


 今度は僕がそれを食べに来るから。



お読みいただきありがとうございます。

面白いと感じられましたら、下の星を増やして応援などしていただけると大変励みになります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] まさかのソバが、雑穀どころか野草!
[一言] 酒も欲しくなる!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ