『天銀VS月魔』
「おまたせ」
銀色の髪を揺らし、私は戦場へと駆け付けた。
そこにいたのは、首から血を垂らすエーテルノ。力なく座り込むサツキ。どこかで見覚えのある黄金色の鎖を抱えたアメル。前髪トルネードのホークス。
――そして。
妖刀を杖の代わりにし、立ち上がろうとしている胡桃色の少女。
彼女こそ、魔界の序列4位――『月魔』アルンフィード。ポンと軽く押せば倒れてしまいそうである。
「私が時間を稼げるのは1分って言ったですよ。10秒の遅刻ですよ」
「ごめんごめん。ルウたちを説得するのに時間が掛かっちゃって」
「サツキのくれた10秒が無かったら全滅していたですよ。ギルドハウスに帰ったら、1時間説教ですよ」
「うわ、助けに来てくれた人に取る態度じゃないよねそれ」
「へへっ」
にししっと笑うと、エーテルノはふうっと息を吐いた。
「はあ、終わったなこれ。カレイアが来るなんて聞いてないし。新月の時ならともかく、満月の時じゃあ勝ち目ゼロだわ」
「少し勘違いしているね。新月の時でも勝ち目ゼロだよ」
魔界の序列4位――『月魔』アルンフィードは、月の満ち欠けによって魔力量と身体能力が変わる。満月の時は最も弱く、新月になると最も強くなる。その実力は、アリアとクレアが2人掛かりで挑まなければいけないほどである。
「見逃しては……」
「ごめん、それは難しいかな」
「はあ、そうだよね。死は確定ってわけか。しょうがない、やれるだけやってみるか」
アルンフィードは溜め息を吐くと、妖刀を鞘に戻した。
鯉口を切り、柄に手を掛ける。
「居合か」
「御名答。君を相手にするならボクにはこれしかない。ぴくりとでも動いた瞬間、ボクの妖刀が君を斬る」
「そっか」
私は1歩進んだ。
音速を超えし、アルンフィードの居合切り。自分が斬られたことに気づくのは、上半身と下半身が分かれて地面に転がっている時だろう。
――しかし。
それは、私以外だったらの話である。
「悪夢かなコレ?」
「軽いなあ、きちんと朝ごはん食べた?」
放たれた妖刀を、私は指2本で受け止めていた。
「なんて馬鹿力だよホント……!! く、くそ、離せよお……!!」
「わかった」
「ぎゃん!!!!」
私は妖刀から手を離すと、拳を握り締めて顔面を殴り飛ばした。高速回転しながら、アルンフィードが吹き飛んでいく。
「痛がっている暇はないよ」
「ひっ」
壁に叩きつけられ――
顔を押さえていたアルンフィードの右横に、私の撃ち出した聖槍アルジェーレが突き刺さる。
あと数センチ左にズレていたら、アルンフィードの上半身は消し飛んでいた。
「もういっちょ〜えいっ」
「ほひゃ……」
2発目は、左横に刺さる。
ガタガタと震え、涙を流すアルンフィード。
「次は外さないよ、早く立ち上がらないと……死ん、じゃうよ?」
「ひっ、ひいっ、ひいいやあああああああああああああああああああああっ!!!!」
3発目を撃とうとした瞬間、私は気づく。
精神が限界に達してしまったのか、アルンフィードは白目を剥いて気絶してしまった。
「あちゃー、少しやりすぎちゃったか」
聖槍アルジェーレを消滅させ、私はぽりぽりと頭を掻く。
決着がつくと、エーテルノが歩いてきた。
「カレン、とどめは刺さねえんですか」
「うん、サレヴィアの件に続いて、アズリオンには2つ目の貸しを作っておきたいからね。ここで殺したら計画がパーになる」
「アズリオンと敵対してしまえば、ハレスを殺せなくなるってことですか」
「そういうこと。はい、これあげる」
エーテルノに妖刀を渡すと、私はアルンフィードをおんぶする。
「これが、聖槍アルジェーレを受け止めることができる妖刀――『月夜見』ですか。どんな鍛冶職人が打ったんですかねホント」
漆黒の刀身からは、禍々しい妖気が溢れ出している。
ほんと、恐ろしい能力だよ。妖刀で斬った魔法を全て無効化するなんて。
「カレン、これ」
『封天の鎖』を抱きしめながら、アメルが歩いてきた。
「『封天の鎖』か。天界から落とされたときに私が縛られていたものだよね。なるほど、私たちが去ったあと、ゴルソンがひろっていたのか」
「アルンフィードちゃんは、モヒカンさんたちを殺しながらこれを探していたみたい。理由はなんとなく察せちゃうよね」
「私に使うつもりだったんだろうね」
天使を支配するための鎖。
この鎖に縛られてしまえば、天使は魔法を使えなくなってしまうのである。
「これ、どうしようか」
「アメルが持っていてよ。もしもの時に役立つかもよ」
「もしもの時って?」
「まあ、とにかく持っていてよ」
「そこまでいうなら……わかった、私が持っておくよ」
アメルは頷くと、『封天の鎖』をリュックに入れるのだった。
最後まで読んでいただきまして、ありがとうございます!!
カレン最強ですね。
満月の時とはいえ、アルンフィードが手も足も出ません。
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これからもよろしくお願いします!!




